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元宝塚歌劇団雪組、壮一帆さんの現役時代の記録。ただいまシーズンオフ。

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●壮一帆firstコンサート『Feel SO Good』

東京 2015年8月5日(水)~9日(日)  BUNKAMURAシアターコクーン

構成・演出:荻田浩一

音楽:立川智也 振付:大澄賢也、ANJU


 初日から一日たったけど、一日たってますます夢みたい。


 「タカラヅカ時代から観に来ていたシアターコクーンに自分が立っているなんて夢みたい」だと、カーテンコールで話していたと思う。素敵なジェントルマンたちに囲まれて、女優・壮一帆の初舞台公演が始まりました。


 こんなコンサートが見たかった。こんな壮さんが見たかった。


 すべて終わってそんなふうに思えるコンサートでした。

 

 しっかし、やられたわ(笑)。


 こんな壮さんを見たかったと思うけど、こんな壮さん、想像していなかった。いっやあ。まさかね、「スナック」とか、「カラオケ」とか、「ジャージ」とか出てくるとは(笑)。


 そして、その外しっぷりが、まさに「壮一帆のビート」であったと思うわけです。


 コンサートのなかで壮さんは中島みゆきの「糸」を歌うけれど、「縦の糸は壮一帆」なんです。ちっちゃい頃からずーっと変わらなかったんじゃないかと思わせる「壮一帆」という太い糸が最初から終わりまで通っている。


 横の糸は「それぞれの時代」でしょうか。ちっちゃい頃、タカラヅカ時代、タカラヅカを後にした時代、そしてこれから見られるかもしれない、未来の舞台? 映画?


 そんな糸で織り込まれた二時間でした。


 コンサートの中身のことは、またちくちく書いていきたいと思いますが、いまのところは、まずざっくりと仮縫い。


 いろんな壮さんが出てきます。でも、どれも壮さんだった。


 終わってみて気づいたんだけど、いわゆる「男役」をやっている場面はありませんでした。でも、そんなことに気づきもしなかった。そのくらい、全部壮さんで。全部、素敵で面白くて格好良くて似合っていて。


 で、思ったのです。


 男役とか、女優とか、もっといえば、男とか女とかだった関係ない。みんなただの衣装じゃないの。そんなの必要ない。なんだっていい。ただ、そこに壮一帆という人がいれば、それでいい。芝居が始まる、歌が、ダンスが始まるんだって。


 だから、『エリザベート』の、ちょーおドラマチックで難解な場面のシシィだって、あんな衣装で演じてしまうし、カーテンコールには、あんなに壮さんらしい衣装で舞台に飛び出してくるのだ。


 飛び出してくる壮さんが本当にほんとうに、ちっちゃい「えりちゃん」で。そうなんだ、この人は、タカラヅカという希有な世界で長いこと男役として生きてきて、いろんなもものを見てきただろうに、いつもこんなにも純粋でまっすぐなところをもっている人なのだと、改めて教えてもらった気がします。


 タカラヅカ時代が、同期生たちと舞台に立ったロケットから始まったように、この舞台が女優・壮一帆の初舞台で、このシンプルで飾らない姿が、女優としての原型になるのだなあ。


 うん。忘れないでおこう。このときの壮さんの姿を。ここから始まる、壮さんの次の時代の第一歩を。


 お稽古期間が一週間と聞いて、本当に驚いたのだけど(笑)、きっと忙しい時間をやりくりして、こんなコンサートを作ってくれた荻田浩一先生には感謝の言葉しかありません。


 当事者でもないのに、出来の悪い謝辞みたいになってきたけど(笑)、本当に荻田先生に担当してもらえてよかった。できれば、2nd、3rdもお願いします! 「スナックえりこ」をまた!(そこ?)


 写真集のようなコンサート・パンフレットの荻田先生の言葉にほろりとさせられ、なんて素敵な「迎える言葉」なのかと思いました。


 壮さんが退団特集の機関誌「歌劇」壮一帆サヨナラ特集号でには、恒例の「送る言葉」コーナーがあって、そこには演出家の先生がたからの、笑って泣かせるいい話が満載でした(このこともいつかちゃんと書かなきゃあ)。荻田先生はタカラヅカをもう卒業されていたので、当然そこに言葉はなかったのだけど、こちら側の世界でちゃんと「迎える言葉」を書いてもらえて本当にうれしい。


 初日の東京は、それはそれは素晴らしいブルースカイ、素晴らしいカズホ晴れ。千穐楽までこんな日が続くんだろうなあ。


 壮さんだもの ^ ^ 


 明日は(もう今日ですが)、壮さんのお誕生日。女優としての初舞台公演中にお誕生日を迎えられるなんて、すばらしいですね。


 お誕生日おめでとうございます。


 明日また舞台でお祝いさせてください。よい舞台になりますように。

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《幕があく前に》

 2015年8月5日。
 あともう三時間か二時間かで、壮一帆firstコンサート『Feel SO Good』の幕が上がります。

 トークショー、ディナーショー、卒業生が集まってのコンサートと、少しずつ舞台に出てはきてくれていたけど、今日が卒業後の本格劇場デビュー。女優・壮一帆の初舞台となるのでしょうか。

 壮さんのインタビューや、お稽古が始まってからは共演する皆さまからの情報などでようすを知るにつけ、もうもうもいてもたってもいられないような気持ち。

 石井一孝さんはこう書いています。
まず、壮さんを《爽やかで朗らかなレディ》と ^ ^
 《今夜限り、壮さんとのレアで大人なデュエット》
《荻田浩一さんの演出・構成もギャグや感動が散りばめられている》
《尊敬する立川智也さんが音楽監督です。ドラムに高田真くん。ピアノに草間信一さん。いやはやスゴウデのミュージシャンばかり。クオリティーの高い演奏のコンサートになるのは間違いなしです!》

 三井聡さんは…
《退団後のファーストコンサートの中では本当に異色で異彩な空間》
《壮さんの歴史とお人柄の上にこの空間が存在している》

 大澄賢也さんは…
《演出の荻田さんならではの世界感、シュールで、やはり宝塚や、壮一帆さんの人柄やカラーを理解しているからこその演出》
《とにかく、壮さん、美しいんです。そして、人柄が各場面で滲み出ていて、素敵な、面白いコンサート(笑)》

 うわあ…。これは期待すんなというほうが無理。

 でも、ちょっと見るのがコワイ。

 親愛なる荻田先生の演出で、その意味ではなんの心配もないんだけど、『タランテラ!』ではないなというのは分かるから(笑)。
 いや、『タランテラ!』のようなコンセプチュアルなショー作品は、タカラヅカで、あのときの雪組のメンバーだったればこそ実現した作品であって、それを望む気は最初からないのですが、あまりに偉大な作品の存在があると、チラチラと脳裏をよぎるのです。

 それに、見る人それぞれに、このコンサートで「見たいもの」があると思うから(しっかりとイメージになっていないものであっても)、「見たいもの」ではなかったときの気持ちと、うまく折り合いをつけなければいけないという心配もある。

 まあ、それもこれも贅沢な悩みでした!
 こうやって、また壮さんの舞台の初日が見られるんだもの。そのことを思ったらも「なんでもいい」…とは思いませんが(笑)。

 まあ、実際にわたしが「見たいもの」はなんだろうと考えていったら、わりとゆるかったのです(笑)。

 壮さんが楽しそうで、壮さんのこれからが楽しみになるようなステージなら、それでいい。「なんでもいい」とは決定的に違うんですけどね。

 壮さん自身も、そうな感じに近いんじゃないかな。ちょっと不安で、楽しみで楽しみで、やっぱり心配で…、あ、でも、やることいっぱいじゃん! みたいな。

 荻田先生は、未来の壮一帆サンが見えてくるようなステージにしてくれているような気がします。

 タカラヅカファンの「見たいもの」はきっとわかっているはず(笑)。でも、そことはちょっと違うんだろうな。

 だって、壮さんがタカラヅカに戻ることは99.7%くらいはないわけで、となれば、見せるべきものはおのずと決まってきますよね。
 お衣装も10着くらい用意されていて、「壮一帆七変化」が楽しめるとか。「スナック・エリコ」が登場するとか、村井國夫さんと『エリザベート』エッセン版二幕の「パパみたいに」を含めた父と娘の寸劇とか、ほかにもいろいろ…。

 楽しみ。
 
 ギャグというワードに引っかからなくはないけど(笑)、壮さんがこれからを生き抜くには、やっぱりコメディエンヌとしての力量が重要になってくると思っているので。

 て。ドヤ顔しちゃった(笑)。
 わたしが得意になることじゃなかった。さっきからエラソーなこと言って何者なのって突っ込まれそう。ただのファンです。

 『OGエンターテイメント TV NAVI #168』では、コンサート用のイメージ写真を撮影しているときに、裏面に使われているソフト帽をシュッとやってる写真を撮ったときに、みんなから「カッコイイね」「これだね」と言われて、やっぱりこれが自分の原点なのだと思ったとか。

 きゃああ。やっぱりそういうの、好きです(笑)。原点です(笑)。

 とりとめもなく書いてるうちに(もう仕事が手につかない)、本当にあと何時間かで幕があく時間。

 「壮一帆はまだまだ終わりません」
 「またお会いしましょう」

 壮さんの言葉がアタマの中を走っています。

 もうすぐですね、女優・壮一帆の初舞台。

 去年の8月31日で止まっていた時計が、また動き始めました。

 行ってらっしゃい。素晴らしい舞台になりますように。

So in Love





 今年も八月がやってきました。
 壮さんの誕生日のある八月。壮月。

 もうずーっと、八月というと、何かしら楽しみなことがいっぱいで、ついでに、このブログを始めたのも八月で(笑)。

 でも、今年の八月は、そのうれしさ格別です。たまたまなのかもしれないけど、タカラヅカを退団しても、こうやって、舞台を楽しみに待っていられるのが本当にうれしい。

 それに、その舞台がシアターコクーンでのコンサートで、しかも荻田先生の演出で、ヤンさんも振付に入ってくれているなんて…。

 壮さんもうれしいだろうなあ。いや、そんな喜びに浸るより、きっといまはお稽古に必死ですよね。

 壮さんのコンサート。やってもらいたかったの。インタビューやら稽古場レポートやらを見るに、待ち遠しくてたまりません。


  「エンタメターミナル」のお稽古場の写真でも、トレンチコートにソフト帽をかぶっているけど、ウエストをきゅっとシェイプしてあって、もう男役じゃないんだなあと思う。手首の角度や、肩の入れ方も、心なしかちょっとだけフェミニン。

 ヤバい。これたぶん、わたしの好きな感じだわ(笑)。女性のままでマニッシュなカッコしてさりげなく踊っちゃったり…。素敵だろうなあ。ANJU先生とのマンツーマン写真が素敵すぎる。
 
 ちょっと気になるのは、左の腕に結んでいる赤い紐のようなもの。これ、舞台上で何か小道具的なものがあるのかな。それとも、ただのブレスレット? 赤い紐には特別な意味があるのでちょっと気になります ^ ^ 

 『タランテラ!』で「囚われた男」を演じた壮さんの首元にクモの糸のような細いロープが巻き付いていて、それが首輪で繋がれているみたいでとってもセクシーで、ひとりドキドキしていたことを思い出したり。

 うわあああ。荻田先生の作品に出る壮さんをもうすぐ観られるんですね。今さらながらに、うれしさがこみあげてきました(笑)。

 ちゃんとレビューを書こうと思って放り出していた『ライムライト』ですが、条件反射的に涙が出てしまったのが、テリーに扮した野々すみ花ちゃんが、舞台をはねた後で、トレンチコートを肩からかけてもらっているシーンでした。

  『Tuxedo Jazz』の「アンタッチャブル」の場面。春野さんがニューヨークの街角で出会った、さびしそうにしてる女優志望の少女(わたしの穴かではそんな設定でした)にそのままオーバーラップしたのです。それはちょっと不思議な感覚で、ああ、荻田先生だなあと思えたのです。

 荻田先生の作品には、作品同士が自然に引き合うような感覚があって、そこに
惹かれます。タカラヅカ時代のショーは、宝塚歌劇という舞台用に作られた作品だし、壮さんがインタビューで言っていたように、いまの荻田先生が作るものは全然違うものになっているはずだし、壮さんにどんなものを求めているかも分からない。それでもきっと、壮さんとの時間というのは、ずっと続いているんじゃないか。そんなふうに感じられました。

  「エンタメターミナル」のお稽古場写真の話に戻しましょう。

 ダンサーの、三井聡さん、西田健二さんと踊っている写真は、男性ダンサーのあまりの男らしさに、壮さんも女子なんだなーと、ひときわかわいく見えたりするのですが、よくよく見ると、大澄賢也さんのポーズのほうがかわいかったり(笑)。

 ウソです。かわいい、かわいいよー、カズホちゃん。

 「モトジェン」で見た、『日経ウーマン』の撮影風景の動画で、「かわいい」「かわいい」の声に照れていた、かわいいカズホさんの姿が思い出されます。

 「かわいいって言われるのに慣れていないんです」みたいなことを言っていたけれど、これからは「かわいい」の時代なんだなと思います。

 壮一帆という人は、自由人に見えて(笑)、システムの中で自分に求められているものについて、いつも考えているようなところがあると思っているのだけど、タカラヅカ時代は、周りやご本人が感じている以上にそういう部分が強く作用していたのかもしれませんね。

 携帯サイト「モトジェン」の笠井アナウンサーのインタビューでも、こんなことを言っていました。

《ディナーショーの時、すごく不思議な感覚があって。また男役をやることに、最初は抵抗や不安もあったんですけど、やってみたら現役時代にもやらなかったような決めポーズとか投げキッスをしている自分がいたんですよ》

《現役時代、何かを背負ってるとか、縛られてるつもりはなかったんですけど……》

《……それがなくなって自由になったら、めちゃめちゃはばたいている自分がいて(笑)》

 ディナーショーでは、まさに、そんな感じでした! そんな壮さんがとってもチャーミングでした。

 タカラヅカは、いかにカッコイイ男役を演じるかということが、タカラヅカの男役の共通したテーマだったと思うけれど、これからは違う。もう「かわいい」を封印することはないわけで。いままでより大きな世界で、もっともっと、自由にまき散らしてください。


 「宝塚ジャーナル」のインタビューでは、コンサートについてこんなふうに話していました。

《演出の荻田(浩一)先生の愛情がギッシリと詰まっていて》

《今の自分の気持ちを踏まえて、新しい私の色々な面を観て頂きたいですし、そこが活かせるように荻田先生が本当に私のことをよく理解して構成してくださっています》

《新しい音域、新しいジャンルの曲にも挑戦します》

 壮さんがそんなふうに思っているのなら、何が起こってもこわくありません(笑)。

 いや、それ以前にぜんっぜん心配していません。素敵なコンサートだってわかってるから。

 でも、まったく心配されないっていうのも寂しいですよね(笑)。

 どんな七変化が見られるのでしょう。

 マニッシュでカッコイイ壮さんや、アンナ・カリーナみたいな壮さん、ドミニク・サンダみたいな壮さん、「愛の嵐」な壮さんとか、着ぐるみ着た壮さんとか、お稽古場の普通の壮一帆さんとか、ラッキー嬢ちゃんみたいな壮さんとか、マシンガントークでやり合ってる壮さんとか、ピーターパンみたいな壮さんとか、見たい壮さんはたくさんあるけど、わたしのなかにあるいまの壮さんのイメージは、『ティファニーで朝食を』のオードリーです。

 いつも旅行中。まだ自分の居場所が見つかってなくて、シックな黒のドレスを着て、大股で街を歩きながら、バケットをかじっているような…。ちょっとおかしな、ひとりぼっちの小さな女の子。

 実際の『Feel SO Good』では、どんなカズホさんが飛び出してくるのやら。

 楽しみで楽しみで、心配はしていないけど、やっぱりちょっと胃がしくしくしてきました(笑)。

 壮さんの初コンサート『Feel SO Good』は8月5日から8月9日まで。皆さまぜひ。
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 タカラヅカの元トップスターたちが、昭和歌謡を歌うコンピレーションアルバム、『麗人REIJ-IN -Showa Era-』。

 このアルバムで、壮さんは「黒い花びら」を歌った。アルバム中ひときわ異彩を放つ、渋い選曲だ。

 サックスの短いイントロのあと、「黒い花びら」という印象的な歌詞を、ずしんと響く低い音で歌う。この歌い出しをキメなければ成立しない。ブルースのフィーリングが必要な難しい曲。そして、一度聞いたら忘れられないような強烈な印象を残す。

 水原弘の歌ったオリジナル曲は、かすれ気味なシブい低音だったけれど、壮さんの「黒い花びら」は、想像したよりも低くて、想像したよりも、ずっときれいな声。出だしの「黒い花びら」もバッチリ決めてきた。


♪ 黒い花びら 静かに散った
  あの人は帰らぬ 遠い夢
  俺は知ってる 恋の悲しさ
          恋の苦しさ

  だから だから もう恋なんか
  したくない したくないのさ


 歌の後に、レトロなバンドの音がついてくる感じ、たまりません。それに、壮さんのこの声の色気ったら…。現役時代と違うのは、この色気だと思う。

 水の流れている地下の深くから聞こえてくるような、ちょっと湿り気のある低いきれいな声。素敵だ。胸深くに、壮さんの歌声がゆっくりと充たされていく。

 コクがあって、苦さの中にもほんのり甘さがあって、香りよくクリアな味わい。コーヒーでいうならブルーマウンテンかなあ。

 心の奥底の闇を歌った歌だから、なんだか地下への階段を降りていくキャリエールを思い出した。ううん、前田慶次かな。

 宝塚時代からそうだった。心の奥底にあるほの暗いものを表現させたら、壮さんはピカイチだった。

 そういう意味で、キーといい心情的な部分といい、この「黒い花びら」は、壮一帆という人にドンピシャ。セットリストを見て、「この曲、誰が歌うの?」と驚いていた「麗人」上級生がいらっしゃったそうですが、壮さん以外に歌う人いないでしょう(笑)、と思う。


♪ 黒い花びら 涙にうかべ
  今は亡いあの人 あゝ初恋
  俺は知ってる 恋の淋しさ
          恋の切なさ

  だから だから もう恋なんか
  したくない したくないのさ


 それにしても意味深な歌詞です。なんといっても「黒い花びら」がミステリアス。
 悲しくて苦しくて寂しくて切ない恋の歌。恋の甘さや喜びやうれしさ楽しさなんかはどこにもない。

 この歌詞だけでも、壮さんのサヨナラ公演『一夢庵風流記 前田慶次』の劇中歌になりそうなくらい、慶次の心情にぴたりと嵌る。リピートしているうちに、壮さんの中にはまだ慶次が住んでいるんじゃないかと思ってしまったくらいだ(生きていてほしいなと思う)。

 そういえば、『一夢庵風流記 前田慶次』の劇中、愛加あゆちゃん演じるまつと慶次が桜の木の下で歌ったデュエット曲があったけれど、そのタイトルが「薄墨の花片」だった。作者の大野先生の頭の中に「黒い花びら」があって、それが「薄墨の花片」の着想になったのではないかと想像してみるのもちょっと楽しい。

 ところで、この「黒い花びら」という不思議なブルースは、どんなふうにして生まれたんだろう。歌っている水原弘ってどんな人なんだろう。そんな興味がわいて、水原弘のCDを何枚か聴いた。

 歌詞は永六輔、曲は中村八大。昭和の国民的ヒットソングをたくさん作った「六・八コンビ」(といわれていた)の曲だった。

 それも、まだ無名だった二人が注目を集めたのが、他ならぬこの「黒い花びら」。坂本九の「上を向いて歩こう」や「見上げてごらん夜の星を」、「遠くへ行きたい」「夢で逢いましょう」も、みんなこの「黒い花びら」の後に世に出た歌手であり、歌だったのだ。
 関連本も二冊読んでみた。一冊は村松友視『黒い花びら』。これはタイトルどおり、水原弘の一生をたどって書き起こしたもの。村松友視の思いが投影されていて、とても面白かった。

 もう一冊は、佐藤剛『「黄昏のビギン」の物語 奇跡のジャパニーズ・スタンダードはいかにして生まれたか』。

 ちあきなおみによってジャパニーズ・スタンダードとして息を吹き返した「黄昏のビギン」も、水原弘のために永六輔と中村八大が作った曲で、この本では、ちあきなおみの時代に始まり、「黄昏のビギン」が生まれた時代にさかのぼり、最後は思いもよらない作者の想像力で、少女時代のちあきなおみの話になり、すべてが一つにつながる。面白くて一気に読んでしまった。

 すごい曲だったのだなあ。「黒い花びら」も「黄昏のビギン」も。シンプルだけど、ただシンプルなだけじゃない。磨きぬかれた言葉と音符でもって、きゅっと人の心をつかみにくる。どの曲も、一度聴いたら忘れない。

 二冊の本によると、「黒い花びら」は、第一回レコード大賞をとっているけれど、じつは、いちばん売れたレコードだというわけではなかったという。

 当時の水原弘と、永六輔、中村八大のコンビは、レコード会社に所属していない新人たち。もっとも、レコード大賞という賞自体も新設されたばかりでそんなものだったとか。旧来の歌謡界からしたら、海のものとも山のものともしれない若造たちに、この賞を取らせて、歌謡界に新しい風を吹かせたい。ニュー・ウェーブ的な存在が日本の歌謡界に必要だから、こいつらを育てていこう。そんな思いが、賞の創設にかかわった古賀政男や服部良一らのなかにあったのではないかという。

 映画界には石原裕次郎が出現し、野球界には長嶋茂雄が現れた時代だったそうだ。ロカビリー・ブームはあったけれど、歌謡界にも、裕次郎のようなスターを、という狙いがあったのかもしれない。
 レコード大賞を受賞したことで、「黒い花びら」はさらに売れ、衝撃的なデビューとなった。

 「決して笑わず、やや白眼を残し、上目遣いで」歌うのが水原弘のスタイルだったと、村松友視は本の中で書いている。

 「やや古風な不良の陰を宿すこの青年の風貌に似合うドスのきいた声と、意外なほどオーソドックスな歌唱法のアンバランスな組み合わせ」。

 その表現で思い浮かべたのがジェームズ・ディーンだ。「黒い花びら」が発表されたのが昭和34年(1959年)。『エデンの東』と『理由なき反抗』が公開されて、『ジャイアンツ』の撮影終了後に自動車事故で死去したのが、それより前の1955年だから、意識していたのかもしれない。
 
 村松友視はこうも書いている。

 「『黒い花びら』の中に不良と無頼と虚無感を見た」

 「虚無と哀愁を低音で歌って、二十代以上の女性に、たまらないセックスアピールを感じさせ」たと。

 当時、「僕は泣いちっち」という明るい曲を歌う生真面目な守谷浩と水原弘を並べ、三輪明宏は、「昼と夜の違いだな」と表現したという。

 しかし、そんな不良っぽいパブリックイメージに、水原弘は潰されていく。派手に遊び歩いて、売れなくなっても遊び歩いて、借金を重ねて、お金になる仕事がほしくて歌手としてのキャリアにはならない地方回りの仕事をして、最後は身体を壊し、巡業先で倒れて壮絶な死を迎えた。

 似ていると言われた石原裕次郎。
 「悪」のイメージを個性として花開かせ、大役者になっていった勝新太郎。

 そんな大スターたちに憧れ、自分を見失っていったのかもしれない。

 なんという「しくじり先生」、しくじり人生。
 評伝を読みながら、何度も当時の水原弘に言ってあげたくなった。

 あなたの行く道はそっちじゃない。

 役者の才能はなかったのだ。不良の才能もなかった。裕次郎のもつ「育ちのよさ」も、勝新のもつ「無頼」もなかった。

 でも、歌のうまさはピカイチだった。誰もが水原弘の歌を評価していたのに。歌に生きることを願って、たくさんの人が助言をしたというのに。

 村松友視は、そんな彼の死をこう書いた。

「彼の人生が、うっとりするような無頼との道行であったようにも思えてくるのだ」

 無頼との道行。

 なんて昭和なんだと思う。
 水原弘だけじゃない。そういう時代だったのだ。昭和という時代の闇を歌う黒い物語。水原弘が、昭和の歌謡界に咲いた黒い花だったのだ。

 そんな歌を、壮さんが歌う。『心中・恋の大和路』で一人の女性のために堕ちていった忠兵衛を演じた壮さんが。昭和という時代のブルースを。

 日比谷公会堂での「麗人コンサート」で、CDとはまた違った「黒い花びら」を聴かせてくれるだろうか。

※村松友視の『黒い花びら』について、松岡正剛さんが「千夜千冊」に書いています。この時代のこと、水原弘のことがとてもよく分かるので、よかったらどうぞ。
◎松岡正剛の千夜千冊 村松友視『黒い花びら』
壮一帆firstコンサート 『Feel SO Good』

 Bunkamuraのサイトに、壮さんのコンサートのページが登場しました。

 うっわああ。きれい。マニッシュ。すごい。すてき…。

 壮さんの退団後のことは、いろいろいろいろ想像したけど、こんなだったらいいなあと考えていた最良のかたちかもしれない。

 壮さんの名前で行う最初の舞台の仕事が、こんなコンサートだなんて。それも、荻田先生の演出で実現するなんて。

 この6月1日から、壮さんが事務所に所属することになって(すでにご存じだと思いますが)、そこでの本格的な仕事が、このコンサート。

 ディナーショーでも壮さん自身が、「充電期間は終わりました!」ときっぱり言い放っていたから、何かすてきなことが待っている予感はあったのです。

 でも、本当に本当に素敵なことだった。

 サイトに載っている宣伝文がまた素敵…。

 《2015年8月、壮一帆の新しい“時”が始まります》

 《Feel So Good! なんて幸せな“時”!》

  “時”は止まりません。かけがえのない愛しい残像を残しながら、未来へ続きます。何よりも透明に、何よりも純粋に、何よりもたおやかに・・・》

 この文は、荻田先生が書いてくれたのでしょうか。

 チャック・マンジョーネに『Feel So Good』っていう、アルバムがあります。読みながら、そのタイトル曲「Feel So Good」が聞こえてきました。

 アフリカの草原を走る動物たちを思わせるようなその曲は壮さんにぴったりで、いつか、それこそディナーショーなんかのタイトルになるんじゃないかと思っていました。「SO」ソングは、ほかにもたくさんたくさん素敵なのがあるけど(なんて使い勝手のよい名前(笑))。

 いよいよ動き始めるですね、二つ目の壮さんの時計。
 これからどんなふうに驚かせたり、面白がらせてくれるんだろう。楽しみで楽しみでたまりません。

 さしあたっては、このコンサート。

 荻田先生の作品に壮さんが出演したのは、この4作でしょうか。

 ・雪組『OVER THE MOON』(月影瞳主演)
 ・雪組『タランテラ!』(朝海ひかる主演)
 ・雪組『A little flower (舞風りらミュージックサロン)
 ・花組『TUXEDO JAZZ』(春野寿美礼主演)

 どれも大好きだけど、『タランテラ!』にはひとかたならぬ思い入れがあります。

 『タランテラ!』を観たから、ここまで壮さんにハマってしまったんだと思う(ほかにもそう思う作品はたくさんありますが(笑))。

 役名は確か、「囚われた男」。ひたすらにひたすらに何かから逃げている男の役でした。この頃の壮さんは、自ら「挫折専科」と名乗るくらい、悩み苦しむ役が多かった時代だけど、好きだったなあ、この壮さん。

 コムさんと舞風さんが踊り狂い、雪組の歌手たちが入れ替わり立ち替わり、たましいの歌声を響かせていたこのショーで、壮さんはいわば「アクター」としての出演で、その悩み苦しみ、翻弄されまくる壮さんに完全に持って行かれたのでした。

 壮さん中心に観ていたからというのもあるとは思いますが、わたしにとっては、ウラ主人公設定でした(笑)。壮さん(囚われた男)目線で見る『タランテラ!』がまた、めちゃくちゃ面白かったのです。ちゃんとストーリーもあったしね(このときは壮さんが花組に行くことが決まっていたからこその、リアルな人間設定だったのではないかと思っています)。

 ショーの後半に「カリプソ」という荻田先生のオリジナルの曲を銀橋で歌ったのだけど、いつも手をぎゅうっと握って見ていたのも今となってはいい思い出です(笑)。あのとき壮さん、「カフェブレ」に出たときも、中井さんに「銀橋がこわいんです」と真剣に訴えてましたから。あの話面白かった。銀橋の回りにはに霊がいっぱいいるとか、そんなことも話していたような(笑)。

 あ、こんなことばかり書いているから話が進まないんだった(笑)。

 「カリプソ」も大好きです。

 《偶然のすれ違い ただ通り過ぎただけ》っていうフレーズがすごく好きだった。以前も書いたけれど、壮さんが銀橋でそんなことを歌っている後ろで、あゆっちがにっこにこで踊っているんですよね。ホントに、このときはすれ違ってたんだなあって思って。

 そして、このショーの後も、荻田先生とは、壮さんの花組さとがえり本公演第一作の『TUXEDO JAZZ』でごいっしょ。冒頭のふるさとに帰ってきた青年は、『タランテラ!』の囚われた男の続きなのだと、胸が熱くなりました。

 その後、荻田先生は宝塚を退団されたので、壮さんは出られることもなく、もちろん主演作を演出していただくこともなかったのですが、退団後にこうやって、壮さんのための作品を作ってもらえる。この素敵な「偶然」に感謝します。

 はじめて、壮さんのために作品を作っていただけるので、本当に楽しみです。

 奇しくも、Bunkamuraのサイトに、壮さんのコンサートのページが登場したのが6月6日。去年の6月6日に、壮さんのサヨナラ公演『一夢庵風流記 前田慶次』 『My Dream TAKARAZUKA』は、宝塚大劇場で初日の幕を開けたのでした。

 懐かしくなって、おそるおそる去年のページを見てみました。

『花が舞い、雪が舞い…』

 思い出した! そうだ、初日に「ブライト」で、小さな蜘蛛を見つけたんだ!

  「♪ もしも 小さな蜘蛛を見つけたときは どうか
  そっと 手を触れないで逃がしてあげて どうぞ
  世界の果ての涯に 夢の糸を紡いで
  真っ白いレースの巣で 時の流れ 編み込む」

  (『タランテラ!』より)

 タランテラ・アラベスク。囚われたのは誰?

 宣伝文に戻りましょう。

 《素敵な力で新しい光を放つ新しい“時”。それは、過去を交差させながら、更なる彩りを変えます》

 《“時”は止まりません。かけがえのない愛しい残像を残しながら、未来へ続きます。何よりも透明に、何よりも純粋に、何よりもたおやかに・・・》

 テーマは“時”。

 舞台に、どんな“時”が現れ、また通り過ぎていくのか。楽しみに無防備に(荻田先生だもの)、その時を待ちたいと思います。

 わたしの夏は、今年も「壮月」になりそうです。

 Feel so good!
そんなわけで、『So wonderful!!』(大阪)の、わたくし的ハイライト。

○最初のポーズ
とにかく最高。せくしー。壮さんがボブ・フォッシーを踊っているところとか見たい!

○「Why?」(東方神起)
ガンガンに攻めまくるまなざし! 殺されました。

○「ウィーアー!」(東方神起)
「ポップスター」みたいなノリ。こめかみのあたりからから、指で小粋にサインするの、かーわいい。ラブリー。

○イケメンって言えばいいの? それともヴィジュアル系? 髪にもキラキラの粉が付いていた。あんな壮さん見るの初めて。

○しかし、なぜ在団中にそれをやらなかったのか(笑)。

○壮さんのなかの男役はそういうことやらない人だったんだろうか(笑)。いや、好きだけど、そういうとこ。

○いや、ちがう! 雪組下級生時代『レ・コラージュ』の「ラブ・フォー・セール」があんな感じだった! 大好きだった、あの壮さん!(映像でしたか知らないけど)

○ドS卒業?
凶暴ネタは投下されず(笑)。

○一曲一曲歌い終えたときの顔が、最高。ぜーんぶ違って、ぜんぶイイ。歌い終えたその曲をいつくしむような。ときどき、ちょーおマニッシュだったり、かぶいていたり。

○お菓子のネタ、なし。
何か入れてくれるかなと思ったけど、スカステ対策でしょうか(笑)。思えば、最初のディナーショーからして、レディボーデンの話を入れていた壮さん。料理とか美容の話じゃなくて、そういうマニッシュな(笑)食べ物の話をしてくれるのがいつも好きです(笑)。

○水分補給するソーさん
一度目はさあやちゃん手作りの紫スパンのボトルカバー。二度目は客席に仕込まれていた、「あひるのガーコちゃん」付きボトル。好きなの? カズホさん、ガーコちゃん、好きなの?

○流れ星ひかる
カズホさんのなかで、すっかりキャラが育っているのかもしれません。歌舞伎町にいそうな「流れ星ひかる」さん。「白い街のホスト」という役を演じたこともありましたね(笑)。あれ、ホントにプログラムに載ってるからね(笑)。今後も登場を期待します。

○虎のジャージは誰が?
舞台稽古では、同期の方からいただいた黄色の虎のジャージを着用していたという壮さん。いったいどなたがそんな素敵なプレゼントを…。

○攻めるんだろうなと思った
そんなカズホさんを見ていて、「今日は攻めるんだろうな」と思ったというさあや嬢。

○澄夫チャンの教え
「恋をしなさい。そして、捨てられなさい」
澄夫チャンも最高だし、笑ってネタにしてくるカズホさんがまた最高。その後、さあやブログによって、かつて、「娘役はみんな、遊ばれて捨てられればいいのよ」という名言を残しているとか。おそらくは、『エンター・ザ・レビュー』の頃でしょうか(笑)。

○「Feeling good」
カッコよかったあ。ところどころ、キメの低音フレーズが響く。なくさないでね、この低い声 ^ ^ 

○「散らば花のごとく」
ほかの曲は、壮一帆さんが歌っていたのに、この曲は慶次でした。慶次が歌ってた。かぶいてた。歌い終わったときの表情! 慶次フォーエバー!

○「この場所は私のもの」(『ファントム』)
東京で見て、そうなんだろうなあとは思ったけど、ホントにクリスティーヌだったんだ(笑)。みづらみたいで、にっこにこでかわいかった。

○淡き光に
博多座『ファンキー・ガイ』でも使われていましたね。
ごめんなさい、ウソ書いちゃった。タンゴのところのシルバーグレイのスーツ、『My Dream TAKARAZUKA』のスーツじゃなかった。

この曲、東京都すごく印象が違う。なんでだろう。髪も、東京はオールバックがびちーっとキマッてた記がする。やっぱりヘアスタイルの具合で踊りも変わるんだろうか。

○Adios Nonino
ステージ下手で、一花ちゃんを抱き寄せた場面。背中に回した手とそのポーズとシルエットが、『Exciter!!』プロローグそのままで、フリーズしました。大好きだった-、一花ちゃんと踊るところ。
○なぜ旗をそこに?
アンコールでステージに呼んだ一花ちゃん、さあやちゃんが、三角のSOフラッグを持ってきました。渡されて、何の躊躇もなくボタンホールに差し込む壮さん。

○ショッキングピンクの変わり燕尾がすごーくかわいかった。燕尾のしっぽが短くて、中にシャツを着ないで? 胸元がVラインに開いてるの。ここも卒業のあかし ^ ^ ずっと見てたら、着ぐるみにも見えてきた(笑)。かわいいイキモノ。

○RPG(SEKAI NO OWARI)アンコール
歌い終えて、三人で後ろの扉から引っ込むときの投げKISS。かわいかった! 口もとの手をふくらませて、指をまあるくぱあんと。キスのシャボン玉がはじけたみたいな。

○一花ちゃんとさあやちゃん
花組時代にずっといっしょに舞台を作ってきた二人。下級生だけど、ちゃんと、自分の考えやアイデアをたくさん出してくれるから、いっしょに作ってきて本当に楽しかったという話。
うんうん。そんな空気はしっかり伝わってきました。

○優子先生の背中にみんな釘付け
一度は必ずいじらないではいられない壮さん。スカステの「男役の美学」では、普段あまり話すことはないと言っていたけど、優子先生とメンバーとの素敵な交友の話も出てきて、ああ、卒業したんだなあと。「男役の美学」で、男役の声で重要だと思うのは「甘さ」と言っていた優子先生に、いまの壮さんの歌はどうか聞いてみたいです。

○サクラ
近所の桜が葉桜になったのを見ていて、今と季節は少し違うけれど、大劇場千秋楽の日の朝、花のみちの新緑を思い出したと話してくれました。車から降りたら、雨上がりの湿った空気と、木々の新緑の匂いを感じた、たくさんのファンの方と雪組のみんなに迎えられて本当に幸せでしたと。
面白ネタばかりではなく(笑)、四季のうつろいとか、そのときの空気や風、そういったものもちゃんと受け止めている壮さん。
そうでした。あの緑の木々はサクラだった。

     *     *     *

 考えてみたら、構成といい、スタッフといい、共演者といい、タカラヅカ時代となんら変わらないショーでした。退団後のこうしたショーだと、バックダンサーは男性だったりするけれど、そんなこともなく。
 だけど、男役・壮一帆としてではなく、女優・壮一帆としてでもない、あわいの壮一帆として歌っているような風情で、それがとてもよかったです。

 いましか見られない、いまこのときの壮一帆。

 でも、これがタカラヅカを卒業した壮一帆のスタートラインなんだと思いました。

 これからも、無理せず、やりたいことをやりたいように、でも、舞台の上では役や世界をとことん極める。そんなふうにしていてくれたらよいなあ。

 まあ、スカート姿は見てみたいですが、壮さんのことだもの、スカートはいたからっていきなり女っぽくなわけでもないだろうし、そんなに変わらないんじゃないかなあ(笑)。

 もう、男役とかどうとかじゃなく、これが壮さんなんだと思いました。こんなマニッシュな。

(まだつづく)
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 壮さーん。

 阪急インターナショナルの『So wonderful!!』、よかったー! すごくすごくすごくすごくすごく!

 歌が素晴らしかったです。

 一曲一曲に心をこめて。それは、このディナーショーの舞台に立つにあたって、壮さんがずっと言ってきたことです。メニューカードにも書いてあった。

 でもそれって、誰でもなんとなく言ってしまう常套句というか、それ言っとけば大丈夫みたいなテキトー言葉じゃない? だから、言われても流してしまいそうになるのだけど、もちろん壮さんは、そんなテキトーな気持ちで言ったわけではありません(断言)。

 一曲一曲に思いがこめられているのが、ちゃんとわかるんです。話したことが、みんなステージに描かれているの。言文一致ならぬ、言体一致?

 大阪では、歌の世界が、より濃密になっていました。歌う壮さんから、思いが溢れ出ていました。

 壮さんが歌をどんなに大切にしているかは東京でも感じていたけれど、大阪では、それがさらに深まっているように思いました。

 壮さんが、この1カ月の間、これらの曲をしっかりと抱きしめて、歌の世界に向かい合ってきたことが伝わってきたパフォーマンスでした。

 その間には、東京のステージに立ったことで、気づいたこと、ひらめきがあったでしょう。「麗人」のレコーディングがあったり、レッスンや、まだ私たちには見えないお仕事の動きがあったのかもしれないし、お仕事以外でもいろんなことを受け止めてきたことでしょう。そして、ショーについてチームのみんなと話し合ったり、ファンからの手紙も読んだり…。そんないろいろなことが作用しているんでしょうね。たぶんですが…。それが、私たちがよく知っている壮さんの舞台の作り方だから。

 だけど、東京からたった1か月で、こんなにも違うのか。

 それだから観るのをやめられないのです(笑)。刻一刻と、こんなに変わっていくんだもの。それが壮一帆だなと思い知らされました。

 すごい吸収力! 心がやわらかなのかな。新緑の木々みたいにみずみずしいのかな。

 もちろん現役時代だってそうだったんですよ。でも今は、男役としてそこにいるわけでも、芝居の役として歌っているわけでもなく、「ただの壮一帆」としてそこにいるわけで、その「ただの壮一帆」からフィルターなしに溢れて出てるものものだから、濃密なのが流れこんでくるのかもしれません(笑)。

 単に衣装の補正をしていないというだけではなく、つまりは、心の補正、男役というファンタジーの衣を取り去った、より素に近い状態からのパフォーマンスだから、表現の一つ一つが生々しく、リアルに届くのかもしれない…。と思います。

 そしてそれはちょっとクセになる(笑)。危険な香りもして、これは新しい世界かなあ。ドキドキ、させられてます(笑)。

 でも、歌に対するアプローチが変わるのは当然かもしれませんね。芝居をしているときは、役の人物になって、その時どきの感情を歌うわけだけれど、今は、その一曲で作品世界や、役だったら本質的な部分を表現しなくてはならないから。

 果てしないです。歌と舞の道。

 壮さんがショーのなかで、演出の酒井澄夫先生からこんなことを言ってもらったと紹介していました。

「踊りはいつかできなくなるけれど、歌は一生歌っていけるから、歌を続けていきなさい」と。

 壮さんも、いつか声が出なくなったり、若い頃のように歌えなくなるときがくるかもしれないけれど、年齢を重ねることでできる表現があると思うので、歌は続けていきたい。踊るのも好きなので、動けるうちは踊っていきたい。そして、ちょっとはにかむように「やっぱり舞台が好き」とカミングアウトしてくれました。

 「舞台が好き」

 このひと言がいちばんうれしかったかもしれない。ちょっと照れたような顔で、自分の好きな人を紹介するみたいな感じだったのです。

「やっぱりここに戻ってきたよ(テヘ)」

 ってことなのかな。壮さんらしい。かわいい。『星の王子さま』のきつねみたいだった

 「もう充電期間は終わりました!」
 「スカートもはきます」
 「1年たってないけど、もういいでしょう!(笑)」
 「ショーで感じたものを心のエネルギーにして、どんどん前に進みます」

 そして、「壮一帆をよろしくお願いします」と。

 壮さんありがとう! 充電期間完了おめでとうございます!

 さらにさらにこの日はサプライズで、私たちが待ち望んでいたうれしいお知らせが、壮さんの口から。

 「八月に東京シアター・コクーン(!)と、と大阪のサンケイホールブリーゼでコンサートが開催されます!」

 きゃああああ、うれしい! 待ってたの、こんなお知らせを。こんな壮さんを見られる日を!

 もうタカラヅカは卒業したから、これからは突然お別れを宣告されることもないのだと思うと、それも本当にうれしい。落ち着いて、ずっと見ていけるんだと思うと、現役時代とはまた違ったしあわせを感じます。

 どうぞよろしくお願いします!

 そんなわけで、大阪では、東京のショーよりもさらに深いところまで壮さんの歌の世界に入り込んでしまったわけですが、次回からは、中でもじぶん的ハイライトといえる幾つかのシーンの印象を書き留めておきたいと思います。

 そういうわけで、続く


【引き続き、これから大阪のディナーショーをご覧になる方は絶対に読まないでください】



 「風のささやき」も「パリのノクターン」も「群衆」も、わたしが大好きな壮さんの歌声。 低い声なのだけど、クリア。暗いところから出る声ではないの。明るいところからの、爽やかな風の吹く曇り空のような、とっても安心できる低い声。


 「風のささやき」は、ミシェル・ルグランの曲。曇った日のパリの、古い街角の空気が感じられるようなメロディーに、そんな壮さんの声はよく合います。


「♪ 気づいているさ、風のささやきを 僕を呼び止める 君の声を」


時間を止めたいと何度思ったことか。でも、そんな目に見えない大切なものは、いつかどこかで呼び覚まされることもあるのだと思います。いま、このときだって。


 ピエールが消えてしまったあとは、一花ちゃんとさあやちゃんが「Shall we dance? 」を。かわいくてきれいな歌声。されに曲もとーってもいい! ヘイリーさーん。壮さんが出てきてくれるの? と、ワクワクしていると…。


 会場のいちばん後ろのステージ? に壮さんが! しかも、『My Dream TAKARAZUKA!!』のシルバーグレーのスーツ、髪はオールバックです! 


  綺麗! 麗人!   カッコいい!


 しかも、ここはタンゴのコーナーらしく、曲は「淡き光に」です。


歌のメニューにこの曲が入っていて、うれしかったなあ。大好きな曲なのです。そして、壮さんにタンゴを歌っていってもらいたいと思っているので、本当にうれしい。


初めてのディナーショーにも、タンゴのコーナーがあって、そこで壮さんは、黒燕尾でソロダンスをおどり、「ウノ」を歌いました。この曲は、花組のショー『ザ・レビュースコープ』のタンゴの名場面でも使われた曲。高汐巴さんが一人、黒燕尾で歌いました。


歌のうまさということでは満点ではなかったと思うけれど、あの長い大きな曲を、壮さんはドラマチックに歌いきったのです。


歌うごとに何かをつかんでいったんだろうなというのがとてもよくわかりました。後日、スカイステージで見た初日のこの歌は、わたしが東京で見たのとは、まったく別物のように感じました。映像の臨場感のなさを引いても、盛り上げ方がまったく違ったのです。


あの最初のディナーショーを思い出しました。タンゴの歌って、物語の歌だし、低い声を出せる壮さんには合ってるのだと思う。


衣装を着替えて、今度は光沢のあるグレーのスーツ。後ろから前へ客席を歩きながら歌います。


そして、ピアソラの「Adios Nonino(アディオス・ノニーノ)」。これは一花ちゃんと二人で男女の踊り。


ぴたりと呼吸が合って、スピード感のある、スリリングで熱いタンゴ。ちょっとクールな空気も感じるのが壮さんらしいなと思う。振付はAYAKO先生。


素晴らしいリフトも入るのですが、はい行くよってな感じではなく、ダンスのなかで、極めて自然に回っているのです。これは、壮さんといちかちゃんだからできたタンゴの踊りだったと思います。素晴らしかったです。


続いては、ディズニー映画から。『塔の上のラプンツェル』の「輝く未来」を、さあやちゃんが歌い、最後は壮さんが舞台に現れてデュエットとなります。


さあやちゃんが、イゾラベッラでソロのディナーコンサートをしたときに歌った曲です。ラプンツェルが、世界の広さ、大きさ、そして自由であることに気づいたよろこびを歌う、美しく感動的なデュエットです。


ソロのコンサートだったから、さあやちゃんは、その、王子様ではないけどとびきりハートのある男性のパートを壮さんにお願いし、録音した声を流してデュエットしたのだそうです。それが、この曲です。


さあやちゃんの声と壮さんの声と思いが、きれいに対等に響き合って、女性同士がこんなに自然にデュエットできるなんて、素晴らしいです。


うれしさやしあわせな気持ちで胸はいっぱいです。なのに、ディズニーから、もう一曲。今度はソロで、『ノートルダムの鐘』から、「僕の願い」です。


客席を回りながら歌い、最後は中央のお立ち台の上で。


『ノートルダムの鐘』は、『ファントム』がそうだったように、救いのないお話です。でも、その痛ましいまでの、ピュアな心の叫びがせつなくてせつなくて、でもやっぱり、希望が勝っている! 壮さんだもの。


世の中は冷たくて虐めぬく

怪物だと嘲り笑うから、隠れて暮らしてる

僕はみんなを見ているのに、みんなは僕を知らない

でも、もし願いが叶うなら、みんなのもとに行きたい

光を浴びながら 一日だけでも暮らしたい

そしてもし 誰かが僕を愛してくれるなら

この願いが許される日が来るなら

もう何もいらない


これは、壮さんの『ファントム』なのだと思いました。


キャリエールは掛け値なしに素晴らしかったけれど、壮さんはファントムだってできたのだ。とっても素敵に。素晴らしく。


だからといって何がどうというわけではなくて、ただそれだけの話です。


この曲を聴いて、壮さんのミュージカルを見たいと思いました。だって、歌ったり踊ったりしているだけなのに、こんなにドラマがあるんですよ! ミュージカルになったら、ミュージカルになったら! この願いがかなったら!


最後まで書き上げるつもりだったのに、スマ帆ではなかなか進まず、大阪ディナーショーの時間がまもなくとなってしまいました。


なので、ひとまずここまで。


また、壮さんのショーが観られることがうれしくってたまりません。


大阪はとってもいいお天気です。行ってきます!









【これから大阪での『So wonderfull!!』をご覧になる方は、絶対に読まないでください。ネタバレ多数です(笑)】


 マニッシュ。

 もういっそ、これがタイトルでもよかったんじゃないかなあと思う。壮さんの退団後初のディナーショー、『So wonderfull!!』

 壮さん退団後のわたしは、そりゃあ、もちろんいつだって、次に舞台で会うのを待っているけれど、急かしたり焦らせたりするようなことはしたくなくて、フツーに毎日を楽しく過ごしながら、慶次のように大きな時間軸で「待っている」つもりだったけど、わたしをこんなに狂わせるのは壮さんだけだと改めて思いました(笑)。
 もうすでに書いたことだけれど、男役ではなく、とても自然に男装をしていて、これがいまの自然な壮さんなんだなあと思って…。つまり、うー…。カッコよかった。きれいだった。

 登場の仕方が「スター」でした(涙)。

 雷鳴の音とともにライトがつくと、ポーズを決めた壮さんが立っている。ロックスターだ! KAZUHO SO だ! 『KAZUHO SO』のちょーおカッコよかった「くちばしにチェリー」のPVみたい。

 さすが、澄夫チャン(笑)。わたしたちが何を待っていたかを、よーくわかっていらっしゃる(ありがとう)。

 どアタマから2曲続けて東方神起の曲。…てのは後から知りました(笑)。聞いたことないもん、知らないもん。でも、確かにポップでかっこいいカッコいいっ!
 懐かしい曲、聞きたかった曲を歌ってもらえるのはもちろんうれしいけれど、こうやって、知らなかった曲に出合えるのも、こういうショーの楽しみです。

 いきなり大盛り上がりの曲のあとは、自己紹介のMCです。いつもの壮さん。やめて8カ月、まだ8ヵ月…、とか言ってたかな。ヒールをしきりと気にしてるのがかわいい。

 壮さんのことを知り尽くしているであろう(笑)、桜一花ちゃんと初姫さあやちゃんという頼もしくも麗しい花組の娘役二人に囲まれて、話もはずみすぎちゃって。こうやって話しているうちに、緊張・のようなものもほぐれていくのでしょうね。

 つづいて曲は、マイケル・ブーブレの「Feeling Good」と。わあ、このアルバム持ってる。確か、世界的な大ヒットになったアルバム『It's Time』の一曲目。壮さんも「大好きな曲」と言っていました。

 ブーブレでは、花組時代のショー『ラブ・シンフォニー』で、黒燕尾姿の春野さんが大階段で歌っためーっちゃクールな曲が入ったアルバムに入ってる。「♪愛の 灯は いま 灯る It Had Better Be Tonight」ってヤツ。大好きだったの。春野さんの歌も、クールに黒燕尾で踊る壮さんも。

 「Feeling Good」も、すごく壮さんに似合って、カッコよかった。「It Had Better Be Tonight』も、いつか壮さんに歌ってほしい曲の一つです。

 つづいて、コール・ポーターの「I've got you under my skin」を客席に降りて。

 なんだか、現役時代よりもサービスたっぷりでドキドキします(笑)。歌声もセークシー…。

 これも大好きな曲。なつめさんも歌いましたよね。「アーイ・ガッチュウ…」ってとこ、大好きだった。

 ここでいったん袖へ。いちかちゃんとさあやちゃんのトークのあと、ディズニーの「いつか王子さまが…」。かわいい。

 「いつか王子さまが…」。この「王子さま」は壮さんのことと考えていいのかしら。それとも、壮さんも「いつか王子さまが…」なんて思ったりしているのかなあ。なんて考える。そのどっちつかずな感じも、なかなかいいもんです(笑)。

 そしてここから、タカラヅカ・メドレーのはじまり。

 もう、すっかりおなじみの『愛 燃える』の主題歌。このショーの演出をしてくれた酒井澄夫先生の作品というご縁もあるけれど、壮さんにとって本当に大切な曲なのだろうなと思う。新人公演の初主役。きっと、すべてはここから始まったのだ。

 マイティこと水美舞人くんが『カリスタの風に抱かれて』で初主演をしたのですが、その舞台にも駆けつけたとか。新人公演で主演をすることがどれほど大切なことかということを、壮さんが知っているからかなと思いました。マイティから来てくださいって頼まれたのかな。

 そして『虞美人』の「赤いけしの花」です。
 この曲を歌ってくれて、本当にうれしかった。『虞美人』の芝居のラストに、死んでしまった項羽を思って、王となった劉邦が歌う「赤いけしの花」が素晴らしくて、もう一度聴けたらと思っていたのです。「タカラヅカ・スペシャル」でも、ディナーショーでもサヨナラショーでも聴けなかったこの曲を、こうして聴くことができる。

 ありふれた言い方だけど、最後には歌が残るんだなと思いました。お芝居もショーも再現することは難しいけど、歌は、こうしてこれから先もずっと聴くことができる。壮さんが舞台に立って、歌ってくれさえすれば。

 劇中の劉邦とは一転し、立派な天子となって、上手側の花道からセリ上がってくる壮さんの姿が思い出されます。

 あの瞬間はいつも、息を詰めるようにして見つめていました。冠から垂れた飾りが少ーし揺れているところ、あれも虞美人草のようだったなあと、今頃になって思ってみたり…。伏せた目やまつ毛が思い出されます。

 『虞美人』は、忘れることのない作品です。大好きだった場面とともに、映像には残せない、そのときそのときの空気感や、壮さんの身体から放たれていたものが、今でもわたしの体内に残っています。舞台だから可能だったドラマでした。

 不意に、木村信司先生への感謝の気持ちまで甦ってきました(笑)。『歌劇』の「贈る言葉」には滂沱の涙でした。木村先生演出の『愛 燃える』の新人公演、『オグリ!』、そしてこの『虞美人』を通じて、壮さんは大きく成長させていただいたのだなと思います(おかしな立ち位置で申し訳ない(笑))。なぜか、トップになってからはご縁がなかったけれど、いつかまた、どこかの舞台でと願っています。

 『若き日の唄は忘れじ』からは「恋の笹舟」。さあやちゃんとのデュエットです。ふくの手を文四郎さんが取るところで、もう涙が…。という、いーいところで、『心中・恋の大和路』の「この世にただひとつ」を一花ちゃんと。最高の組み合わせです。

 そして、再びソロで、『一夢庵風流記 前田慶次』から「散らば花のごとく」を。衣装もメイクもない、いまの壮さんが歌う「散らば花のごとく」は、とても繊細に感じました。壮さんが歌っているのは変わらないんだけれど、慶次になった壮さんではなく、慶次だった壮さんが歌っているのだから当然なのだけれど、そうやって着替えるところを見せてもらったような、不思議な感覚がありました。
 時間を置いて、タカラヅカの舞台から離れたところで聴くこの曲は、繊細さと豪放さが存在していて、まさに壮一帆だなあと思います。

 うれしいのは、この曲が決して別れの曲ではなかったことです。せつないけれど希望に満ちていて、こうして、いまの気持ちにもぴったりとリンクしている。こんな作品に出会えてしあわせです。ファン冥利に尽きます。このかぶきまくった作品と大野先生にもお礼を言いたい気持ちになりました。

 と、卒業式の父兄みたいな気分になっていると、さあやちゃんと一花ちゃんが、すかさず笑わせてくれる。実に場を心得たおもてなし(笑)。

 ここで、中国・日本コーナーが終わり、タカラヅカ・メドレーの後半に入るということで、給水&お着替えタイム。羽織っていた着物から、紫色の変わり燕尾へとチェンジ。「なかなか見られない貴重なお着替え(笑)」を見せていただきました。

 この紫色の衣装は、壮さんのサヨナラ公演だった『My Dream TAKARAZUKA!!』のデュエットダンスで着ていた衣装。「あゆっちと二人でくるくる回ってましたね」と、くるりと回ってくれました。裾がひらーんとしてきれい。

 日本物の作品とご縁があって、たくさん演らせていただいたけれど、これからも日本物が続いてほしいし、雪組だけじゃなくて、ほかの組でも上演してほしいと、静かに話していました。

 紫の衣装で歌ったのは、『ベルサイユのばら』の歌。「心の白薔薇」と「愛に帰れ」です。壮さんの「ベルばら」ナンバーはどれも好きです。歌のなりたちと、声質や歌い方がよく合っているんだと思う。シンプルで伸びやか。

 朝海さんがオスカルを演じた東京宝塚劇場での『ベルばら』が、わたしが壮さんの舞台を観た最初でした。だから、アンドレがいっぱいなプロローグも大好きだけど、やっぱり、雪組時代の全国ツアーでのアンドレ役を思い出します。あれは特別中の特別。壮さんのアンドレは、自分のなかでは「事件」ともいえる出来事でした。

 「愛に帰れ」も、大好きです。なんといっても壮さんのフェルゼンのために作ってもらった曲ですし。壮さんの声質によく合って、本当に気持ちいい。それにこの曲は確か、この日指揮とピアノ演奏をしてくださった吉田優子先生の曲でしたよね。ディナーショー「Bright」のときと同じ、背中が大きく開いたドレス。そこを突っ込むことを忘れないカズホさん(笑)。

 ここでまたまたお着替えタイム。今度は袖に引っ込むと、一花ちゃんとさあやちゃんのWカルロッタで「すべては私のもの」。たーのしいー。歌い方といい、なんとチャーミングなのだと思っていると、間奏の短い合間に、女装した壮さんが舞台中央に顔見せ。女装といっても、金髪のカツラをちょこんとあたまに乗せて、手でドレスを当てているだけ。時間ないのに。こういうこともやってみたかったんですね(笑)。

 またまた二人で、壮さんがとても凶暴なのだという話で盛り上がる(笑)。二人とも言いたい放題(笑)。だが、それがいい! さあやちゃんがポツッと言った、「皆さん、自分の体はご自分でお守りください』みたいな注意アナウンスがツボってしまいました。

 猛獣取り扱い注意報(笑)。

 思い出すのは、全国ツアーの『エンター・ザ・レビュー』の猛獣使いの場面や(一花ちゃんのかわいくってセクシーな猛獣)、中日劇場『ラブ・シンフォニー』の「Now on Satge」です。「かわいくないお花は摘みとるよ!」という暴言までが飛び出しました。そういう場面に、いつも立ち会ってきた二人ですから、丁々発止のやりとりにも納得です。みんなほかのお仕事だったあるだろうから、あまり言ってはいけないけど、ぜひこのメンバーで、第2弾、第3弾もと期待してしまいます。

 その後は一花ちゃんが「悪いひと」を。かわいいいい。一花ちゃんには、いい舞台をたくさん観てもらいましたが、一花ちゃんでいちばん好きなのが、この場面です。小さいセシリィ。

 ほんと、悪い人だわ、壮さん…。

 と、壮さんへの思いと『アーネスト・イン・ラブ』を混ぜこぜにしているうちに、この場面は終わり、次に出てきたのは、かわいいいとしい、えりぎつね? ギヨメぎつね? 『星の王子さま』のきつねの壮さんが客席に現れていたのでした。

 わああ。ディナーショーで壮さんのきつねに会えるなんて。素敵すぎる。ちょっとは期待してたけど(笑)。

 トークショーのときだったかな、壮さんが断舎利中で、役を演じるための資料を処分していると言ったのだけど、あれがすごく悲しかった。『項羽と劉邦』も、『オグリ!』も、『星の王子さま』も捨てちゃうのかあと思って。でも、『星の王子さま』だけは、残しておいてもらえたらいいなと思っています。本当にすてきな言葉がたくさん詰まっているから。

 「♪ 焦らないで 時間をかけるんだ 辛抱が大事だよ」

 心で見なくちゃ、物事はよく見えない。肝心なことは目には見えない。

 うん。サンテグジュペリの言葉がこんなに生きたものとしてじぶんのなかに入ってきたのは、壮さんのおかげです。壮一帆という役者を通して、生きたことばとして出合ったのです。

 かわいいなあ、この役に出合ってよかった。

 曲はそして、「風のささやき」から「ノクターン~群衆」へ。

 どちらも大好きだった。そしてどちらも、退団後に聴くと、とびっきり胸に沁みる(笑)。

 それはわかっていたのです(笑)。退団後に聴いたら、この曲はきっとせつなくなる。その未来を思ってせつなさを先に味わっていたから、さらにさらに好きになったのだもの。

 その未来がいま。そして、その未来はずっとある。

 これからもこの曲をずっと聴いてゆけるのだと思うと、ほんとうにしあわせだ。歌い続けてほしい、壮さんのショーの名曲です。

 みりおんとデュエットした、大好きな大好きな船上のダンスは、さあやちゃんと。この場面のいっちばんのサビの部分、大好きだった。

 恐れを感じながら、吸い寄せられるようにぴたりと寄り添っていって、踊るの。

 くるくるくるくる。

 心が寄り添っているのがわかる。きれい。永遠に回っていたらいいのに。

 それから帽子もあったらよかったのに。壮さんのあの帽子投げの技、すごかった!

(え? そこ?(笑))

to be continued...
 5月10日は、「母の日」でした。
 そして朝は、壮さんのラジオ「ちょっといい話」。

 壮さんの声がラジオから聞こえてくるとそれだけでドキドキします。ラジオからといってもRADIKOさんですが。

 たぶん、映像はなくて音だけでだから、電話みたいで親密な感じがするのかな。遠くて遠くて、ちょっと新しい、みたいな? なんとももどかしい感じがあって(それはラジオだからじゃない(笑))、それがドキドキするのかな。

 収録したのは第一回放送のときだと思うから、内容も難しかったんじゃないかと思いますが、陶芸の話が楽しかった。

 ろくろを回したり、一から土を作ってみたり。手から伝わってくる土の冷たさや、土と対話している感じが新鮮だったみたい。

 壮さん。本当に、いま(収録時)は自分自身と向き合っているんですね。

 しかし、土を作るところから始めますか! そうですか。それは時間がかかる!(笑)

 いやいや、陶芸の話ですよね、これ。自分自身の心のなかの旅の話とか、そういう話ではないですよね。つい、なんでも、これからのことを「読もう」としてしまうのがわたしの悪いクセ…。

 退団してからの九月は「ぬけがら状態」だったという話は、何度聞いても胸に軽く刺さります。

 宝塚歌劇団在団中の壮さんは、「男役の型」を追求するタイプではなく、とっても自然に演じていたようにわたしには見えていました。だから、退団してからも自然にフェミニンな壮一帆さんになるんじゃないかと想像していたのですが、それは素人考えなのかもしれないと、最近ちょっと思っています。

 「型」ではなくて、タカラヅカの世界のなかの男性になりきって演じていたのだとしたら…。それが多感な十代の頃から19年間もの間、日常的に続いていたわけでしょう…。

 好きな表現ではないけど、よくいわれる「男役から女性に戻る」という言い方も、相当的外れな気もしてきます。

 だって、そもそも、女性というより少女だしなあ。人にもよるだろうけど、「戻る」といえるほど一般的な女性らしい生活もしてはいないわけだから…。

 私なんかが想像するより遙かに困難で、途方に暮れてしまったりするものなんだろうなあ。特に壮さんは、本能的な演じるというより、思考を重ねて役に取り組んできたのだと思うから。

 いろいろややこしいことを考えちゃったりしているのかもしれません(笑)。

 いや、わからないけど…。「一年間スカートはかない宣言」をしたということは、自分にとってスカートとは何か、スカートをどうやったらきれいに自然に着用できるかを考察したってことでしょ?
 そんな面倒なこと考えなくてもいいのにと思う。でも、そんなことを考えていてもおかしくないような、そんな面倒なところも好きだし(笑)、そんなところもソウカズホな気がします。スカートをはくまでのことだけで、一冊の本の30ページくらい使っちゃうような。

(は。ごめんなさい! 面倒なのはわたしだった(笑))

 こんなことを書いていると、まるでそうさんがラジオでうじうじしていたみたいだけど、もちろんぜーんぜんそんなことはありませんのでご安心を。

 「ちょっといい話」では、これからの自分の指針についてもちゃーんと語ってくれていました。

 まとめると、引き続き「カミング・スーン」ってことなんだけど、今まで自分が築いたものはなくなってしまったわけではなくて、そこにこれからはプラスしていくんだという話は、力強く響きました。

 うんうんうん。それがわかってくれてればいいの。自分探しってヤツも引き続き、したらいい。自分探しというか、自分の道探しなのかな? 
 どうも「自分探し」という表現は好きじゃない。だって、ぬけがらになっていただけで、自分はなくしてはいないでしょ?

 新しい壮一帆という器にどんなものをいれて見せてくれるのかを楽しみにしています。

 ま、すでに何か決まっていて、情報が解禁にならないから発表できないという可能性だってあるだろうし。何が来るかはわからないけど、楽しみに待っています。

      *      *      *      

 さて、そんなラジオ放送のあった今日は、柚希礼音さんの退団の日でもありました。

 わたしはきのう、前楽の舞台を見せていただきました。ダイスケ・ショーと、引き続いてのサヨナラショーの舞台には、星がいっぱいに散りばめられていて、ユズキさんは星組のスターとしてこの地に来て、この舞台を去って行くんだなあと、感慨深かったです。本当に星組っぽい舞台だった。わたしの知っている星組っぽかった。
 
 そしてやっぱり、8月31日のことを思わないではいられなかった。

 あの夏。壮さんのサヨナラ公演が、芝居もショーも雪と花で散りばめられていたことを、きゅうんとなりながら憶い出しました。あれは本当に大盤振る舞いだった。きれいだった。

(ディナーショーの続きも書かなくちゃ。「麗人」のことも。いや、それ以前にまだまだたくさん書かなくちゃいけないことが…)