このページは高校生の古典の学習を意図してつくったものです。
古典文法公式14:助動詞:なり
A・基本知識:覚えるべきポイント
1:「なり」には断定と伝聞推定の二種類の「なり」がある。
2:体言もしくは連体形に接続していれば断定の助動詞。断定は「~である」と断定することだが、他に存在・所在の意味があり、この場合には多く場所を表すことばの下について「~にある」と意味を取る。
3:終止形(ラ変には連体形)に接続していれば伝聞・推定の助動詞である。人づてに聞くのが伝聞、推定は「音あり」が語源だと言われ、音に関する推定が中心である。撥音便に続いて「なり」があれば伝聞か推定である。
4:ちなみに断定の「なり」の語源は「に・あり」であり、「に」の識別問題では「に」の下に「あり」の存在を確認し、その部分が「である」と解釈できるか否かを判断する。「なり」の識別問題では、二つの「なり」は基本的には接続で区別する。「男もす(A)なる日記といふものを、女もしてみむとてする(B)なり」では、(A)はサ変の終止形に接続しているため伝聞(推定とは文脈判断)、(B)は同じサ変の連体形に接続しているため断定の助動詞と識別できる。終止形・連体形が同形の場合は文脈判断。詳細は次の識別問題リンクへ。
■→接続と活用:上にも書いたが、断定は体言・連体形に接続、伝聞推定は終止形(ラ変には連体形)に接続。活用は断定が形容動詞型(なら・なり‐に・なり・なる・なれ・なれ)、伝聞推定はラ変型(ら・り・り・る・れ・れ)である。
■→識別問題へのリンク→「なり」の識別
B・基本問題:意味・活用形・口語訳を確認!
ア:駿河なる宇津の山べのうつつにも夢にも人にあはぬなりけり
イ:世の中に物語といふもののあんなるを、いかで見ばやと思ひつつ、
ウ:おのが身はこの国の人にもあらず。月の都の人なり。
エ:秋の野に人待つ虫の声すなり。
解答
ア・存在・連体:断定・連用
・駿河にある宇津の山辺のうつではないが、うつつ(現実)でも夢でもあなたにあえないことです
イ・伝聞・連体
・世の中に物語というものがあるそうなのを、どうにかして見たいと思い続けて、
ウ・断定・連用:断定・終止
・私はこの国の人ではない。月の都のひとである。
エ・推定・終止
・秋の野に人を待つという名の松虫の声がするようだ。
C・入試問題
■ 次の文中の傍線部A~Dは、それぞれ次のどれに該当するか。
その十三日の夜、月いみじくくまなくあかきに、みな人も寝たる夜中ばかりに縁に出でゐて、姉(A)なる人、空をつくづくとながめて「ただ今ゆくへなく飛びうせなばいかが思ふべき」と問ふに、なまおそろしと思へるけしきを見て異事に言ひなして笑ひなどして聞けば、かたはら(B)なる所にさきおふ車とまりて「をぎの葉、をぎの葉」と呼ばすれど答へざ(C)なり。呼びわづらひて、笛をいとをかしく吹きすまして過ぎぬ(D)なり。
選択肢
① 動詞
② 形容動詞の語尾
③ 断定の助動詞
④ 存在の助動詞
⑤ 伝聞の助動詞
⑥ 推定の助動詞
解答
A=③・B=②・C=⑥・D=⑥