産まれたばかりの妹はオモニに背負われていて、あれは買い物の帰りだったのか、祖母の家からの帰りだったのか。
姉は学校なのか祖母の家なのか定かではないが、僕は妹を背負ったオモニと家に帰ってきた。
アボジは仕事からまだ帰っていない。
オモニは家に着くなり、缶詰めのパイナップルを開けて一口食べた。
次の瞬間。
オモニは妹を背負ったままゴロンと倒れこんだ。
僕はなにが起こったかわからなくてオモニを揺すった。
しかしいくら揺すってもオモニは起きない。
それどころかピクリとも動かない。
怖くてショックで僕は半狂乱に泣き叫んで、受話器を取った。
でも受話器を取ったものの電話の掛け方なんかわからない。
受話器の向こうからは「プー」という冷たい音だけが響く。
受話器を持ったまま泣いていると、オモニがゆっくり起き上がった。
オモニになにが起こったのかわからず「大丈夫?」と尋ねてもオモニは何も答えない。
あれは何だったのかずっと謎だった。
大人になって。
あれは一瞬吐き気か何かで貧血でも起こしたのかなぁ、と時折思い出してた。
数年前にオモニに
「あれは何やったん?」
と尋ねるとオモニは
「冗談でも子どもにあんな事絶対にしたらあかんなぁって反省したわ。
あんたあれからしばらくパイナップル食べへんかったもんなぁ」
と言った。
あれはオモニのドッキリだったのだ。
今度若い子にドッキリを仕掛けたい衝動に駆られたら、3歳の僕を呼び起そう。
3歳の僕は泣きながら僕の胸ぐらをつかむはずだ。
「お前はあの時、何を学んだのだ!!」
って。