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通勤時の読書の備忘録です。

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柏井寿「祇園白川 小堀商店 レシピ買います」

この作家さんの「鴨川食堂」は昔読んだ気がします。同じ京都を舞台にした食のお話でした。
 
祇園白川の割烹「和食ZEN」の奥に小堀商店がひっそりとある。ZEN店長の淳、芸妓ふく梅、元百貨店のカリスマバイヤーで今は市役所のなんでも相談係勤務の木原の3人が、食通で名高い百貨店相談役小堀の命により、ひとつしかないとびきりのレシピを買い取るために情報を収集し、小堀が実際に食して買取金額を決める仕組みになっている。金額は店一軒買えるほどの高額から交通費に満たないものまで小堀の考え一つで決まる。訳アリの料理人が現れて様々な料理を作っていく。
 
鱧、寿司、焼肉、松茸と豪勢な料理がこれでもか、とでてきます。割烹の料理もひと手間かかった京料理の数々で、あまり高価そうで正直どんなに美味しいのかピンときません。貧乏性だな、とつくづく思いながら読みました。
作れそうなレシピはオムライスだけですがソースが手作りで手間がかかっている。唯一無二のレシピなのだから当然ですが普通には作れません。買い取られたレシピは使用できなくなるため料理人は手放すことに躊躇しますが、それぞれ事情があり売る決断をします。そして小堀はその事情を深く汲み取り、料理人のこの先のことまで考えて買い取る金額と条件をつけていきます。京都の町もそれぞれ料理人に合った趣の町がでてきます。住んでいるからこそのシチュエーションです。語りも京都弁が多く、とくにふく梅は芸妓言葉なので文章にするとかなりややこしい。「なんやおいどがこそぼうなるゆうか」など3度ほど読み返してやっとわかりました。関西に住んでいても難しい。
そして今の京都の問題点も京都らしい厭味をこめて語られていきます。この頃京都で繁盛している店の半分は京都以外から移ってきた店で昔から京都にある店とは空気が違う、とか、観光客のマナーが悪く舞妓や芸妓は無理な要求をされたり路地に連れ込まれそうになったり、など。観光客に合わせて様変わりしていく京都は本当に残念で足が向かなくなりました。でもまだ隠れ名所はたくさんあり、美味しいお店もあります。久しぶりに花見は京都に行こうかな、と思いました。
 
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