前回の続き
DVサバイバー Kさんのストーリー①


精神的限界に達して
派遣会社の契約が切れ、しばらくしてKさんは仕事をやめて専業主婦になりました。
専業主婦としての生活が始まってからは、Kさんの肉体的疲労は軽減しましたが、精神的疲労はさらに増えていきました。

ある時夫が怒り狂い、壁を殴って大きな穴を空けたことがありました。その時Kさんは言葉にできないほどの恐怖を味わったと言います。
後日家に母親が遊びに来た際、母親がその穴を見つけたためKさんは一部始終を母親に説明しました。
そのことを後で夫に伝えると、夫は「よそに自分たちの話をするな!」とすごい剣幕で怒り出しました。
その夫の怒りぶりを見たKさんはまた、何をされるかわからない恐怖を感じ、それ以降自分たちの話を身内や友達にすることはなくなったそうです。
また夫はKさんが自分から離れていくことが怖かったのか、度々「俺を裏切ったり他に男作って家を出ていったら殺すからな!!!」とKさんを脅しました。時にはナイフをKさんの首に当てて脅したそうです。
かなり危険な男性です。


仕事をやめ、経済的に夫に頼らざるを得ない肩身の狭い立場の中で、「養ってやっている」と言わんばかりの横柄な夫の態度。
さらに友達や親に夫のことを話すこともできなくなり、Kさんはストレスを発散する場所すらもなくしました。
何をしているのかも毎回夫に報告しないと怒られます。
ストレスのせいで出会ってから11年でKさんの体重は20キロ近く増えました。
性的なことも、いくらKさんが嫌がっても夫はお構いなく強制的に求めてきたそうです。Kさんに選択肢はありませんでした。
Kさんは一時期社会復帰も考えましたが、仕事と家事(夫の子守)の両立は無理だと感じ、ひたすら夫のDV、モラハラに耐える日々が続きました。
子供ができれば夫は変わるかもしれないと、Kさんは一時期不妊治療を始めましたが、夫はこれにも非協力的でKさんのストレスは募るばかりでした。

煙草など夫が必要な物を切らすと怒られるため、Kさんはストックをいつもそろえ、怒らせないように夫の機嫌をとっていました。
それはもはや「妻」ではなく「奴隷」そのもの。
Kさんは度重なる夫のモラハラ言動に、心は限界を超え壊れ始めました。常に無価値感や孤独感、強い不安を感じ、眠りが浅く不眠症になり、お酒なしでは眠れなくなっていたそうです。

「助けて!」

そんなKさんの心のSOSがついに天に届いたのか、救いの手が差し伸べられました。




ライフコンサルタントとの出会い
ある日義姉から連絡を受けたKさん。
義姉とは頻繁に連絡を取り合う仲ではかったそうですが、夫(義姉の弟)の性格を知る義姉はKさんのことを気にかけ連絡してくれたのでした。
その時にKさんがつらい状況にあることを知った義姉は、Kさんにライフコンサルタントを紹介してくれました。
※ライフコンサルタントというのは、その名の通り人生相談の専門家。DV、離婚を始め、子育て問題や夫婦問題、いじめ、虐待、人生計画、トラブルなどありとあらゆる問題の相談にのり解決をはかるスペシャリストです。

義姉も実はDV夫との離婚の際にこのライフコンサルタントに助けを求め、奇跡的に自分に有利な状態で離婚成立、さらにVISAも取得することができたクライアントの一人でした。(義姉は国際結婚でハワイ在住。複雑な状況でした。)

夫婦としてやり直したいと思っていたKさんは、まず夫婦でのコンサルティングを希望し、嫌がる夫をよそめに二人でカウンセリングを受けました。もちろん義姉のサポートがあって実現しました。
その時にアドバイスなどいらないという横柄な態度で話す夫。
通訳を介してライフコンサルタントがKさんにした質問すらも、夫がKさんを差し置いて答える酷い状況だったそうです。
その後Kさんが一人でコンサルティングを受ける機会をもらい、Kさんの人生の輪が回り始めました。


DV夫からの脱出
Kさんはそのコンサルティングで初めて自分がDVを受けていることに気づいたそうです。
それまで洗脳状態で思考がクリアでなかったこと、そしてずっと自分が悪いからと責め続けていたために、どんなに被害を受けていても気づかなかったのです。
その事実を受け入れることはとてもショックで勇気のいることでした。当時Kさんは沢山泣いたそうです。
でも同時にKさん自身も納得する部分があったと言います。

Kさんは自分はこれからどうしたいのか、どうやったら今の状況から抜けられるのかを考え始めました。
ライフコンサルタントはKさんの置かれた状況を正確に把握し、Kさんに選択肢とアドバイスをくれたそうです。
こうして夫への大きな恐怖を抱えながらもKさんは家を出ることを決意し、決行しました。


別居
Kさんは実家にしばらく身を置くことにしました。
夫への罪悪感や実家に来るかもしれないという恐怖におびえるKさんでしたが、夫はKさんに連絡はしてくるものの、Kさんの実家にくることはありませんでした。
Kさんは母親にこれまであったことをすべて話しました。
同じ女性として母親は理解してくれるだろうとKさんは思っていましたが、母親から出た言葉は
「もう時間も経ったしいいんじゃない。もう家に帰ったら。」
でした。

後からわかったことですが、母親はKさんに隠れて夫に連絡をしていたようです。母親のことを信じていたKさんは大きくショックを受けました。母親はいったい誰の味方なのか、この時わからなくなったと語っておられます。母親は、娘が夫からDVを受けて実家に帰ってきたと近所に知られるのが嫌で、早くどうにかしたかったようです。
母親を信じられなくなったKさんは外出するとき以外部屋にこもるようになりました。精神的につらかったので精神科にも通い始め、PTSDの診断を受けました。

そんなKさんを家族は次第に邪魔扱いし始め、ある日の冬の寒い夜にKさんを無理矢理家から追い出しました。
実家以外に行き場のないKさんの行く場所は一つしかありません。
夫の家です。
家族がそんなことをするなんて、正気ではないですよね。

絶体絶命のピンチの中で、Kさんはライフコンサルタントからあるドクターを紹介され、そのまま東京に向かいました。
しばらくそのドクターの家に居候し、その後は東京でルームメイトを探しルームシェアで生活を始めました。
家族からの裏切りにショックを受け夫への恐怖におびえる毎日ではありましたが、環境が一転したことでKさんは自由を感じることができたそうです。

そんな生活に慣れてきた頃、再び事件が起こります。