第18回 これまでの整理 フィリッポ・リッピとレオナルド・ダ・ヴィンチ | レオナルド・ダ・ヴィンチの小部屋~最後の晩餐にご招待

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レオナルド・ダ・ヴィンチの絵画の謎解き・解釈ブログです。
2021年5月末から再度見直して連載更新中です。

今回は、過去17回までの記事のポイントのまとめです。

 

①ダヴィンチは、誰の影響を受けているのか?

 

レオナルド・ダ・ヴィンチは、14歳でヴェロッキオ工房に弟子入り、そこでボッティチェリやギルランダイオ、クレディらと出会います。身近にいた彼らからの影響も受けていますが、その根本はボッティチェリの師フィリッポ・リッピです。

 

 

②異時同図法に見えない異時同図法

 

さらにフィリッポ・リッピ(1406生-1469没)の師は、ブランカッチ礼拝堂に「貢ぎの銭」などの異時同図法を用いた壁画を描いたマザッチョ(1401生-1428没)でした。

 

 

異時同図法というのは、1枚の絵の中に同一人物の異なる時間を複数描くことをいいます。

つまりその作品が異時同図かどうかは、同一人物が複数描かれているかどうかで判るわけです。

 

フィリッポ・リッピはプラート大聖堂で「聖ステファノの生涯」を異時同図法で描いていますが、その中でこの部分が異質なのです下差し

四角枠の4人の視線と石を投げつけようとしている方向がおかしい。

手前でひざまずく聖ステファノの背後に、石で打たれて地に横たわる聖ステファノがもう一人いるように想像できます。

A:石で打たれて地に横たわる聖ステファノ

    ↓

B:天に引き上げられる聖ステファノ

短い時間差ではありますが、この部分は異時同図には見えない異時同図だとみえます。

 

 

 

 

 

③主要人物の視線・ポーズ・手の動き、自画像と人物の兼任

「目は口ほどに物を言う」という通りで、主要人物の視線の先に何があるのか追ってみると、何かが見えてくることがあります。

 

レオナルド・ダ・ヴィンチは、人物の視線・ポーズ・手の動き、人物に別の人物を兼任させることで、異時同図には見えない異時同図を描いていきますが、フィリッポ・リッピのプラート大聖堂とスポレート大聖堂の壁画はダヴィンチの原点になったとみえるのです。

 

 

 

 

 

 

 

④タイトルやテーマに合わないアイテム

 

「受胎告知」に砂時計

 

ヴェロッキオ工房 「キリストの洗礼」にナツメヤシと白いハト以外の鳥

 

レオナルド・ダ・ヴィンチ「受胎告知」に墓碑を模した書見台

 

この当時の画家さんは、注文主の意向にそって作品をつくる職人さんでした。

タイトルを自分でつける風習もありませんでした。(画家がタイトルを付けるようになったのは18世紀以降)

 

今、我々が目にしている作品のタイトルは、依頼主のいる肖像画(例:ジネヴラ・デ・ベンチの肖像)、注文主の制作背景が判っているもの、または作品の内容でもって一般的に通じるタイトルがつけられているのです。

 

ただ、タイトルにとらわれてしまうと、別の可能性が見えにくくなります。

 

もしタイトルやテーマに合わないアイテムがある場合は、別の意味が含まれている可能性があります。

 

 

 

ざっとこれまでのポイントをまとめてみたのですが、詳しくは過去記事でお願いします。

しばらく忙しくなりますので、更新の間隔があくと思います。アセアセ

 

次回は「マギの礼拝」の予定。