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M‐1グランプリ無冠の帝王、般若心経を完訳!

本の帯に、キャッチコピーを纏い、
「えてこでもわかる 笑い飯 哲夫 訳 般若心経」
こないケッタイなタイトルの本、よう読まん……はずが、「ぜったい面白いから」と勧められて読んでしまった。

なんで漫才師が般若心経を?
あに図らんや読んでみたら、横山やすし以来の衝撃、あわててプロフィールをめくった。
その中で目が止まったのは、「三輪山の参道の素麺屋の倅として生まれ、もの心ついたときから般若心経に関心を持つ。関西学院大学哲学科……」
びっくりした。
二十二歳の夏休み、下宿の後輩と大和路を旅して、歩き疲れて暑さしのぎと体力回復に三輪山 大神神社(おおみわじんじゃ)の前で味わった、冷えたビールと三輪素麺のうまかったことを今でも鮮明に覚えている。
あの店の倅さんだったとは…、

では、玄奘三蔵が命懸けで伝えた般若心経のコンセプト、それを笑い飯 哲夫がいかに料理したか、衝撃の解釈から一例。

  無   苦   集   滅   道

たとえば般若心経262文字の、真ん中あたりにある言葉の解釈がこれである。

  苦 集 滅 道 この四つを「四諦(したい)」といいます。
  仏陀が心理を悟って、一番最初に説いたのがこれです。
  仏陀は、人生は全部「苦」だと言いました。
  そして、その「苦」はエゴイズムによって生まれると言いました。
  それから、エゴイズムをなくしたら「苦」がなくなると言いました。
  更に、そのエゴイズムをなくす方法を言いました。
  今の、「言いました」で終わる四つの文が、順に「苦」「集」「滅」「道」です。
  ちなみに「四諦」の「諦」は、「あきらめる」の意味ではなくて、「真理」の意味らしいです。
  そして、この四つが「無」い、とされています。

人を笑わせるのも、感心させるのも、紙一重のワザなのだと思った。

 不   増   不   減

「地球のほとんどが海ですよね。ならば、この世の中は こうなってるんだということを説明している般若心経は、ほとんど海のことを説明していることになりますよね。
確かに海の水は、水のままであろうが 氷になってようが、水蒸気になって一瞬上に上がってようが、「不増不減」です。」

この人の感性の豊かさを、分かりやすさが証明する。

「般若心経には、金という文字も金へんの文字も全然出てこないんです。出すまでもないんでしょうか。確かに、お金はもっとも実体のないものかもしれません。」

面白い発見だと思った。
古代中国の貨幣は「貝」であるから、貝へんの文字も無いのかと、262文字を見渡した。

貨、寶、財、販、買、質、購、貴、費、資、賃貸、賄、賑、貧、賊……

東アジアの漢字文化圏の経済活動、またはそれに間接的に関連する漢字には、貝偏が伴うが、262文字の中に貝はいなかった。

蛇足だが、「えてこでもわかる」の「えてこ」は、猿である。
笑い飯 哲夫は、玄奘三蔵と旅をした孫悟空ではなく、ただの猿の目線で語っている。
猿の浅知恵という言葉があるが、笑い飯 哲夫の融通無碍の「漫才」を駆使した説法、ぜひ舞台の上でも見たいものだ。

世の中が停滞している2月の寒さを、笑い飯 哲夫のパワーで笑い飛ばしてもらった。*

今日から3月、春の光を心に満たして、芽吹かせたい。


*吉本的お笑いの部分は、ミステリー小説のネタをばらすようなものなので、読んでみてのお楽しみ。

(フォト:「色即是空 空即是色」)