雨が降っていた。
僕は町の中をずっと走っていた。
何処かを曲がっては、何処かを真っ直ぐ。
色んな家の景色が見える。
僕は夢の中で同じ景色が出てくる事が多い。
その景色のひとつに墓地の入り口がある。
その墓地はずっと奥に道が続いていて、ここを抜ければ目的地に早く着く事はわかっているけど、入り口を見ながら「しかし、ここに一歩でも踏み込めばアウトだな」と感じて迂回する。
その日の夢もその墓地を眺めたけども、道を変えて走り続けた。
途中、去っていく者たちとすれ違った。
すれ違うけども、去る者たちとの間に「何も無い」のを感じる。
「そうなんだな」とだけ思って走り続けた。
少し広い通りに出ると大勢が列をなして走っている。
僕はその中に入っていってどんどんかき分けて追い抜いていった。
追い抜いていくので一人一人の顔が見える。
みんな若い。
雨は降り続ける。
若い彼ら彼女たちは夢を叫びながら走っている。
でも中には走りが下手くそな子がほとんどで、夢と一致していない。
そんな中で走りかたが上手い子たちが、数人だけどどんどん前に出てくる。
僕は走りかたが下手な子たちに言った。
「なんでも走ればいいってもんじゃないよ。向き不向きがある。走るのは走れる子に任せたらいい。
走れない子は他の方法がある。
ついて来れる子たちはついておいで」と僕は先頭に向かってスピードを上げた。
でも、えらそうな事を言った僕も実は足が絡まるのを必死にごまかして走っている。
夢の始まりから何度もごまかしている。
走るのが上手い子は本当に上手い。
下手なのをごまかしながら、ついてくる子たちの先頭を我武者羅に演じた。
目を覚ませば少し肌寒かった。