このページは高校生の古典の学習を意図して作ったものです。
古典文法公式15:格助詞:の・が
A・基本知識:覚えるべきポイント
1:①格助詞の「の」の用法として、主格・連体修飾格・同格・体言の代用・比喩がある。
2:このうち主格、例えば「月の澄む夜」と連体修飾格、例えば「僧の衣」は、まず誰でも取り損ねることはない。他の三つを押さえることが大切。
3:同格は用法は最も注意が必要。入試問題にも頻繁に出題される。
A:基本的な形は【・・名詞+の+・・連体形・・】
B:連体形の下には上で出てきた名詞を補うことができる。
この二点をきちんと押えたい。例えば「白き鳥の脚赤きが魚を食ふ」ならば、「足赤き」の下に「鳥」という名詞を補える。「白き鳥」と「足赤き鳥」は「魚を食ふ」という述部に対して同格であるため、二つの間に挟まれた「の」を同格の「の」と言い、述部に対して同格であるため二つを並立させ「で」と訳す。
4:体言の代用の「の」は、その名のごとく名詞の代わりをする。現代語でも「これ誰の鉛筆?」と問われたとき「僕のだよ」と答える「の」である。この「の」が「鉛筆」という体言の代用をしていることは明らかだ。現代語にもある用法なのでこれも多分大丈夫。ただ、体言の代用は別に準体法とも言い、連体形自体が体言の代用をする場合、例えば「中納言、言ひたるは」であれば「中納言が言ったこと(の)は」と、名詞や体言の代用の「の」を補って訳すことは解釈の問題では大切だ。
5:比喩の「の」は「~ような」と訳す。散文においては「例の集まりぬ:いつものように」「玉の男皇子:玉のような」など限定された用法だが、和歌で、例えば「瀬をはやみ岩のせかるる滝川のわれても末にあはむとぞ思ふ:滝川のように、今お別れしても」のように序詞の切れ目として使われる用法には注意が必要である。
6:「が」は、比喩以外の「の」と同じ用法と考えておけば、概ねよい。ただ、例えば「いとやむごとなき際にはあらぬが、すぐれて時めき給ふありけり」の「が」を接続助詞と考えがちだが、逆接の接続助詞の用法は中古末以降からのものであり、これは同格。中古の文章における「が」は基本的に格助詞である。
B・基本問題:用法・口語訳を確認!
ア:さては、扇のにはあらで、海月のななり。
イ:手のわろき人の、はばからず文書き散らすは、よし。
ウ:日の入り際のいとすごく霧わたりたるに、
エ:あしびきの山鳥の尾のしだり尾の長々し夜をひとりかも寝む
解答
ア・体言の代用
・それでは扇の(骨)ではなくて、海月の(骨)であるようだ。
イ・両方とも主格
・筆跡がよくない人が遠慮なく手紙を書き散らすのはよい。
ウ・同格
・日の入り際で、たいそう物寂しく霧が一面に立ちこめているときに
エ・連体修飾格:比喩
・山鳥の尾の垂れた尾のように長い長い秋の夜を私は一人寂しく寝るのだろうか
C・入試問題
■1:次の「の」とは異なる用法の例を選択肢から一つ選べ。
みめのうつくしき女房の、もの思ひたるが、ものをも言はでゐたるに
選択肢
① 女のこれはしもと難つくまじきは、難くもあるかな
② 行きて見ぬ境の外のことをも知るは、ただこの道ならし
③ 早くよりわらは友だちにはべりける人の年ごろ経て行きあひたる、ほのかにて
④ 白き鳥の嘴と脚と赤き、川のほとりにあそびけり
⑤ 里にはべりしをり、花のいとおもしろきを式部卿にたてまつるとて
⑥ 東宮の御息所の箱合せのころ、紅梅のつぼみたるを入れて
■2:次の文章を読んで後の問に答えよ。
ふもとに宿りたるに、(A)月もなく、暗き夜の、やみにまどふやうなるに、遊女三人、いづくよりともなくいできたり。五十ばかりなる一人、二十ばかりなる、十四五なるとあり。庵の前に、からかさをささせてすゑたり。をのこども、火をともして見れば、昔、こはたといひけむ(B)が孫といふ。(共通一次)
問一:Aの現代語訳としてどれが最も適当か。一つを選べ。
① 月の出ない暗い晩だったので、闇の中で混乱してしまいそうな気持でいたところが、
② 空には月もなく暗い晩で、何が何だかわからないほどの真暗闇であるところへ
③ 空には月もなくて、暗い夜の闇の中からあたかも迷い出てきたかのように
④ 空に月もない暗い晩であって、道に迷ってしまいそうであったが、
問二:Bの文法的説明として最も適当と思われるものを選びなさい。
① 連体格の格助詞
② 主格の格助詞
③ 接続助詞
解答
1=②・2:問一=②・問二=①