
■古山 拓展 ~旅路 巡りて~
8月26日(水)~9月1日(火)
大丸東京店 10階 美術画廊
一人の画家がここまで一つのモチーフに愛着を抱くのはなぜか?
登山家にとって地球で一番目指したい峰はエベレストだろう。なぜなら地球で一番高い聖域だからだ。
DM掲載の「巡りし果てに モン・サン・ミシェル」を見た時に、画家が目指す至高の美は人それぞれだろうが、古山さんにとっての地球の美の極地がモン・サン・ミシェルだと知った時から、そのシルエットが私の脳裡にそびえ立ってきた。
一昨年、「何度も取材している私の原点とも言える地ですが、ここが私の座標軸なんです。だから何度でも訪ねます。今回は島に2泊して周囲をくまなく歩き回った取材でした。」と話してくれた。それはどんなに至福な体験だっただろう。今回のDMの作品もその時の成果である。
古山さんから2点目のモン・サン・ミシェル「しるし」も出品されると知らされた。その絵を見た瞬間に蒙をひらかれた。
人は憧れの目標には1ミリでも近付きたいもの、そしてその作品「しるし」から受けた衝撃は、全く新鮮な驚きをプレゼントされた。
目標に近づくことより目標から遠ざかることによって、こんなにも見え方が違うものかと。地球を見下ろすかのようにそびえ立っていた教会のシルエットがかすかに感じられるほど、モン・サン・ミシェルと画家の間に出来た距離。
古山拓さんにとって、モン・サン・ミシェルはもはや異国の地ではなく、心の故郷になっている、この作品の大きな空は日本の東北の空に通じるおおらかさだと感じた。
ふるさとは遠きにありて思うもの。
広大な宇宙の中のその時その場で奇跡的にめぐりあった運命的出会い。こんなに澄み切った清らかな、神の領域のような空を見させてくれた「しるし」。
この光のまばゆさは、作家の心の中で発光する希望の光、悠久の歴史を巡る隣人と分かち合いたい光景なのだろう。
