Thrift とは「倹約」のことです。つまり無駄遣いしないこと、節約すること。形容詞は thrifty で、Thrifty というレンタカーの会社があります。同じ意味で、frugal(形容詞)、frugality(名詞)という言葉もあります。

 

倹約はもちろん日本でも美徳とされますが、アメリカでもやはり古くから奨励されてきました。ニューイングランドに落ち着いた清教徒(Puritans)は、勤勉(hard work, industry)と倹約を美徳(virtue)としています。たとえば、こんな風に説明されます:

 

Puritans emphasized thrift -- making proper use of your resources, saving and refraining from wasteful practices. In the Puritan's mind, the bounty he earned as a result of his work showed the favor of God and was not to be squandered, but used judiciously.

 

The Puritans' thrift was important in helping them survive as farmers in New England, where the farmland was not particularly good and the growing season was short. Had the Puritans not been thrifty, it is doubtful that the colonies would have survived and developed into the United States as we know it.

 

Dell Markey, "The Impact of Puritan Belifs on Work Ethics"

 

倹約と勤勉を美徳とすることと資本主義の発達、そして大儲けした人が寄付をしたり慈善事業に財産をつぎ込む文化についてはまた別の機会に書きたいと思います。今日はただ thrift という言葉だけです。

 

さて、アメリカやカナダに行くと、よく Thrift Store を見かけます。これはリサイクル品を売っているお店で、救世軍(The Salvation Army)のような団体が運営している非営利のお店(charity のためのお店)で、確かにかなり使い古した商品も多いですが、安いことは安いです(日本でよく見る「リサイクル品」は、これに比べれば新品同様で、値段も高いですね)。

 

*写真はネット上のものを拝借しました

 

私は初めてアメリカに行ったとき、寮の部屋で使う布団などをどこで揃えていいのかわからなかったので、とりあえずバスでショッピングモールに行って買いました。そこで買った布団の大きな包みを抱えて歩いていたら、通りかかったおじさんに、安いものが欲しかったら thrift store だよ、と言われたことを覚えています。

 

また、カナダで比較的貧しい地区にある小学校のガレージセールを手伝ったとき、そこで売っていたものだってかなりボロボロだったのですが、売れ残ったものは翌日学校の廊下に並べて欲しい人が持って行っていいことになっていて、それでも残ると救世軍が引き取って thrift store で売るのだと聞いて、なるほどよくできているとちょっと感心した記憶もあります。

 

ありていに言うと、懐具合に応じて、新品を買う人たちからリサイクル品を買う人たち、さらに無料のものを入手する人たちまで、社会的な階層(class)が一方にあって、もう一方で、どの階層にあっても何らかのものを入手できる仕組みがあります。Nancy Isenberg の White Trash: The 400-Year Untold History of Class in America (Viking, 2016:渡辺将人・富岡由美訳『ホワイト・トラッシュ―アメリカ低層白人の四百年史』, 東洋書林, 2018)にあるように、北米の社会は厳然とした階層社会なのです。この階層の問題についても、また別の機会に書きます。

 

最後に一つ。Thrift は倹約ですが、なぜか spendthrift というのは無駄遣いをする人のことです。これはややこしくて、英語圏に長くいる人でも、けっこう誤解していたりすることがあります。Spend(お金を遣う)と thrift を足したら、節約しながら遣うとか、ケチケチ遣うという意味になりそうなものですが...