いくつもの峠を越えてきた。
だが、まだたどり着けない。
蝦夷の未来。
紫音が願った未来。
村人たちは既に限界を超えている。
食料も尽きかけている。
保ってあと二日。
それまでに見つけたい。
紫音はそう思っていた。
もうすぐ登り道が終わる。
木々の間から青空が見えた。
「呼んでいる…」
紫音は誰かに呼ばれているような気がした。
大地が呼んでいるような気がした。
「紫音、あれを見て!」
峠を登り切ったところであった。
先頭の御遠が何かを見つけた。
峠の上からその景色が見えた。
その瞬間。
紫音の瞳から涙が溢れた。

「見つけた!」
「やっと見つけた!」
紫音はその場に座り込んで泣いた。
うれしかった。
また皆で生きられる。
大地が「生きよ!」と言っている。
御遠が紫音の手をにぎった。
「紫音、私たちの未来よ!」
紫音は御遠と抱き合って喜んだ。
村人も駆けてきた。
歓声が上がる。
大地が呼んでいた。
紫音には聞こえる。
その声が。
共に生きよう
皆の力で
共に生きよう
明日を創ろう
共に生きよう
生命は同じ
共に生きよう
皆、繋がっている
共に生きよう
全ては一つ
共に生きよう
離れることなどできない
紫音は涙を手の甲で拭った。
「みんな!あと少し!頑張りましょう!」
村人に声をかけた。
あんなに疲れていたのに元気が出た。
それは村人も同じであった。
「母礼、見つけたよ…」
紫音は心の扉につぶやいた。
大地の生命が輝いていた。

続く…