一年契約の非常勤職員とはいえ、直接雇用に変わったことで、業務の幅は一気に広がった。

ときは震災後の災害復旧事業全盛期。

通常の何倍という事業が一気に動き出した時期で、人手が足りない状況だった。

 

派遣職員として一年間そこで働きながら築いてきた信頼関係もあったのかもしれないけれど、直接雇用になって最初の仕事が、延べ面積9千平米の新営建物の設計担当だった。

設計事務所へ業務委託しての設計だが、その建物を使用する部署との打ち合わせや、設計事務所とのやりとり、行政対応などなど、これまで経験したことがない業務を一気に任された。

 

直属の上司は上司で自分が抱える物件でいっぱいいっぱいという状況だったので、何もわからない中、ひとりで渦中に飛び込むしかなかった。

 
はじめてのことの連続で、大変なこともたくさんあったけれど、それでも楽しくて仕方なかった。
 
大学を卒業したころから、ずっと憧れてきた設計の仕事。
設計するのは設計事務所であって自分ではないのだけど、それでも、使う人の話を直接聞き、それらがきちんと設計に盛り込まれているかをチェックしたり、自分がこんな風にしたいなと思うデザインや仕様を提案してみたり、法的条件をクリアするために行政と折衝したり、そうしたことのひとつひとつが新鮮な体験でワクワクした。
 
そんなわたしの働く姿を先輩同僚にほめてもらえたことがあった。
その人は、震災対応のために、他県の大学から派遣されてきていた職員だったのだけど、
「あいぽんさんがいつも楽しそうに働いている姿を見て、ぼくもがんばろうという気持ちになる。」と言ってもらえて、とてもうれしかった記憶がある。
 
そんな風に充実した日々を過ごしてた10月、わたしはまた赤ちゃんを妊娠した。
一年契約の身だったので、すぐに課長に報告し、「妊娠したが、出産後もぜひこの職場で働かせてほしいので、来年度も契約を更新してほしい。」とお願いしたところ「よくがんばってくれているからね。」と快いお返事をいただけた。
 
3月に担当していた設計の仕事をちょうど終え、工事は別の職員に引き継いだ。
その後無事完成したその建物を見るたび、初めての業務に奔走した日々や、つわりでしんどい中設計の打ち合わせをしたことや、大きなお腹を抱えて役所をまわったことを思い出す。
 
無理を言って契約を更新してもらったという思いがあったため、育休は取らず産休だけで仕事復帰することにした。
2013年のGWのタイミングで、わたしは産休に突入した。
 
(次回へつづく)