◎『カールじいさんの空飛ぶ家』
『いくつになっても 旅に出る理由がある』
冒険に憧れる幼い少年カールは古びた家で冒険ごっこをしていた少女エリーと出会う。
エリーと出逢い、結婚し、同じ時を過ごし、同じ夢を描き…数十年の日々が過ぎ、ある日ついに一人ぼっちになってしまう。
(※泣き虫はここまででかなりの涙使用)
愛する妻と過ごした家で静かに暮らすカールは、あるエリーとの思い出に傷を付けられ感情的になってしまったことが原因で、家を奪われ施設に入ることを余儀なくされてしまう。
しかし、78歳になったカールは、エリーと描いた夢を実現するため、数えきれないほどの風船をふくらませ家に付け、大空に向かって冒険の旅へと飛び立つのだった…
良かった…
大人たちの涙する音、子供たちが無邪気に笑う声が劇場内に聞こえ、ワクワクするアドベンチャーや次々に現れるカワイイ登場人物と、盛り沢山な内容で楽しめます。
大人は本編の20~30分で間違いなく辛く切ない物語に胸が締め付けられます。これはもうなんか他人事とは思えない辛さだった…。
カールじいさんの家にボランティアで訪れる少年ラッセルは、頑固なじいさんの心を解きほぐしていくと共に、劇場にいる客を大いに笑わせてくれます。
エリーとの約束を果たすためにいくつかの難にぶつかりながらある場所に着いたとき、静かに椅子に腰を下ろし家の中を見回すカール。ここは考えさせられた。
イチローの言葉だったかな…
『過去のいい出来事や自分に捕われていては新しい自分は現れない』
人は楽しかった過去や思い出はなかなか忘れることができず、昔は良かった…と、それを思い出しては捕われたりしてしまう。
それが原因で新しい一歩を踏み出せなかったり、既に守らなければならないものをいくつも抱えていたりしてしまう。
迷い、考え、家に手をあてて「エリー…」と語り掛けるカールじいさんにウルっとさせられる。
冒険するには自分はもう歳をとりすぎたのではないか?もう遅いのでは?
カールじいさんの背中に愛する人の声が届いたとき、『今』という本当の冒険の旅が始まるのだ、と 自分の頭のなかで物語が走り出し感動した。
そして一転、ここから物語は一気にアクションとアドベンチャーで盛り上がる。誉めすぎかもしれないが、『天空の城ラピュタ』を彷彿させる空の戦いに手に力が入る。とても楽しませてもらった。
カールじいさんの人生はある一つの人生だが、それは何かに踏み出す勇気をくれるメッセージの物語である。
やっぱピクサーはいいなぁ。
おすすめです。
◎『カーズ』
生かされていることに気付いたとき それがあなたを動かす心の燃料となる
主人公の ライトニング・マックィーン は赤く輝くスポーツカー。
レースでは毎回一位、かっこよくてモテモテ、他の誰よりも早く走り抜ける力を持ち、勝つことにしか興味がない。
自分が気にくわないことがあると周囲には辛辣にあたり、援助してくれるレースチーム内のスタッフも辞めさせたりしてしまう。能力は凄いがいわゆる自己中。
あるとき、次のレース会場へ移動中にちょっとしたトラブルから道をそれてしまい、田舎のさびれた町に迷い込んでしまう。
そこに住んでいる車たちは町のようにみすぼらしく汚れていたりして、次のレース地に急がなければならないマックィーンはよそよそしく接するのだが、自らがデコボコにしてしまった道路の舗装をしなければならなくなり足止めをくってしまう。
しかし、「速く走ること」「勝つこと」だけが全てだったマックィーンは、町の車たちと接するうち、自分に足りなかった大切なものに気付きはじめていく…
素晴らしい。
こういう『人生が詰まった作品』には本当に感動させられる。
パッケージの絵を見てダサいと敬遠している人、車の話だからと手を出しにくい女性、子供向けだと先入観を持っている人、皆勘違いです。
アメリカに実在する道路「ルート66」をモチーフに描かれた物語は、ノスタルジックな映像と音楽と共に、その存在を知らない人へも大切な思いを届けてくれます。
自分が輝けるのは戦える場所と好敵手があるからであり、それを支えてくれるチームの仲間がいるから。
足りなかった心のパーツをみつけたマックィーンが疾走する終盤のレースシーンは感動の戦いが繰り広げられ思わず応援してしまいます。
ただ一直線に走ってきたことで見落としてきたものに気付くのは、ふと足を止めて考えてみたり休憩したりしたとき。
日々の生活に追われ、先輩後輩や友人とたまに食事をしたり飲みに行ったりしたとき、自分の狭い視野と考えの中だけでもがいていたことに気付かされることがあるでしょう。当然私も今でもありますし、その都度仲間がいることに感謝します。
真っすぐな道、曲がりくねった道、山あり谷ありと平坦ではなく、それはよく人生に例えられます。
がむしゃらに頑張っている人に見てほしいと思うピクサーの名作です。
頑張れ-応援してるぞ-!
◎『127時間』
想像のつくストーリー、それを超えてくる監督の手腕
アカデミー賞にも6部門?くらいノミネートし、記憶に新しい『スラムドッグミリオネア』のダニーボイル監督の作品である今作。
岩場に落ちた自らとその右腕を岩に挟まれ、絶体絶命の状態からの127時間を描いた作品。
わかってる…
わかってるんです…どうなるか。生きるために予測のつく展開…そしてそのシーンは顔をそむけるくらい強烈に描かれて苦しい。
窮地に立たされた人間の精神状態と、それを乗り越えようとする生命力を力強く描き、終盤では生きることを考えさせられる。
もし自分だったら…
誰のために?何のために?生きるのか。
今まで出会ってきた全ての人を思い出し、感謝で胸がいっぱいになる、そんな気持ちにもさせてくれる。
実話をもとにした原作のある映画化であり、ストーリーの面白みは小さいのだが重みのある人間ドラマに作り上げた監督の力量はこれからも注目せざるをえない。
サントラもよいです。


