第76回「聖体の論議」以前にラファエロが描いていたもの | レオナルド・ダ・ヴィンチの小部屋~最後の晩餐にご招待

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レオナルド・ダ・ヴィンチの絵画の謎解き・解釈ブログです。
2021年5月末から再度見直して連載更新中です。

 

  レオナルドの作品を学ぶラファエロ

ラファエロの師匠ペルジーノは、レオナルドとはヴェロッキオ工房時代の仲間でした。

ラファエロがレオナルドと出会ったのが1504年頃。

 

 

レオナルドの描く「ある女性の肖像画」をみてから影響を強く受けていきます。

それは、人物のポーズ・構図といった見た目のものだけではなく、レオナルドの作品にある、何か多重の意味を含ませる仕掛けに気づいたからでしょう。

 

下矢印ラファエロも仕掛けのあるものに挑戦するような絵を描きます。

 

 

 

下矢印「レダと白鳥」は、「糸車の聖母」と同じく、レオナルドの真作は現存していません。

ラファエロの素描や弟子らによる作品が残されているので、それらからレオナルドの真作を推測していくしかありません。

 

下矢印中央の「聖アンナと聖母子」は、ラファエロの署名の間が終わってから記事にします。

 

下矢印ラファエロは、約30年前の初期の作品もとりいれています。

レオナルドが過去に描いたものも関心を持ち、見れるものは見たのだろうと考える根拠の一つです。

 

 

 

もちろん、レオナルドとは関連のない作品も多数描いています。

 

1505-1508年頃にかけ、ペルージャのサン・セヴェロ礼拝堂の仕事を受けていました。

ただ1508年に、教皇ユリウス2世から依頼を受けローマに移転することになるので、制作途中で上半分だけの未完成となってしまったものです。 

1520年ラファエロの死後、残りの下部分は師匠のペルジーノが描いたそうです。
あまり情報がないので確信はありませんが、下半分も構想・下書きはラファエロが済ませていたと思います。

 

  三位一体

この作品、上部分に劣化があり見えませんが、イエスの頭上の白いハトの上には、「Aω」の書をもつ父なる神が描かれています。

 

 

新約聖書のヨハネの黙示録「私はアルファであり、オメガである。初めであり終わりである。」という文言があり、それをギリシア文字の「A(アルファ)ω(オメガ)」で表したものです。

 

また神は「Αω」の書ではなく球体を持つパターンもあります。

上矢印

「三位一体」とは、父(神)・子(キリスト)・聖霊を表したもので、聖霊は白いハトで表現されています。

また、父・子・聖霊は縦に連なって描かれるものです。

 

 

この製作途中の作品が元になって、さらに壮大なスケールで展開されたのが「聖体の論議」なのです。

1509-10年 署名の間「聖体の論議」

 

 

第77回に続く