SWIFT〜亡き恩師を想う〜 | 相場残日録(元相場師天の日記)

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プロの相場師「天」の引退後のブログ、残日録として記していきます。

 
天然ガスの供給をロシアに頼るドイツなどの反対で
実行が危ぶまれていましたが・・・
対ロシアの経済制裁の切り札 SWIFTからのロシア除外が
決定されました。
 
誰も助けが来ないことがわかっているウクライナ
核保有国ロシアと単独で戦う彼らの強い意志を
目の当たりにして
流石に欧州諸国も自分たちも血を流さざるを得ない
そう考えたようですね。
 
案の定、ロシアルーブルは暴落
ロシア中銀は金利を一気に20%に引き上げて通貨防衛へ走る
キエフが落ちるか、ロシア経済が破綻するか
どちらが早いかの戦いになったような気がします。
 
この聞きなれない SWIFT という言葉を
ウクライナ危機で久しぶりに耳にして
学生時代、世界経済論のゼミで2年間お世話になった
恩師、徳永正二郎先生を想い出しました。
 
先生の専門は、マルクス経済学に基づく世界貿易論 
その中でも外国為替論の権威でした。
これは 先生の研究の集大成の著作

1982年の初版です

大学の専門課程の世界経済論の教科書でした。

最後のページから抜粋します
今日の国際的貨幣取引は、(中略)実体のない架空の利殖契機に
動機づけられた、短資移動の場に転化してしまっている。(中略)
無軌道な貨幣資本の、SWIFTとCHIPSを駆使した電子貨幣の
形態での利鞘を求めた瞬時の世界回遊こそ、
ドル本位制・変動相場制・過剰流動性という三題話の象徴であり
今日の外国為替論が対象とすべき現代の怪物である。
 
40年前の著作ですが、ここにSWIFTの文字があり
なぜか 私の頭の中にずっと残っていました。
 
少し説明すると
先生は40年前に 
投機的金融資本が実体経済からかけ離れて肥大化すると
警告されていました。
そして、その始まりは1971年8月のニクソンショックによる
金本位制の崩壊=外貨準備金とドルの兌換停止
と主張されていました。
金という頸木を外れた「ドル」は投機的動きを繰り返し
自己増殖し、ついには実体経済を支配することになると
まさに 10年単位で金融バブルを繰り返す
現代の資本主義経済を予見されていました。
 
私がご教授をいただいたとき
最年少42歳で経済学部の教授になられたばかり
新進気鋭の若手研究者で、ゼミも厳しかったですね((笑))
マルクスが資本論の前に書いた「経済学批判」
これがゼミの最初の題材でした。
まだ本棚にあります
当時私も若くて生意気で
お酒の席で 先生に酔った勢いで 議論を吹っかけて
「そんな甘っちょろい認識しかお前はできないのか!」
とおしぼりを投げつけられたことがあります。
懐かしい想い出です。
 
卒業して、10年以上経ち 銀行のディーリングルームで
第一線の為替ディーラーとして
私が活躍していることを聞いた先生は
「活きた 投機マネーの現場を見たい」 と
学会で東京に来るときにたびたび私をディーリングルームに
訪ねてこられて、お話をしました。
教え子が、先生の研究対象である 投機的金融資本の世界に
どっぷりつかり、
その投機のプロとしてマーケットの最前線にいる事実
「不思議なめぐりあわせだなあ」
と 感慨深げに先生が呟かれていたのを想い出します。
 
その後、先生63歳での突然の訃報・・・・
早すぎました・・・
 
久しぶりに聞いた SWIFT という言葉に
亡き恩師を想い出しました。
 
 
以上