男は森の闇の中から、肩合わせに抱き合う女とキエンを見た。明るく、美しい光景だった。自分とはかけ離れた、いとしくて、あたたかい空間
女はキエンが自分の命を狙っていることを知っていたようだった。だから祭りの日、襲われても名を呼べなかった。女は自分と共に生きるキエンの生を誰よりも願っていた
それが、女の幸せなら、男はそれを守りたいと思った。女がキエンにそうするように。自分はキエンを守ろうとする女の命を守ろう
そうして、生きていこうと思った。姿を見せられなくても、触れられなくても、そうやって生き苦しんでいくことが、何人も人を殺めてきた男にとって、幸せな罰になるはずだった