サクラの音がきこえる | soralibro

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通勤時の読書の備忘録です。

浅葉なつ「サクラの音がきこえる」

偉大なピアニストだったが家庭を顧みず、海外公演後に急逝した父親を憎む智也は
家を離れ一人細々と「よろず屋」を営んでいる。小学生でピアノをやめた智也だが、440Hz A音だけは聴き取る
ことができる。そこへ音に敏感で社会に適応できない英治が押しかけ居候。そんな二人が、絶対音感を持つ女子高生天才ピアニストから「音楽で感動させてください」という依頼を受ける。音に対して特異な特質を持った3人が色々な音楽を体感し、過去や親と向き合い、前に進んでいく物語。
 
構想はおもしろいが、小説としては残念な出来ばえ、という感想です。読みにくいわけではないのですが、
全体にまどろっこしい。
浅葉なつさんは「神様の御用人」を読みました。1巻はおもしろかったのですが、途中、中だるみ。10巻で終わるとわかって
なんとか最後まで読み切りました。最後はよかった。また番外編が出版されるようです。
 
小説全体に流れるのはバッハ シャコンヌ ブゾーニ版 智也の父親が得意とした曲でした。
インドネシアのガムラン、沖縄の三線など平均律ではない音楽も重要な要素となっています。
シャコンヌは重厚な曲です。若い3人が歩んでいく話には重すぎる気がします。サクラには到底合わない。
それが違和感につながって残念、と感じたのかもしれません。
 
作者のあとがきを読んでシャコンヌだった理由は判明。ベーゼンドルファー・インペリアルのピアノを小説に書きたい、という
ことだったようです。ブゾーニのシャコンヌのために作られた、とも言われる高価なピアノ。
 
それにしてもこのピアノありき、な割にはピアノも生かしきれなかったかな。残念。