明示的財政ファイナンス(OMF)の補足説明 | ナショナリズム・ルネサンス

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前回のエントリーで「明示的財政ファイナンス(OMF)」の解説を行いました。

今回は、前回の内容に対する質問が飛んできたので、OMFの補足を交えつつ質問への回答をしていきます。

ただし、OMFの細かい議論は本場でもなされていないため、この回答には私の推測が多々含まれます。

そのため、私の勘違いが含まれている可能性が高いです。もし勘違いがあればコメント欄で指摘して頂けると大変助かります。

 

 

Q1.OMFは日銀の国債直接引受に近い考えなのか?

 

A1.はい。OMFは日銀の国債直接引受に近い考えです。

まず、「明示的財政ファイナンス(OMF)」はJGPと違いMMT独自のアイデアではありません。

初出はアディール・ターナー卿の論文「DEBT, MONEY AND MEPHISTOPHELES: HOW DO WE GET OUT OF THIS MESS?」(2013年)と思われます。(タイトルを邦訳すると「負債、貨幣そしてメフィストメレス:この混乱からどのように抜け出すか」になります。)

この論文によると、OMFの原型のアイデアは皆さんご存知「ヘリコプターマネー」です。

日本で言えば日銀の国債直接引受ですね。

 

この論文が出る以前のMMTerもターナー卿に近い考えを持っていました。

例えば、オーストラリアのMMTerのビル・ミッチェルは2012年に、「Keep the helicopters on their pads and just spend」というブログ記事を書いています。(邦訳すると「ヘリコプターはパッドに置いておき、単に支出せよ」)

この記事では、政府部門は民間部門に負債を発行する必要がないことを主張しています。

考え方が似ていたため、MMTerがターナー卿のアイデアであるOMFを支持した、という流れとなります。

 

 

Q2.政府短期証券を発行した場合、それは日銀がずっと預かるものなのか?

 

A2.少なくとも政府小切手の回収(=政府の準備預金による銀行への支払い)までは、償還してはいけません。

この場合の償還は、政府が日銀に準備預金を支払うということになるからです。

政府小切手の回収後も、この政府短期証券の元本は償還する必要がありません。

償還すると、政府の日銀準備預金が減少してしまいます。政府の日銀準備預金の穴埋めは政府支出によりなされます。

そして、その政府支出は税金か国債によって充てることになります。

つまり「元の木阿弥」です。

借換などの何らかの手段で、政府の日銀への負債額=民間部門への支出額を維持しなくては、OMFの意味がありません。

 

 

Q3.国債が定期預金なら、OMFは普通預金で、国債で塩漬けされていた資金の流動性が高まるのではないか?

 

A3.仰る通り資金の流動性は高まるでしょう。定期預金と普通預金では流動性が異なります。

前回のエントリーでは「国債と準備預金の違いは利子だけ」と断言してしまいましたが、流動性を考慮していませんでした

 

 

Q4.準備預金に利息がつく場合、支払うのは日銀だと思うが、その原資は、どこから出るのか?

 

A4.準備預金を発行する権限は日銀にのみ存在するので、その利息を支払うのも日銀になるかと思われます。

ただし、その利息支払いは日銀の負債になるため、日銀のB/Sを政府が補填しなければなりません。

つまり、準備預金の利息の原資は政府支出になります。これは国債の利息の支払いと同じですね。

 

 

Q5.現在、日銀が国債を買い占めて準備預金の残高が凄い事になっているが、これはOMFへの移行が実質的に起きていると捉えていいのか?

 

A5.これは何とも言えないところです。いま日銀が行っている国債の間接引受は、確かに国債から準備預金への転換です。

政府支出は相変わらず国債で贖っていますが、新規国債発行量≪日銀の国債引受量であるため、間接的にOMFを行っていると言えなくもありません。

しかし、言葉遊びのようにも見えますが、「明示的」という言葉は「あからさまな」という意味合いが込められています。

間接的に明示的財政ファイナンスを行う、というのは明示的では無いように思えます。

 

 

Q6.発行済の国債をOMFに移行するのは、どのようなプロセスを辿るのか?

 

A6.OMFへの移行を現実的に考えると、日本の国債には60年償還ルールが存在しますので、それを利用するのが自然かと思います。

60年償還ルールは、国債の元本を60年かけて分割償還していくというルールです。

償還する際は、OMFによる政府支出で元本と利息を支払います。

保険会社等は日銀に口座を保有しておらず、一度購入した国債を手放さない傾向がありますが、60年償還ルールがあるため、最終的には発行済の国債を消滅させることができます。

 

 

以上です。

 

(了)