バンクーバーは今でこそ高層ビルが立ち並ぶ都会ですが、昔は森でした。

 

 

例えば下の写真は、バンクーバー市文書館(City of Vancouver Archives)にデータ保存されている写真で(オリジナルはブリティッシュ・コロンビア州文書館 BC Archives にあります)、裏面にはグランビル・ストリートとヘイスティングス・ストリートの交わる辺り(Granville and Hastings)、1868年頃と書かれています。ダウンタウンにある場所です。

 

City of Vancouver Archives, AM336-S3-2-: CVA 677-516

 

Granville & Hastings は、現在はこんな感じです(手元に写真がないので、Google Maps のストリートヴューで)。

 

 

中学校か高校の社会科で、カナダは製材業が盛んだと習った記憶があります。実際、バンクーバーのようなところでさえ昔は森で、カナダ人のみならず、カナダに渡った日系移民にも製材業に従事していた人が多かったのです。

 

次は1889年か1890年頃の写真とされるものです。材木が並べてあって、その上を牛に引かせてやはり木材を運んでいるのがわかるでしょうか。これを skid road と言います。

 

Logging Scene near Vancouver, B.C.

City of Vancouver Archives, AM1376-: CVA 1376-375.01

 

トラックなどないですから、こうして運ぶのがいちばん効率が良かったのです。これにはさらに工夫があって、敷いた木材の上から、滑りを良くするために、主として魚からとった油をかけていたそうです。この牛を引く係の人たち、すなわち御者を teamster と呼びました。油を撒く係の人たちは彼らより給料も安く、「下」に見られていたそうです。

 

下の写真は1890年代のものだそうです。やはり南側(先ほどの写真のキャプションに書いた False Creek の南側)、Broadway から見たダウンタウンです。この頃には背の高い木は無くなってしまっています。

 

"View of Vancouver from Ninth Avenue (Broadway), between Ash and Cambie Streets"

City of Vancouver Archives, AM54-S4-: SGN 444

 

さて、Teamster はその後、トラックの運転手を指すようになります。アメリカとカナダのトラック運転手の労働組合を International Brotherhood of Teamsters というのですが、1950年代に会長を務めたジミー・ホッファ(James Riddle Hoffa, 1913-75)が有名ですね。チームスターならぬギャングスター的なことまでした人です。

 

Skid road の方はのちに skid row という言葉になります。路上生活者や犯罪者がたまっている都市の一角(あちこちにあるのですが、バンクーバーで言うと East Hastings & Main のあたりがそうです)を指します(Wikipedia "Skid row")。

 

バンクーバーを覆っていた森は無くなってしまいましたが、当時の記憶は、言葉などにまだ残っています。