オープニングのトーンから、これは、と思ったら、やっぱり私のお気に入りの監督さんでした。
望月一扶。
メインキャストは村上淳。
虹郎くんのお父さんです。不穏な存在感、雰囲気あるなあ、、、
なんとなくだけど安藤政信と似てる気もする…
安藤政信が柔なら、村上淳はなんと言っても硬ですね。
(あらすじバンバン入ります)
男の名前はムント。
不慮の事故で放射能浴びて、脳以外はほぼサイボーグという設定は、まるで攻殻機動隊の草薙素子のよう。
人目に触れないように地下の薄暗い部屋で合成血液を輸血しながら、希望も絶望も暑さも寒さも痛みも喜びも、ほとんど何にも感じずに生きているのが、果たして生きていると言えるのか…
届いた血液を取りにドアを開けて表に出ると、建物の壁際に花が咲いている。思わず近寄って眺めていると、子供が遠慮のない好奇心をぶつけ、大人は気まずそうにして通り過ぎる。
諦めたように部屋に戻るムント。
輸血中に、停電してしまった。
ムントは何事か確かめるために、意を決して外に出ていく。コートをまとった装いはダークヒーローのようでカッコいい。
道端に人がバタバタと倒れていて、ガスマスクをつけた男たちに仲間と勘違いされる。ガスマスクをつけるように予備の一式を渡され、それを装着する。すでにマスクをつけているような顔がさらにマスクをかぶっていると違和感しかない。
マスク姿の男たちはテロリストたちだった。
ほぼサイボーグのムントは真相を知るとマスクを外す。そしてライフルを手に駆け出す。高いビルの屋上に向かい、テロの首謀者に照準を定め引き金を引く。もんどり打って倒れるサイコ野郎。仲間たちは蟻の子散らすように散り散りに逃げる。
テロの完遂を阻止して、ムントは自分の場所に戻ることにする。
倒れていた人々が起き出す。テロリストは神経ガスを空から撒いていただけだった。
自分に剥き出しの好奇心を向けた少年も無事だった。
無機質な部屋に戻るとソファに座り、無言のまま、安堵の表情でくつろぐムント。セリフは前半のモノローグだけで、終盤はない。それでも、彼が何を考えているのかまず間違いないだろうという確かさで伝わってくる。
ムントは人々を誰に知られることもなく救った。そしてどんな形であれ、今の自分が生きている日常を受け入れることにした。生きることを選んだ。
ムントは"凍った時間"を溶かした。最後に見せた表情。片目は義眼のようだったけど、残った人間の目がそう語っていた。
やはり、虹郎くんの父ちゃんだけありますね。
でも、ちょうど「バタフライエフェクト」で、
ケネディの"キューバ危機"を見た後だったから、一発の銃弾が歴史を変える重みみたいなものを改めて考えてしまいました。
このシリーズの望月一扶演出は合計三本、これで全部見たことになります。
「生活維持省」 「薄暗い惑星」「凍った時間」
どれも共通してるのが、硬質で意志的な画角、美しい背景、余計な音を排して少ないセリフと間で人間を効かせるという見せ方。
「ブレードランナー」に心酔する私にとっては、どストライクですね。
いかにも人間SFという映像作品です。
ただ、普通の工場で働いていたような男が、遠距離からの狙撃をSWATよろしく見事に決めたのが、都合良すぎる感なきにしもあらずです。とはいうものの村上淳がカッコ良く決まってたから、まっ、いいかとなりました。現金なものですね。