古道具おもかげ屋 | soralibro

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通勤時の読書の備忘録です。

著者の名前はよく見かけるのですが、読んだのは初めてかもしれません。時代物を読むのも久しぶりです。
田牧大和「古道具おもかげ屋」

11歳のさよは古道具屋おもかげ屋の手伝いのかたわら迷い猫を探す仕事をしている。おもかげ屋には無駄に顔がよい、人間嫌いで古道具だけを愛する店主柚之助とその祖母菊ばあ、そしてさよが見つけて引き取られなかった猫6匹が暮らしている。お客より古道具を大事にする柚之助は古道具の幸せのために古道具にまつわる客の困りごとを解決する。
 
柚之助とさよはそれぞれ家庭の事情で人間不信、人嫌いになってしまった。それでもさよは一人で生きていけるようになるため猫探しの仕事をはじめ、少しずつ大人と話ができるようになってきて、おもかげ屋のまわりの人たちは嬉しく見守っている。小説の前半は、小物問屋の倅信次郎がおもかげ屋に将棋の駒を買いに来る。祖父が突然もう将棋はしないと言って大事にしていた手作りの駒を売ってしまい元気がない、という。柚之助は店にある駒は売れないが、祖父の手放した駒を探すと言い出す。将棋の駒にまつわる祖父の思いとそれに寄り添う孫の話。後半はさよの身の上話と柚之助の家族の話です。
 
ほっこりとした人情時代小説。ただ登場人物のキャラ付けに終始しているところが気にかかりました。柚之助は人間嫌いという設定でしつこいくらいにそのことが書かれています。その割に古道具のため、と言いながら人に関わっていきます。そのギャップがあるからなのか、さらに人間嫌いというキャラ付けを強調していく。強調すればするほど乖離していく感じでした。そのほかの登場人物にも不思議なキャラ設定が多く、つまらないアニメみたいな感じ。柚之助の父親は冤罪で出奔し、母親はその後の苦労で亡くなっています。最後に父と再会し出奔した理由がわかるのですが、それって夫婦で話せばすぐにわかったことじゃないの?とかなり疑問な理由でした。うーん、最後までモヤモヤしたまま読み終えました。