レオナルドの作品を学ぶラファエロ
ラファエロの師匠ペルジーノは、レオナルドとはヴェロッキオ工房時代の仲間でした。
ラファエロがレオナルドと出会ったのが1504年頃。
レオナルドの描く「ある女性の肖像画」をみてから影響を強く受けていきます。
それは、人物のポーズ・構図といった見た目のものだけではなく、レオナルドの作品にある、何か多重の意味を含ませる仕掛けに気づいたからでしょう。
ラファエロも仕掛けのあるものに挑戦するような絵を描きます。
「レダと白鳥」は、「糸車の聖母」と同じく、レオナルドの真作は現存していません。
ラファエロの素描や弟子らによる作品が残されているので、それらからレオナルドの真作を推測していくしかありません。
中央の「聖アンナと聖母子」は、ラファエロの署名の間が終わってから記事にします。
ラファエロは、約30年前の初期の作品もとりいれています。
レオナルドが過去に描いたものも関心を持ち、見れるものは見たのだろうと考える根拠の一つです。
もちろん、レオナルドとは関連のない作品も多数描いています。
1505-1508年頃にかけ、ペルージャのサン・セヴェロ礼拝堂の仕事を受けていました。
ただ1508年に、教皇ユリウス2世から依頼を受けローマに移転することになるので、制作途中で上半分だけの未完成となってしまったものです。
1520年ラファエロの死後、残りの下部分は師匠のペルジーノが描いたそうです。
あまり情報がないので確信はありませんが、下半分も構想・下書きはラファエロが済ませていたと思います。
三位一体
この作品、上部分に劣化があり見えませんが、イエスの頭上の白いハトの上には、「Aω」の書をもつ父なる神が描かれています。
新約聖書のヨハネの黙示録に「私はアルファであり、オメガである。初めであり終わりである。」という文言があり、それをギリシア文字の「A(アルファ)ω(オメガ)」で表したものです。
また神は「Αω」の書ではなく球体を持つパターンもあります。
「三位一体」とは、父(神)・子(キリスト)・聖霊を表したもので、聖霊は白いハトで表現されています。
また、父・子・聖霊は縦に連なって描かれるものです。
この製作途中の作品が元になって、さらに壮大なスケールで展開されたのが「聖体の論議」なのです。
1509-10年 署名の間「聖体の論議」
第77回に続く