最近、以前からブームだった“ハウツー本”が、ますます売れているそうです。

不況の対策として、ビジネスマンが自分のスキルをあげて、他人より一歩先んじたい
と思って読むのが多いそうです。

いわゆる入門書の類は、わかりやすく書いてあるので、私も好きです。

受験シーズンなので、今年はともかく、来年の入試を目指す人達や、その親を対象
にした、“こうすれば~大に受かる”とか、“偏差値を~ヶ月で上げる勉強法”とか、
藁にもすがる思いの人達の心をくすぐるようなタイトルの本もよくみかけます。

塾で仕事をしている立場から言うと、人の経験談を聞いたり読んだりして、それを鵜
呑みにしても、それぞれの資質が違うのですから、ある人が成功したからと言って、
他の人も同じように成功するとは限りませんが、ヒントになることはたくさんあります
ので、他の人の経験談を聞くことは、やはり良いことだと思います。

ただ、そのヒントがどこにあるのか…また、自分はそのヒントをどう応用するのかは、
自分で考えないといけません。

生徒さんを教えている時に、「この人は、今が伸びる時だな!」とか、「この人は、今
ではなく、あと2年か3年たてば、ぐっと伸びるな」とかひらめく時があります。

それは、長年の勘によるものですが、10人いれば10人とも、その能力が伸びる時
期は違うものなので、それぞれのピークの時をうまく導き出して、上手に伸ばすこと
が出来るように、私達も、そういうハウツー本を読むようにしています。

ただ、どうも納得がいかないのが、速読の勧めというものです。

人生は限られた時間しかないのですから、一生に読める本の数は、おのずと限られ
ています。映画や音楽、演劇だって限られた数のものにしか触れられません。

だからこそ、出逢いというものが大切で、自分の感性を研ぎ澄ませていくと、自然と
良い本や芸術に出会えるものだと思っています。

速読することは、悪いことだとは思いませんが、本の書き手が表現しようと思ってい
ることのすべてを味わったり、理解することが出来るのだろうかと疑問に思います。

量を読んだからと言って、中身が充実するとは、とても思えないのです。

何事もそうですが、世間で何が流行ろうが、自分にはこれだと思える生き方があれ
ば、人の価値観に惑わされずに、しっかりと生きていけると思います。

急がば回れではありませんが、~する方法などという誰かが編み出したお手軽な
道ではなく、自分で考えて人生を歩めるような、そのためのアドバイスを送れるよう
に、私も日々勉強したいと思います。