昔(むかし)、こんなことを体験しました。会社の社宅(宇都宮市)に住んでいたころです。30歳前後のころなんですが、飲み会の深夜に産業道路を歩いて帰宅中でした。昼間は車通りが激しいのですが、深夜は静かです。誰(だれ)もいません。道路の両脇(りょうわき)にはお店がポツポツあって柳(やなぎ)の木が一定の間隔(かんかく)をおいて植えられてあります。
空ちゃんは産業道路の歩道をゆっくり歩いていました。ほろ酔(よ)い気分です。
そしたら、誰もいない道路だと思っていたら、背後から自転車の近づく音がしました。自転車は車道のようです。空ちゃんに追いつきました。
すぐに追い越(こ)されると思ったのに、空ちゃんの右横数メートル離(はな)れてゆっくり並行しています。
「おや?」と思って、横目でチラリ……
なんと!全身真っ白で透(す)き通るようなドレスの妖艶(ようえん)な美女!
空ちゃんは一瞬(いっしゅん)ドキッ!としましたが、飲み屋の姉(ねぇ)ちゃんか……と思って無視をして、今までどおりまっすぐ前方を見てゆっくり歩きます。
でも、追い抜(ぬ)きません。変だな……よくまぁ、こんなにゆっくり走れるもんだなぁ?
あれ~、なんか変?…ん?…音がしない?
えっ!ペダルをこぐ音がしないよ!
そう思った瞬間(しゅんかん)、彼女は空ちゃんをゆっくり追い越していきました。空ちゃんは急に気になって
「ねぇちゃん!ねぇちゃん!」と声をかけました。
そしたら、数メートル先の柳の木の下で霧(きり)とともに消えてしまったのです!
「な~んだ、幽霊(ゆうれい)かよ! 驚(おどろ)かすなよ……」と、ひとり言(ごと)をいって、またゆっくり歩きだしました。
あの頃(ころ)、空ちゃんはすごくもてました。幽霊からも一方的に好意を持たれたんです(笑)
関連記事:補足1話「幽霊はいるよ」