このページは高校生の古典の学習を意図してつくったものです。

古典文法公式27−33:係助詞・係り結び

以下の説明に書いてあるようなことを動画で喋ってみました。

もしよろしければお聴きください。

ボソボソまったり喋っているので音量と速さを調整して下さい。

 

 

■公式27:係り結びの基本

A 基本知識:覚えるべきポイント

 

1:係り結びとは文中に係助詞を挿入し、文末を特定の活用形で結ぶことで文に強意・疑問・反語の意味を与える法則である。

 

2:ぞ・なむ・や・か」が文中に挿入されると連体形で結ばれ、「こそ」が挿入されると已然形で結ばれる。
ぞ・なむ・こそ」では強意、「や・か」では疑問・反語の意味が加えられるが、これを三つのタイプに整理して覚えるとよい。
A「ぞ・なむ」-連体形:強意
B「こそ」-已然形:強意
C「や・か」-連体形:疑問・反語

 

3:ABについては書き手の強調の意図を汲むことは大切であるが、強意は読解上、例えば初見の文章で文脈をつかみたいときには読み流すことも可能である。ただBの已然形については、已然形自体が文章中に出てくる頻度が少ないため違和感を感じてしまう場合がある。このときには係り結びを外す(係助詞を外して文末を終止形に直す)とよいと言われる。例えば「今こそ別れ」であれば、ここから係結びを外せば「今別れむ」となる。そうすると「さあお別れしましょう」という意味が明らかになる。

 

4:これらに対して「や・か―連体形」の形は文章を読解する上で非常に重要である。疑問・反語は屈折した表現であり、解釈上のポイントになることが多いので、絶対に押え、疑問反語を文脈で読み分けて解釈することが必要となる。

 

■→識別問題リンク「なむ」の識別

 


B 基本問題:( )の語の変形・用法・口語訳を確認!

 

:かかることなむあり(き)。
:世は定めなきこそ(いみじ)
:蓑笠や(あり)、貸し給へ。
:春の夜の闇はあやなし梅の花色こそ見え(ず)香やは(隠る)

 

解答
:し・強意
・このようなことがあった
:いみじけれ・強意
・世の中は定めのないこと(無常)が素晴らしい。
:ある・疑問
・蓑笠があるか。貸しなされ。
:ね・強意(逆接)=隠るる・反語
・春の夜の闇は筋の通らないことをする物ものだ。暗闇の中の梅の花は、色は見えないけれど香りは隠れようがあるだろうか。いや隠れようもない。

 

 

C 入試問題

 

■( )に終止形で示した語を文中にふさわしい形で記せ。
つくづくと思ひ続くることは、なほいかで心として死にもしにしがなと思ふよりほかのこともなきを、ただこの一人ある人を思ふにぞ、いと(A:かなし)。人となしてうしろやすからむ妻などに預けてこそ、死にも心やすからむとは思ひ(B:き)。いかなる心地して、さすらへむずらむと思ふに、なほいと死にがたし。「いかがはせむ、かたちを変へて、 世を思ひ離るやと、こころみむ」と語らへば、まだ深くもあらぬなれど、いみじうさくりもよよと泣きて、「さなりたまはば、まろも法師になりてこそあら(C:む)、なにせむにかは、世にもまじらはむ」とて、いみじくよよと泣く。

 

解答:A=悲しき・B=しか・C=め

 

■公式28:係助詞文末用法

A・基本知識:覚えるべきポイント

 

係助詞「ぞ・や・か」は係り結びを作らず単独で文末に用いられる場合があり、これを文末用法と言う。文末に置かれているだけで用法は変わらない。「その母も吾を待つらむ」の「ぞ」は強意であり、「お子はおはす」の「や」は疑問である。あまり意識しなくても恐らく文脈の中で自然と理解できる。

 

B 基本問題:口語訳を確認!


その時悔ゆともかひあらむ


解答
その時悔いたとしても、甲斐があるだろうか、いやありはしない。


■公式29:にや・にか:やは・かは

A・基本知識:覚えるべきポイント

 

1:係り結びの「や・か」の用法は、疑問・反語であり、そのどちらを取るかは基本的に文脈判断

 

2:しかし、例えば「何事にかあらん」などのように断定の助動詞「に」と結びつき「にや・にか(あらむ)」の表現を取る場合には疑問である。ただし、「夜半にや君がひとり越ゆらむ」のような場合、(ここでは「や‐らむ」で疑問だが)「に」は格助詞であるので注意したい。

 

3:また、例えば「命は人を待つものかは」などのように、係助詞の「は」と結びつき「やは・かは」の表現を取る場合には基本的に反語である。これは、読解上、非常に強い味方となるのでぜひ覚えたい。勿論100%ではない。

 


B・基本問題:次の係助詞の用法を答え、口語訳しなさい!

 

:月は隈なきをのみ見るものかは。
:心といふものなきにやあらむ。
:たれかは物語求め見する人のあらむ。

 

解答
・反語
・月はかげりのない状態(満月)だけを見るものだろうか。いやそうではない。
・疑問
・心というものがない(から)であろうか。
・反語
・誰が物語を求めて見せてくれるだろうか。いや誰もそんなことはしてくれない。

 

 

C・参考問題

 

■ 口語訳しなさい。
いつくしみ深き 友なるイエスは
罪とが憂いを とり去りたもう
こころの嘆きを 包まず述べて
などかは下ろさぬ 負へる重荷を

 

解答
どうして背負っている心の重荷を下ろさないのですか。いやおろしましょう。

 

■公式30:結びの省略

A・基本知識:覚えるべきポイント

 

1:係り結びにおいて、その結びの語が省略されることが頻繁にある。例えば、「そののちにや、良秀がよじり不動とて」であれば、「や」のあとに「あらむ」が省略されている。また「かかる徳もありけるにこそ」であれば、「こそ」のあとに「あらめ」が省略されている。

 

2:結びの補い方の基本は二つあり、一つは格助詞の引用の「と」についたとき、例えば「とぞ・となむ・とや・とか」などの後には、「言ふ・思ふ・聞く」など、引用の「と」を受ける語を補う

 

3:また、断定の助動詞につくケースでは、「にや・にか」であれば、基本的に「あらむ」、過去文脈であれば「ありけむ」を補い、「にこそ」であれば「あれ・あらめ」のどちらかを推量のニュアンスの有無を考えて補う。「あり」は断定の助動詞の語源である「に・あり」の「あり:補助動詞」であり、その欠落を補うことになる。「侍り・候ふ・おはす」などの敬語の補助動詞が補われることもあるので注意が必要である。逆に、「に」の識別問題では、下に「あり」の存在を探すことが大事な識別方法になる。

 


B 基本問題(用法・口語訳を確認)

 

:いかなることのあるにか
:たびたび強盗にあひたるゆゑに、この名をつけけるとぞ
:いづれの御時にか。女御、更衣あまたさぶらひ給ひける中に、
:かかる徳もありけるにこそ

 

解答
:あらむ
・どのようなことがあるのだろうか
:言ふ
・たびたび強盗にあったために、この名をつけたのだと言う。
:ありけむ
・どの天皇の御代のことであっただろうか。女御や更衣がたくさんお仕え申し上げていた中に
:あらめ
・このような徳もあったのだろう

 

■公式31:結びの流れ

A・基本知識:覚えるべきポイント

 

■係り結びにおいて、結ぶべき語が省略されている場合は結びの省略と言うが、結ぶべき語はあるのに、その語で文が結ばれず(終止せず)、下に続く場合、これを結びの流れと呼ぶ。例えば「いつぞや縄を引かれたりしかば」では、本来は「しか」が「し」という形を取って終止すべきであるが、接続助詞「ば」につながり、下に続いていく形になっている。これが結びの流れである。ただ、文法問題にならない限り、解釈は自然と成立するので、解釈上は大きな問題ではない。

 

B 基本問題:次の係助詞に対する結びの語を本来の結びの形に改め、口語訳!

 

知恵と心とこそ、よにすぐれたる誉も遺さまほしきを、


解答
・まほしけれ
・知恵と心に関して、この世で優れた名誉も遺したいが、

 

 

C・入試問題

 

■ 123の係助詞の結びについて考え、説明文の空欄を補え。
それを見て(1)なむ、親ども、また男あはせむの心もなくて、やみけり。昔の女の心は、今様の女の心には似ざりけるに(2)や。つばくらめ男ふたりせずといふこと、文集の文なりと(3)ぞ
選択肢
:「なむ」の本来の結びは「ア」の部分で、それが係り結びの法則に従って、「イ」という形をとらなかったのは、文がそこで終止しないで、接続助詞にみちびかれてあとへ続いていったためである。
:「や」の方は、上の「に」が(ウ)の助動詞の連用形であるので、このあとに「エ」などの表現を補って解すればよい。
:「ぞ」も同様で、あとに「オ」の意を補って解する。1の場合は結びが(カ)た例であり、23の場合は(キ)された例である。

 

解答
ア=なく・イ=なき・ウ=断定・エ=あらむ・オ=言ふ・カ=流れ・キ=省略


■公式32:こそ‐已然形の逆接用法

A・基本知識:覚えるべきポイント

 

係り結びにおいて、「こそ‐已然形」が終止せずに下に続く場合、これを逆接で訳す。例えば、「品・かたちこそ生まれつきたら、心は・・」なら「身分や容貌は生まれつきのものであるが、心は」という意味になり、「八重葎しげれる宿のさびしきに人こそ見え秋は来にけり」では「人は訪れないが秋は来たことだ」と解釈する。和歌にもよく用いられるが、和歌では句点がつかないので、歌意を正しく読む必要がある。

 

 

B 基本問題:口語訳を確認!

 

:春の夜の闇はあやなし梅の花色こそ見え香やは隠るる
:心ばせなどの古びたる方こそあれ、いとうしろやすき後見ならむ。

 

解答
:春の夜の闇は筋の通らないことをする物ものだ。暗闇の中の梅の花は、色は見えないけれど香りは隠れようがあるだろうか。いや隠れようもない。
:気性は古風なところもあるが、大変安心できる後見人だろう。

 

 

C・入試問題

 

■ 解釈として最も適切なものを選べ。
殿のうしろのかたよりまゐらせたまひけるも、例のやうになどしてまゐらせたまふこそしるけれ、このごろは、たれも、をりあしければ、うちしめりならひておはしませば、いかでかはしるからん。

イ:いつものようにして参上なさるのであればはっきりわかるのであるが、
ロ:まるでふだん着のようにお着せするものを理解なさって
ハ:つね日ごろ変わらず参詣なさるお姿が印象深いので、
ニ:健康であるときと同じようにして召しあがるのだが、汁気が多くて、

 

解答=イ


■公式33: もぞ・もこそ

A・基本知識:覚えるべきポイント

 

■「もぞ・もこそ」は危惧の念を表し「~すると困る・~すると大変だ」と訳す。例えば「雨もぞ降る」は「雨が降ったら困る」、「烏などもこそ見つくれ」であれば「烏などが見つけたら大変だ」などのように解釈する。

 

 

B 基本問題:口語訳を確認!

 

:あなかま。人に聞かすな。わづらはしきこともぞある。
:あるまじき恥もこそと心遣いして

 

解答
:しっ、静かに。人に聞かせるな。やっかいなことが起こったら困る
:あってはならない恥があったら大変だと気づかいして