歯列矯正で小臼歯を4本抜歯して

その空隙を利用して治療するのは

ルーチンな術式です。

 

矯正治療のための抜歯は、私は

自分で行っています。

周囲の歯槽骨を破壊しないように

抜歯するのはある程度、気を遣うので

勤務医にも任せません。

インプラント予定や矯正の便宜抜歯は

普通の抜歯とは違います。

 

患者さんから

「通院の都合があるので

4本一度に抜歯してください」と

依頼されることがありますが、

せいぜい2本までにしていただいて

います。

 

正常に萌出している歯牙を抜歯するのは

それなりに患者さんの体に負担をかけるので

まれに「抜歯したあと、体調が悪い」と

言われることもあり、その場合は1か月ほど

おいて抜歯をするようにしています。

 

学生さんが治療することになって親御さんが

「4本一度に抜いてくれ」と言われましたが

説明してお断りしたところ、気に入らなかったのか

他院に転院されたことがありました。

私は4本でも、5本でも抜歯できますが

学生さんがどうなったか心配でした。

たいていは大丈夫なんですけど、

なんかあったときは、その後の

矯正治療期間中嫌な思いを

患者さんも引きずります。

 

虫歯の治療で、口中虫歯だらけで

十本以上抜かないといけない歯があった

患者さん。

「まとめてやってくれ」と言われていろいろ

説明しましたが「通院時間がない」とのことで

その日は5本抜歯しました。

残根でしたから簡単で、こちらは気もつかいません。

次回来られたときは「少しずつでいい」

とのことでした。

歯周病でぐらぐらなら十本一緒でもいいので

しょうが。

患者さんのためを思ってアドバイスしても

時間優先で「手っ取り早くやってほしい」

というのが多いですね。

 

遅い時間に来て「親知らず抜いてくれ」と

言ってた人。「出血止まらなかったら

あんた死ぬんだよ」と言ったら

「死んでもいいからやってくれ」とのこと。

ほんとに死ぬとは思わないのでしょう。

糖尿病とかあると死ぬ人あります。

 

昭和の時代に

「お産なんて、歯を抜くぐらいに簡単」と言って

批判された人もありましたね。

お産も大変ですが、簡単の代表に

「歯を抜くこと」を上げられたら

「お前やってみろよ」という気持ちになります。

「安い」ことと「簡単なこと」は関係ないのですが

一般にはわかってもらえないことです。