私は海なし県の群県に育ったので、山に囲まれた風景は当たり前。
毎日が海と接する暮らしは想像の外の世界であり憧れだった。
今回の清水啓一郎・曽根絵里子 彫刻展を開催するきっかけとなった、東京の自由通りギャラリーでお二人の作品を含む清水ファミリー展を拝見した時に、目に飛び込んで来たというより心を射貫いたのが「老人と海」だった。
都会のギャラリーの一空間は、まるで海と関係ない場所なのに、大海原の果てしない広がりと、キューバの老漁夫サンチャゴの人生の戦いの場に化していた。
家に帰り本棚からヘミングウェイ「老人と海」を探しだすと、50年前の読了とあった。
これまで文学と芸術の間を揺れながら、どちらにも惹かれて来た自分にとって、これほどインスパイアした作品はなかった。
すぐにお世話になっている百貨店のバイヤーさんにプレゼンして、今年と来年の企画が決まった。
その一つが明日から、仙台藤崎デパートで始まる。
「清水啓一郎・曽根絵里子 彫刻展」
8月22日(木)~28日(水)

「老人と海」の作品と出合ってから9ヶ月、この作品を頭に浮かべながら2回読み直した。
読めば読むほど老漁夫サンチャゴの若き日の栄光や人生の孤独、そして戦う相手はカジキからサメに代わり、いま置かれている絶望感と、それを唯一分かち合ってくれるのは波の間に間に映る月の輝きだけ。
私が敬愛する加藤和彦と作詞家安井かずみがこよなく愛読していたヘミングウェイの生涯をテーマにしたコンセプト・アルバム「バパ・ヘミングウェイ」があることも知った。

世界的な巨匠の文学を、全く自分のアートで表現した清水先生の作品、一番見て欲しいのはパパ・ヘミングウェイだ。



「くるみ」御影石

「老人と海」