ご訪問くださり、本当にありがとうございます。


霊や生命について書かれています。


ですから、興味がわかなかったり、読んでいて不愉快になられるのなら、迷わずにスルーされて下さいね。


あなたの大切なお時間を無駄にしたくありません。

 

 

所要時間=4~6分程 です。

ご関心があればお時間のある時にでも、ゆっくりとお読みになられて下さい。

 

 

 

新樹の通信
 

3.幽界人の富士登山 (その3)

 

 


(上記の続きです)


《  》 内は私が追記しました。

原著の体裁を変更しています。




 

 

 

僕たちは天狗さんと別れて、また登り出しました。


時々現界の登山者達の方をのぞいて見ましたが、

 

いずれも気の毒なくらいくたびれて、気息をはずませていました。


こちらはその点、いっこう平気なもので、平地を歩くのとさして変わりません。


「これではあまり楽すぎて、登山気分が出ませんね。」


「脚につけた脚絆の手前が恥ずかしいくらいのものじゃ。」


僕たちはそんなことを語り合いました。


森林地帯が尽きて、いよいよ禿山(はげやま)にかかろうとする地点(ところ)で、

 

僕たちはとにかくも岩角に腰をおろして、ひと息をすることにしました。


「ヤレヤレくたびれた。どっこいしょ・・・。」


僕は冗談にそんなことを言いましたが、

 

もちろんちっともくたびれてはいません。


こんな場合、現界の人なら莨(たばこ)でも吸うとか、キャラメルでもしゃぶるとかするところでしょうが、僕たちはそれもできません。


あっけないこと夥(おびただ)しい。


あまり手持ち無沙汰なので、一つ音楽でもやろうということになり、

 

守護霊さんが腰間の愛笛を抽き取り、

 

僕はポケットのハーモニカを取り出しました。


これまで僕は何回となく、守護霊さんと合奏しておりますから、近頃はとてもよく調子が合います。


できることなら、一度皆さんに聴かせてあげたいですがね・・・。


笛とハーモニカの合奏もなかなか悪くないものです。


それはとにかく、僕の守護霊さんが小手調べのために、

 

笛を唇に当てて二声三声、ちょっと吹き鳴らした時です。

 

思いもよらず、どこかコー遠い所から、劉喨(りゅうりょう)たる笛の音が聞こえて来ました。


僕たちはびっくりして互いに顔と顔を見合わせました。


「登山者の中に、誰か笛を吹くものがいるのかしら。」


「イヤあれは人間界の音色ではない。」

 

と守護霊さんは、じっと耳をすませながら、


「人間界ではあんな冴えた音(ね)が出るものではない。たしか神さんの手遊(てすさ)びに相違ない。」

 

僕たちは合奏どころでなく、しきりにあれか、これかと憶測をめぐらしましたが、

 

とうとう守護霊さんが《精神》統一をして富士山の神霊に、その出所を伺うことになりました。


すると直ちに先方(むこう)からお告知(しらせ)がありました。

 


只今吹奏されたのは、富士神霊のお付きの女神である。

そなたの笛が先方に通じ、お好きの道とて、うっかり調子を合わせられたものであろう・・・。

 

 

それと知った時に、僕は有頂天になりました。

 

「やア、こいつア面白いことになって来た。守護霊さん、一つ是非その女神さんに、こちらへおいで願って、合奏していただきましょう。」

 

「それもそうじゃ。ひとつあちらへ申し上げて見ることに到そう。遠方からの合奏では、何やら物足りない。」

 


さすがに僕の守護霊さんは、音楽に生命を打ち込んでいる人だけあって、こんな場合には、少しも躊躇しません。


早速その旨をあちらに申し込んで快諾を得ました。


待つ間程なく、間近かに、さらさらという衣摩(きぬず)れの音がします。


見ると一人の女神さんが立っておられました。


年の頃はおよそ二十七、八、

 

頭髪(かみ)はてっぺんを輪つように結んで、末端を背後(うしろ)に垂れ、

 

衣装は蝉(せみ)の羽に似た薄紗(うすもの)、

 

大体が弁天様に似たお姿でした。


顔は丸顔、そして手に一管の横笛を携えておられましたが、

 

それは眼ざむるばかりの朱塗の笛でした。


僕は文学者でないので、うまく表現できませんから、一つ母の霊眼朱塗の笛の映像を想念に乗せて見せておきます。

後でよく聞いて見てください。

 

《↑新樹からのこの通信を受け取っている霊媒が、彼のお母さんです。父の和三郎に向けて話しています》

 


とにかく現世では、ちょっと見られそうもない、気高い風来の女神さんでした。


女神さんの方では、よほどわれわれを不審がっておられるようでした。

 

 

<女神さん>

先刻は大そうよい音色を耳にしましたが、あれはあなた方がおやりになられたのですか?

 


「お讃(ほ)めに預かって恐縮致します。」と守護霊さんが恭(うやうや)しく答えました。

 

 

<新樹の守護霊さん>

私の笛などはまだいっこう未熟、

とても神さまの足元にも寄りつける程ではござりませぬが、

ただ日頃、笛を生命としております以上、

せめては一度お目にかかり、直接お教えに與(あず)かりたく、

勿体ないことは存じながら、ついあんなご無理を申し上げた次第・・・。

つきましては、甚だ厚かましゅうございますが、

是非何とぞ天上の秘曲の一つをお授けくださいますように・・・。

 

 

熱誠をこめた守護霊さんの頼みには、女神さんもさすがにもだし難く思われたものと見え、

 

傍の岩角に軽く腰をおろして、心静かに、妙(たえ)なる一曲を吹奏されました。

 

残念ながら、最初僕は、その急所がよく判らなかったが、

 

そこはさずが本職、僕の守護霊さんは、ただの一度で、すっかり覚え込んでしまい、

 

女神さんが吹き終わると、今度は入れ代わって、その同じ曲を、いとも巧みに吹いてのけました。

 

 

<女神さん>

あなたは稀に見る楽才のあるお方じゃ。

 


女神さんはそう仰って、ひどく感心しておられました。

 

 

<新樹>
只今のは、あれは何と申す曲でございますか?


僕がそう尋ねると、女神さんはにこにこしながら答えられました。

 

<女神さん>
これは富士神霊様(かみさま)が日頃お好みの曲で、


『八尋(やひろ)の曲』と称(とな)えられておりまする。


大そう来歴(いわれ)の深いもので・・・。

 



この女神さんは、いたって口数の少ない方で、細かいことは何も教えてくれませんでした。


それで別れ際に、こんなことを言われました。

 

 

<女神さん>

あなた方も、いずれ頂上へお詣りであろうから、

その際は富士神霊様(かみさま)にお目通りをさせてあげましょう。

 

 

そう言ったかと思ったら、いつとはなしに姿がプイと消えてしまいました。


とにかく、この時の守護霊さんの歓びと言ったら大したもので、

 

女神さんが去られた後で、何回となく『八尋の曲』の復習をやり、

 

僕にも丁寧に教え込んでくれました。


お蔭で僕にも、ハーモニカで立派に合奏ができるようになりました。



 

 

 

「新樹の通信(4)」へ続きます。

 

 


(ブログ管理者追記)



二人とも楽しそうで、ほっこりとしました (*^^*)


ですが、これも死後の生活の中でのお話です。


悲しみとか寂しさとか無常感だとか・・・


現世側の人間が死について抱いているような暗いイメージは微塵も感じられません♪


私たちの想像以上に、みんな楽しくやってるんですょ(笑)



 

ここまでお読み下さり、本当にありがとうございました