パルナッソスからみえる数
竪琴ではなく、リラ・ダ・ブラッチョを持つアポロン。
しかも通常の7本弦ではなく、9本弦にしていました。
「パルナッソス」の登場人物は、アポロンを中心に、9人のムーサ(芸術の神)と、古代の詩人9人、ダンテ以降の詩人9人と解釈されています。
また、「パルナッソス」の中で、一人だけ名前の書いた紙を持つ人物は、古代ギリシアの女性詩人のサッポーでした。
サッポーを、9人のムーサ(芸術の女神)に対して、「10番目のムーサ」と称えていたのが、プラトンでした。
枢要徳にみえる数
さらに4枚目の壁画、法学の「枢要徳」も、プラトンに由来したものです。
ほかのあらゆる徳を基礎づける主要な倫理上の4つの徳、知恵・節制・正義・勇気を意味し、この思想はプラトンによって初めて体系化され、キリスト教世界にも深い影響を与えた。神を対象とする徳、信仰・希望・愛の三対神徳と対比され倫理徳といわれる。
コトバンク「枢要徳とは?」より
知恵・節制・正義・勇気の中でもっとも重要なのが正義だそうです。
正義は天井に位置し、他の3人は下の壁画に
左から剛毅(勇気)、賢明(知恵)、節制と描かれています。
正義
剛穀(勇気) 賢明(知恵) 節制
(ラファエロの弟子が描いた下段2枚は、レオナルドとの繋がりはありません。)
そして「枢要徳」の壁画は、「枢要徳と対神徳」と解釈する説があります。
「対神徳」とは、神に対する徳で「信仰」「希望」「慈愛」の3つになります。
3つの徳はシンボル色があって、信仰は白、希望は緑、慈愛は赤になります。
彼女らの衣装の色が、「対神徳」を表現しているのかな?と思ってたのですが、天使(クピド)たちが「対神徳」を表しているという説もあるようです。
3つの徳の由来は、パウロがコリントの信徒へ書いた手紙からです。
古代ギリシア、プラトンによる4つの枢要徳と、
新約聖書のパウロの手紙による、3つの対神徳を合わせると、
カトリック教会の教義における7つの基本的な徳の、七元徳(しちげんとく)となります。
このように、「パルナッソス」は9と10、「枢要徳」は、4と3と7の、意味のある数がみえるわけです。
となると、他の2枚「アテナイの学堂」と「聖体の論議」にも何か意味のある数はあるのかな?って思いませんか?
アテナイの学堂と聖体の論議にみえる数
「アテナイの学堂」
中央のプラトンとアリストテレスの2人、彼らの手のポーズから上下、アポロンとミネルヴァの二体の神から、2の数がみえてくる。ただし、「枢要徳は4つ、ムーサは9人」といった決まりのある数ではなく、構成上そうなっているだけの数です。
では「聖体の論議」は・・・
確実に意味のある数は、三位一体と、4福音書
3+3の6人の天使、イエスの左右1+1の2人、雲の上の左右6+6の12人。
左右均等にバランス良く並んだ人物たち。
これらの数も、構成上そうなっているだけの数としかみられないでしょう。
しかし、
イエスの左右の2人の位置、この12数は、レオナルドの「最後の晩餐」と関わりがあると自分は考えます。
特に「パルナッソス」で9を繰り返したのは、他の作品にみえる数も数えてみて欲しかったのではないか?と思うのです。
(・・・とか言いつつ、アテナイの学堂、聖体の論議の群衆の数は数えてません)
「聖体の論議」に関しては第77~79回で既に記事にしていたのですが、「パルナッソス」「枢要徳」の記事をつくっていた際に、「聖体の論議」で新たに気づいたことがありましてたので、それを次回にします。
第83回に続く~