
今年は4人の陶芸家との出逢いがあった。
2月の名古屋三越では茶陶の赤沢露石先生、6月の名古屋三越では楽焼きの吉村楽入先生、10月の仙台藤崎では裏千家の利茶土先生、12月の仙台藤崎でも備前焼の吉延豊丘先生。
10月の高橋和先生の個展の時だった。
利茶土先生の師匠が来られるというので、ギャラリーだけでなく百貨店全体が物々しい雰囲気に包まれて、到着を今か今かと待っていた。
そこに現れたのは千利休から400年余 第15代千玄室大宗匠だった。
利茶土 (リチャード) 先生はアメリカ人、大宗匠に惹かれて来日し、丹波に窯を構えて制作している陶芸家。
日本人より日本人らしい外国人が時にいるが、この方もその一人だ。
90歳とは思えない超ダンディーな大宗匠が、しばらくすると何人かのお付きを従えて高橋和先生のコーナーにも回って来られた。
高橋先生のコンテンポラリー作品を一通り見て、
「大変素晴らしい。頑張ってくださいね。」
と作家に励ましの言葉を掛けられた。
店のVIPが見送りまで見守っている張り詰めた状況の中で、もう帰られるかと思っていると、もう一回り高橋先生の作品をゆっくり見始めた。
そして 「この作品を私の書斎に飾らせて頂きます」 との言葉を残し、会場を立ち去った。
塩竈神社のお茶会の後、自分の弟子の個展を励ましに立ち寄られた訳だから、利茶土さんの作品だけ見て帰るのが普通だろう。
しかし、その隣でもう一人の作家が個展をしていたら、そちらも同じように見て回る。
その心遣いの内側を、いま改めて覗いた気がした。
山本兼一 「利休にたずねよ」 を読んでいたら次の文章に出会って、藤崎でのシーンが甦った次第。
(秀吉が)「わしがたずねたいのは、おまえの茶の湯の工夫だ。なにをどうすれば、それだけ客のこころにかなう道具立てや、料理ができるのか。それをたずねておる」
利休がうなずいた。
「それができているとは思いませぬが、四季折々の風物にこころを砕き、なにに命の芽吹きがあるかを見つめておるつもりでございます」
※写真右から大宗匠、利茶土氏、高橋和先生