27日、国立新美術館の主催で250名限定の特別講演会

「ポルトリガトでダリとガラに会った 横尾忠則さんに聞く」

に参加して来ました。

午後2時開演だったので用事を済ませてから午後1時40分頃に受付へ。

全席自由席だったので前5列くらいはすでに埋まっていて

8列目くらいの右側の席をキープして開演を待ちました。

私の真横と後方にはテレビカメラが入っていて収録していました。

定刻を少し過ぎると司会進行役の館長の短い挨拶の後に

横尾忠則氏登場。

前半は、ダリとガラに会った話が中心。

1975年頃、横尾氏はインドからワルシャワへ移動していて

ある時、政府の関連機関よりスペインへ行ってその体験を小説か

作品に残して欲しいと言う依頼があって受けたのだそうです。

当初は、ミロに会いたいと考えていたが島に在住しているとの事で

スケジュール的に難しいと断念して「じゃあ、ダリでいいや」と

予定を変更したとの事(笑)。

ダリを展示している美術館へ問い合わせをすると「なんで日本人なんかに

紹介しなくちゃいけないんだ」と叱られたと言っていました。

仕方なく出来たばかりのダリ美術館へ行き入り口付近にいたオバチャンと

話していると、たまたまその人が館長でその場でダリの自宅へコンタクトを

取ってくれて「午後1時からならOK」との約束を取り付けたので

急遽自宅へ直行。

時間通りに到着してボートの管理人らしき人に尋ねると

「今はシエスタ(昼寝)中だから一時間後に来てくれ」と言われたので

近くのホテルで時間をつぶしてから再度訪問。

「今、シャワーを浴びているところだから一時間後に来てくれ」

三度目。

「今、作品の制作中だから一時間後に来てくれ」

四度目。

「ガラ(奥さん)が会いたいと言っている」と言う事で

ガラに会うために敷地内へ。

案内されて自宅の中を通り抜けプール付きの庭にあったクッション

(横尾氏はマットみたいなものと言っていた)に座って待っていると

同じく訪問者らしい外国人の青年がやってきた。

しばらくすると、ガラが現れて「あなた、お土産は持って来たの?」と

尋ねられたので持っていないと答えると

「あら、そう。彼(青年)も持ってこなかったけれど

美しさ(イケメン)は持って来たわ」と言われる。

そんなやり取りをしているとダリが現れ

「君は私の作品が好きか?」と問われたので

(本当はあまり好きではなかったのだが)「好きです」と

答えると一時的に機嫌は良くなるのだが

急にステッキを額に押し当てて「君は私の作品を知っているが

私は君の作品を知らない」などとまくし立てられた。

しばらくすると沈黙。

ガラと青年が親密そうに話していても見て見ぬふりだったそうです。

何とも言えない空気が嫌で帰ろうとすると

目の前にワインを出されて飲めと言われる。

やはり、世界的に有名になり過ぎて何か試してみないと

容易には人を信用出来なかったのではないかと思いました。

ダリの自宅には三時間半ほど滞在したらしいのですが

横尾氏の人生の中でもこんなに不思議な体験は他になかったと

言っていました。

後半は、横尾氏によるダリの作品の解説。

20代から自己のタッチを確立させていった天才ゆえに

「早くに自分のスタイルを見つけてしまった事は逆に

不幸だったかもしれない」。

常に同じ作風を求められる訳ですからね。

横尾氏は晩年の作品が好き(と言うか興味がある)との事で

時間を割いていましたが

「全然、力強さを感じない」

「マグリットなどの構図を真似している」

「余白に雲なのかよく分からない抽象的な模様を

書き始めた」

「書かなくてもいい(作品として残さなくてもいい)ものまで

書いている。書かねばいられなかったのではないか」など

辛辣な言葉を並べていましたが、それが芸術家の引き際の

難しさなのかなと感じました。

最後は、横尾氏自身の作品について。

あまり好きではないと言いながらもダリを描いた作品もありました。

スペインへ行くきっかけとなった小説は2010年に出版されたそうです。

規格外のマイペースぶり(笑)。

一時間半ほどの短い時間でしたが、世界的なアーティストの生の声を

聞ける機会などそうそうあるものではないので有意義に過ごす事が出来ました。

講演会終了後はダリ展を鑑賞。

今回の展覧会はダリの生涯を検証する様な内容だったので

一見ダリとは分からない油絵やデザインを担当したブローチやメダル、

ヒッチコックの映画(白い恐怖)のセットの一部や

ディズニーのファンタジアの原案(当時は未発表)まで

手掛けていたとはちょっとした驚きでした。

個人的には、シュルレアリスムの全盛期(有名な溶けた時計を

モチーフにした作品など)が好みなのですが、それ以外の時期の作品も

横尾氏のおかげで興味深く見る事が出来ました。

ダリ展は12月12日まで国立新美術館で開催中です。

芸術の秋を堪能してみてはいかがでしょう?