今年も振り返ると各界で活躍された方々がお亡くなりになりました。その中で一際思い出深い方がおります。 
千玄室様(茶道裏千家15代家元千宗室)、享年102歳。
 2013年10月、仙台の藤崎百貨店のギャラリーで洋画家の高橋和先生の個展を担当していた時のことです。
ギャラリーの第一会場は広いスペースを使ってアメリカ人の陶芸家「利茶土」リチャードさんが作品を展示し、高橋和先生は奥の小さい第二会場を使っていました。 
日曜日の昼過ぎ、百貨店の役員や部長がぞろぞろやって来て、その中にとても風格のあるお顔が有りました。
 百貨店の人たちの緊張感とは対称的にリチャードさんが満面の笑顔でお出迎えし、それに笑顔で頷く玄室様にオーラを感じました。
午前中に塩釜神社で開かれた茶会を済ませて、午後弟子の個展に立ち寄り作品もお買い上げ、目的を果たした師匠はすぐに会場を後にされるものとばかり思っていました。塩釜神社でもたくさんの方々と面会され、新幹線までの時間が残り少ないと心配している役員もいましたので。
 師匠をお見送りする時間が来たと思っていたら、壁一枚で区切られた高橋和先生の第二会場にも入って来られました。百貨店の方々もちょっと驚いていましたし、高橋先生も緊張してご挨拶していました。 
師匠が一つ一つの絵を見ながら、民族衣装を着た女性を描いた小さな作品の前で立ち止まりました。
「昔、東欧でお茶会をしたのを懐かしく思い出しました。これからも頑張ってくださいね。」
と言って、その絵をお買い上げくださいました。
 弟子の陶芸家を応援するのは普通である。
しかしたまたま隣で個展をしている見ず知らずの画家の存在を、無視しない家元の気持ちの広さに心が震えた。 
今回あらためてNHK「あの人に会いたい」追悼2025を見て、あの日のことが蘇った。 
「人間たちをみんな一緒に仲良く同化させることを、利休は茶の道において教えた。」
 「私は世の中が本当に楽しくみんなが幸せで暮らせるように」