人によっては仕事は入社から一筋三十年なんて方もいると思う。

その地道な努力は称賛に価する。

自分は同世代と比較すると転職が多い方だと思っている。

ただ、倒産寸前の早期退社や在籍中の倒産、契約期間満了による退職、

体調を崩してしまった為の退職など、自分勝手な自己都合退職はない。

販売業から工場勤務まで割と幅広い職種を経験しているが

今頃になって痛感した事がある。

仕事は、賃金(給料)、休日、通勤距離などを重要視して選びがちであるが

実際には、職場の環境(人間関係)と仕事内容が自分に合っているかが

最も重要であると。

約二年前、父親が亡くなった事がきっかけで金銭的な余裕が欲しいなと

考えて十年以上勤めていた販売業を辞めて運送業(配達)に転職した。

土日祭日を休んで残業をしなくても給料が前職を上回る見込みだったからだ。

通勤も自転車。

入社前は自分の希望どうりで申し分なかった。

ところが、平成から民営化された企業だからか、一言で言ってしまえば

「古い体質」みたいなものがどこか残っていて、研修センターでの

研修もあったし定期的な班長ミーティングみたいなものもあったけれど

皆が手一杯なので実際の職務に対する不安を相談出来る時間などなかったし

「分からなかったら聞いて」は文字通り言葉だけのものだった。

失敗をすれば「なんで聞かないのか」と叱責され、聞けば「前に教えたのに

なぜメモしないのか」と言われてしまうからとても聞ける雰囲気ではない。

配達業務自体は特に嫌な訳ではなかったけれど、職場には最後まで馴染めずに

1年あまりで会社を去る事になった。

絶対にやってはいけない事だけど、たまにニュースで流れる配達物を

配らずに捨ててしまったり隠したりする行為がなぜ起こるのかが少し

分かった気がした。

相談出来る人がいない、もしくは気軽に相談出来る環境ではないからだ。

まぁ、会社関係者は猛烈に反論するだろうけど。

いい歳だし再就職も難しいかなとは思ったけど、3年我慢するとかしないで

早目に決断したのは今思うと本当に良かった。

今は、古巣と言うか前々職と同じ販売業の会社に採用されて働いている。

嫌な事もあるけれど業務に対して「ありがとう」と感謝されるのが嬉しい。

給料は下がった。

休みも基本平日。

通勤時間も前職よりは遠くて車通勤。

でも、辞めて良かったと思っている。

環境が雲泥の差だからだ。

この歳になってこんな基本的な事を学ぶとは思わなかった。