震災のさなか、新しい仕事をスタートさせたわたし。

契約期間は2か月だったが、限られた時間の中で、得られるものはすべて得たいという気持ちで、どん欲にその職場での仕事に取り組んでいた。

コピーする資料やメールの文章ひとつとっても、これまでのわたしは触れたことがない内容のものが多くて、そういった資料をのぞきみながら知識を増やしていった。(もちろん守秘義務厳守)

大きな組織で働くという経験もとても貴重で、内線電話をかけるにしろ慣れるのに一苦労だった。

 

派遣で働くおもしろさの一つに、こうした大組織での仕事や、自分がこれまで関わったことのなかった仕事に触れることができることがあると思う。

どういう仕事や職場環境が自分の肌に合っているか知るために派遣という働き方をする、という手もありだと思う。

 

わたしはこの職場で派遣職員として働きながら、「この職場でずっと働けたらいいのになあ」と思うようになっていた。

 

業務内容が興味深いというのもあったけれど、子どもを育てながら働きやすいと感じたことが大きかった。

当時、長女はまだ0歳ということもあり、熱だなんだと保育園から呼び出されたり、休まなくてはいけなくなることも多かった。

そんなとき、いつも快く「家族を大切にね」と言ってもらえる環境が、ほんとうにありがたかった。

子どもを抱えて何度も転職活動を繰り返してきたわたしには、まるで天国のように思えたものだった。

 

とはいえ、わたしは2か月契約の派遣職員。

ことあるごとに、「この職場で働きたいけど、何か情報ないですかねえ?」といろいろな人に聞きまくっていた。

 

当時のわたしは、病気休暇中の人の代替の派遣職員で、その方の休暇が延長になったため、1度契約が更新された。

しかし、その方が職場復帰したため、4か月で契約終了することになった。

 

契約終了の1か月前くらいに、職場の上司からある話をいただいた。

今働いている課での仕事は終了するが、今度は同じ部署の別の課の業務で派遣社員を雇用する計画があるという。

「あいぽんさんがよければ、また働いてもらえないだろうか。」というお誘いだった。

ぜひお願いします!とお願いしたものの、その上司の方が担当部署に相談したところ、入札なのでそういったことはできないという答えだった。

「あいぽんさんが所属している派遣会社が落札してくれたときは、ぜひまた来てね!」という言葉をもらって、わたしは契約期間を終了した。

 

派遣会社の営業さんには、「ぜひ落札してください。そして落札したら、ぜひまた働かせてください。」とお願いしていたけれど、こればかりはそのときにならないとわからない状況。

しかも今回は、前回の募集のときとは業務の条件が変わっているため、今より時給は下がる見込みだということだった。

実は震災のドタバタで、なかなか良い時給条件で働いていたのだが、次は時給にして500円は下がるというのだった。

「それでもいいから働きたいです」とお願いするくらい、当時のわたしは、この職場に惚れ込んでしまっていた。

 

結果的に、見事わたしが所属する派遣会社が落札し、晴れてわたしは同じ部署での別の課の仕事に就くことになった。

 

こうしてわたしは、数週間前に送別会をして送り出してもらったにも関わらず、またすぐに「戻ってきましたー」と復帰(?)したのだった。

 

次の派遣契約の話は送別会の時点ですでにあったので、いろいろな方々から「戻ってこれるといいね」と言っていただいていて、戻ったときには「おかえりー。また、よろしくね。」と迎えてもらえて、とてもうれしかった記憶がある。

 

考えてみたら、ここでもまた出戻り劇やってたね。

でも今思うと、「時給500円さがってでもそこで働きたい」と思うくらい惚れ込むって、すごいよね。

 

(次回へつづく)

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