さっさと逃げる


 ここぞとばかり羽根を拡げたかと思うと、不都合が生じたり、だれもみていないと気付くやいなや、さっさと舞台から降りるように羽根をしまい込む人達がいる…。

 人当たりも良く評判も決して悪くは無い。

 しかし、

 こういう人達は、

 深く接するほどに、その冷たさが見えてくる。自分に見る目が無かったのか、人とは本来そういうものなのか?!よく分からない…。


 私の知っている人で、すこぶる評判の悪い人がいる。

 「貴方まだあんな人と …」深く関わってるの?!と揶揄されるくらい。

 しかしその人とは、係われば係わるほどに味かでてきて、良さが見えてくるのだ…。

 確かにやる事なす事、稚拙。口ほどには実績が伴わない。妄想と現実の境もあやしいときも有ったりする。はつきりいって、使い物にはならない…。敬遠されるのも分からないでもない。

 が、しかし見捨てられない美点が彼女にはあった。三十五年もの間、暑い夏の日も凍てつく雪道の日も緑の旗振りおばさんをやってきた。

 けなされることはあっても、表彰もされずひたすら無償で、通学路の子ども達を見守ってきた。多少はなしを盛るところはあるかもしれないし、要領の良い人はお金貰って表彰までされて、…とよくグチる。

 私はそんな時は、グチるくらいならするな!と意地悪くいましめたりした…。我がことのようにはがゆくもあった。

 彼女は片方の耳が、夫の暴力で少し不十分。遠い山里から心の叫びのままに、二十年前男女共同参画センターに学びに来ていてワタシと出会った。

 いじけず頑固なまでに明るい彼女。

 もっと日が当たればと祈るばかり…。


自分で自分を

あきらめなければ、

人生に「負け」は無い。

斉藤茂太(精神科医)