昔はものを想わざりけり その2



   瀬戸内の温暖な気候から

 嫁いできた私。

 雪深い会津高原駅から

 程なくのところに彼の実家があり

 其処から

 二十分ばかりの

 田島に一軒家を用意してもらい

 私達の新生活が始まった。

 土日は夫の実家で過ごした。


 田島は南会津郡の中心の町で、

 其処では、

 夏に行われる七保会の

 「花嫁行列」は有名で、

 色とりどりの若い女性が

 花嫁姿で壮大な列をなし

 雪深い東北の地の

 夏の到来を告げる歴史的行事でもある。


 私達、南会津 の住まいは、

 その町のど真ん中。

 大都市をミニチュアに模した様な

 田舎町の中心に位置しており

 四方八方、

 五分圏内に、

 生活のすべてが備わっている。

 町役場から銀行、

 裁判所、幼稚園

 結婚式場、コンビニ、スーパー、

 郵便局、写真屋、喫茶店、お寿司屋

 鉄道駅、病院、宿屋から

 何でもござれで、用がたせた!


 此処で、

 子どももふたり授かり

 八年ばかりの時を過ごした。


 その間に、

 二つほど…

 たいしこととないといえばソレまでだが…

 小さなカルチャーショックというか

 異文化というか

 雪深い土地ならではの?!

 驚いたことが…


 一つは、

 長かった深い雪が融け始めると

 そこから解放されるかのように

 どの家にも軒先に真っ赤や黄やピンク色の

 あでやかな花々で賑わってくる。

 沢山の花々が一斉に路地という路地、

 町中の家々の玄関先など

 花いっぱいにかこまれる日々…

 春の到来を心待ちにしていた想いが

 ヨソモノの私にも伝わる艶やかさで、

 雪解け後は、

 ベビーカーを引きながら

 外を散歩する愉しさであふれていた❗


 今一つは、

 家を出るときに鍵をかけないこと❗

 平気の平左…

 驚く私の顔をのぞき込むばかり。

 これには呆れ果て~さらには

 近所の人が見張っていてくれてるから

 大丈夫〜とのたまう夫…

 そこには❝結❞という

 互いに助け合い

 雪下しの精神から来たものか…

 会津の厳しい冬を生き抜く

 知恵のようなものがあった。

 其れ等

 育った地域のちがいを

 思い知らされたことだった。


 そんな習慣からだったのか…

 鳥カゴに、

 カギをかけなかったのは!


 さすがに、

 今は夫は、私以上にカギの開けしめは

 厳重で

 私が今では、注意される程。

 せっかく純朴な心根まで壊し

 都会の常識を?!植え付けてしまった…

 いささか、

 私の教育がいきすぎたかと…


 

 小鳥を飼い始めて

 何度かブランクはあるけれど

 十数年の間に

 20羽ばかりを家に迎いれた。


 がしかし、

 飼い始めて三日で死なれたり

 数年とか長くて七年の、

 例外もあるけれど

 大半が半年保たなかった。

 逃げられたり死なせたり…

 可愛さ余って

 カナリヤ色の小鳥に

 カープの赤い帽子を被せ

 腰には黒い廻しを着けさせようかと

 言うと、


 小鳥屋の店員さんは言ったのだ!


 ❝ぜひぜひブログに乗せてくださいよ!

 凄くバズりマクリますから❗❞

 あもちゃ代わりのそんなバカなことを

 本気で考えたときもあった…

 

 楽しみは、

 いっぱいもらってきたけれど

 今想うに…

 飼われている

 小鳥の想いや特質など

  露も想わず分からずじまい…


 しらないことは

 こんなに暢気に居られたものかと

 解ってみると

 冷や汗もの!

 可愛がってたつもりでも、

 愉しみ慰みの

 ペットに過ぎなかったかと…


 ソレでも今も、多少…

 単なるペット扱いが

 拭いきれずにいる…


 より多くのコトバを

 覚えさせようと焦っていた私…


 小鳥の羽根が

 コノトコロいっぱい抜け落ち、

 便も緩い!

 鳥かごを掃除して気付かされた…


 生後半年…

 生え変わる時期かもしれないが

 モシカしたら…ストレスかも?!

 私の見栄のギセイ者?!

 多くのコトバを一時に

 喋らそうと、焦ったツケ?!

 教育ママ担っていた…私

 

 

 昔はものを想わざりけり?!

 幸せで能天気?で居られた

 日々も懐かしくはあるが、

 あまりに幼稚で身勝手?!だった…


 ペットとワタシたち

 煎じ詰めれば

 主人と奴隷の関係だったか…

 死なせたり逃げられるのもアタリマエ?!


 コレまで

 犠牲と失敗を重ねながら

 ようやくのこと

 共に生きる心が

 今まさに

 育ちつつある。

 多くの小鳥ちゃんのギセイの賜物である。

 手元でなくなった小鳥たちは今、

 家の庭の片隅で

 線香の薫りとともに静かに眠っている。


  遅くはあるが此れからは、

 今いる小鳥

 マリンちゃんと

 長生きしてともに過ごそうと

 来し方ふりかえり

 反省方々

 身にしみて

 思い直している

 今日このごろデアル。