■ 給料の前借り

おはようございます、東京都府中市の社会保険労務士 飯田弘和です。

 

 

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【チェックポイント その387

給料の前借り

 

従業員から給料の前借りをお願いされたとき、御社はどうしていますか?

前借りの申し入れについて、それに応じるかどうかは、原則、会社の自由です。

しかし、労基法で、前借りの申し出に必ず応じなければならない場合を定めています。

 

労基法25条に“非常時払い”についての定めがあります。

従業員や“その収入によって生計を維持している家族”の、「出産、疾病、災害、結婚、死亡、やむを得ない理由による帰郷」の費用に充てるために、給料の前借りを申し入れてきたときは、たとえ給料日前であっても、“すでに働いた分の賃金”については支払わなければなりません。

これは労基法に定められているので、支払わなければ労基法違反となり、監督署からの行政指導の対象になります。

 

しかし、この“非常時払い”以外の理由での前借りについては、会社は応じる義務はありません。

応じる・応じないは、会社で定めていただいて結構です。

 

ここからは、前貸しした給料の回収についてです。

まず、労基法25条の定めに従って“非常時払い”として前貸しした場合、本来の給料日には、残りの給与を支払えばよいです。

また、“非常時払い”でなかったとしても、“すでに働いた分の賃金”を前貸ししたのであれば、これは、給与の一部を早めに支払っただけですので、本来の給料日には、残りの給与を支払えば済みます。

当然といえば当然です。

 

ところが、“すでに働いた分の賃金”を超えて前貸しした場合には、労働者への貸付と考えます。

貸付金の返金については、労基法24条の“賃金全額払い”の定めによって、給与からの控除が原則禁止されています。

賃金から控除する場合には、労働者の過半数代表者と“賃金控除協定”を結ぶ必要があります。

その協定の中で、控除の対象となる具体的な項目を定めます。

よくみかける項目としては、社宅費や組合費などがあります。

今回のお話であれば、“会社が従業員に貸し付けた貸付金”といった項目が必要です。

その協定書がなければ、貸付金を賃金から控除することは労基法違反となります。

 

まとめると、

1. “すでに働いた分”の給料を前貸しした場合には、賃金控除協定なく、前貸し分を給料から差し引きことができます。

2. “すでに働いた分”の給与額を超えて前貸しした場合には、“貸付金の返金”という扱いになるので、給料から差し引くには賃金控除協定が必要になります。

 

給料の前貸しを行う場合には、労基法違反とならないよう注意が必要です。

また、非常時以外で給料の前借りを求めてくる従業員は、私の経験上、他にも色々とトラブルを起こします。

貸金業者のブラックリストに載っていて、借り入れができないような人も多いです。

極力、採用しない方が良いと思います。

採用面接時に、「給料の前借りができますか?」などと聞いてくる者は、要注意です。

 

 

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発信者プロフィール
 
 社会保険労務士事務所いいだ
     社会保険労務士  飯田弘和(いいだひろかず)
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