白銀の逃亡者 | soralibro

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通勤時の読書の備忘録です。

知念実希人「白銀の逃亡者」

致死率95%のウイルスが世界的に大流行しワクチンの開発により収束した世界。ウイルスから生還した患者は細胞が変異し、瞼が白銀色に変わり、常人より感覚が鋭敏になり筋力も大幅に増大し、紫外線にアレルギー反応をおこすため昼間の外出は困難な状態に変化した。ヴァリアントと呼ばれる彼らはある事件によりモンスター扱いされて恐れられ、長野の山奥で強制的に隔離生活をしいられる。岬純也はヴァリアントだが夜間に救命救急の医師として働きながら世間で隠れるように生活していた。施設から脱走してきた高校生悠に声をかけられ、ヴァリアントとばれた純也は追われる身となり、施設の者たちの計画によって政治や公安も絡む闘いに巻き込まれていく。
 
この小説は2016年に書かれています。コロナ禍で起こったパニックや隔離政策を予見するような描写で、コロナ禍後の作品かと思うくらいです。さすが現役医師の作家さんです。読むのがコロナの前と後とでは作品の現実味が全く違うだろうと思います。
でも内容はちょっと残念かな。天久鷹央の事件簿シリーズは好きなのですが、そのほかの特に長編はちょっとガッカリの作品があるのが残念。
 
主人公が事件に巻き込まれていく理由がはっきりしないのと、過去の事件や公安、各政党の政治家の選挙戦術など要素が多くからまっていて煩雑なのに最後は政治家の一喝で終わり、きれいにまとめすぎた感もあり。
昔はこういう政治家が何人もいたなあ、と昭和が懐かしくなりました。