迷える子羊よ…
昔、教会で水をかぶるコントがあった。
小説を一話書き上げたので,例のごとく三輪山に行った。
鳥居をくぐる辺りからいつもと違う雰囲気…
これはチャンスかも?と思い、登り始めた。
予想どおり、波で言うところのべた凪状態。
なかなか心地よく登っていた。
だが…
途中に妙な団体さんが集まっていた。
みんなで何やら呪文を唱えている。
これは…まずい…
その波動が…やばい…
その人達にとって甘露でも、私には毒だ。
逆に言えば私は彼らにとって毒であろうか…。
誰にでも好きな味はある。
どちらがいいというわけではない。
その人達が呪文を唱えている間に追い抜き、急いで登った。
(日頃運動不足の身体にはきつい…)
思った通り、上はいつもより良かった。
しばらくすると、いかにも服装が霊能者的な女性が上がってきた。
その人がお祈りし始めた途端に咳が止まらなくなった。
私はこの手には割と強い方である。
それでも負けてしまった。
(家に帰ってからがきつかった…)
しばらくすると例の集団が上がってくるのは間違いない。
どのみち、その時点で終了だ。
私は思いきってその女性に声をかけた。
なぜそうなのか気になったのだ。
「霊能者か何かのかたですか?」
何とも間抜けな質問だと後で反省したが、
言ってしまったものは仕方が無い。
「いえ、ただの人です…」
返ってきた答えがコレであった。
私は信じられなかった。
「ただの人なのにそんな服装で…」
また、変な質問をしてしまった。
「ええ、神の山なので…」のような感じ…
(ここははっきり覚えていない…)
逆に私がそのおもしろさに捕まった。
「電子レンジとか磁場の乱れ、わかります?」
「家に電子レンジはないです」
?????やるやん!この人!
今時、家に電子レンジが無い、…化石だ。
聞くところによると電気製品はよく壊れるらしい。
私も何人かそういう人を知っている。
パソコンもしんどくて三十分が限界!!!!
エアコンのスイッチが勝手に入る!!!!
そっちの人か~でした。
だが、この人の問題はここではない。
では、なぜそうなるのか詰めない事である。
私は分析魔なので身に起こることは調べたくなる。
『なぜそうなるのか…』これが気になる。
電波は電磁波だ。
光も電磁波だ。
では神は?
そう考えないのだろうか?
人の波動や電磁波がしんどいという人が、
手の平で太陽の光を受けている。
霊気が心地良いと言っている。
本能的にそれを求めているのだ。
しいどい電磁波と、そうでない電磁波があるのは不自然だ。
だが、その女性は自分の不自然な行動に、気づこうともしない。
「これ!分かります?」
遠くで例の集団が呪文を唱えている。
その波動が飛んできている。
初めは気づかないようだった。
だが、しばらくして言った。
「気持ち悪い…」
私は後天的だが、先天的にそういう人もいる。
だが、先天的な人は昔からそうであるが故に、
「私はそうだから仕方が無い…」
と思っているようだ。
だから、『なぜそうなのか?』は捜さない。
当然、迷い続けるのだ。
私、どうなってるの?どうなってるの?どうなっているの?
っていうことだ。
あなたはどうもなっていない、ちょっと感度が高いだけだ。
これってなんなの?何の味なの?どういう色なの?
って思うのが普通ではないのだろうか…。
そして、もうひとつ…
こういう方達の特徴がある。
感度が高い故に「それ以外を信用しない」のだ。
別の言い方をすれば人の言うことを聞かない。
「こうじゃないの?」
「わたしはこう思うのよ!」
迷える子羊理論…
地図を持たず、ガイドもなく、磁石だけを信じて山を登る人。
「私は間違ってない、この方向で間違いはないのよ!」
いい意味でチャレンジャーだ。
迷うのには訳があるのだ。
この人がそうであるとは限らない。
「迷える子羊理論」
誰にでも思い浮かぶことはあるだろう。

そうこうしているうちに例の集団が到着した。
久々に恐ろしいものを見た気分であった。
やはり集団の力は偉大だ。
私は逃げるようにして頂上を後にした。
だが、下山途中。
ふと、次回作の構想が出てきた。
出てきたというよりは出来てしまった。
あの女性と話をしたからだ。
そこにヒントはあったようだ。
もう、真魚達が動いている。
嵐が言っている。
「真魚、これはどういうことなのだ…」
実は…私も迷っていたのか…。
そう思いながら下山したのであった。