◆家族X 監督:吉田光希(日) | 今日見た映画の感想です

◆家族X 監督:吉田光希(日)

「家族X」 
監督:吉田光希
主演:南 果歩/田口トモロヲ/郭智博


PFFスカラシップ作品。

新興住宅地に住むある家族のお話。
ストーリーらしいストーリーはなく、閉塞的な日常の幽かな皺のようなものにいささか大きな皺が寄りかすかに明るさが見えるというようなストーリー。

南果歩の演技が光る。

監督は29歳でこの作品を撮った。

青年が一生懸命、「家族」を視ようとするとこういう映画になるのだと新鮮な気持ちで鑑賞した。

撮影はほぼ手持ちカメラで行われており、登場人物からだいたい1m位のところにレンズがある。

リストラにおびえる父と几帳面で徐々に正常な精神が保てなくなっていく母と、大学卒業後もアルバイトを続ける息子を、それぞれカメラが呼吸をしながら追っていく。カメラが手に持たれている事で、カメラを構えている人の息のようなものが観客に伝わり、それが緊張感もたらす。

カメラはだれの目線なのか。カメラの持ち手は「家霊」なのではないかと私は仮定する。
生まれそこなった子供か、そのへんの猫の子の霊か、そんなものがカメラをのぞいてる。

父母息子はそれぞれに、世間との間に薄い膜を張り、自分を守ろうとしている。その膜の張り方が、この家の流儀のようだ。
いつのころからか、家に戻っても、この膜を脱ぐことをしなくなった。
そのことが原因なのだろう、と書こうとして何の?という疑問が来る。

登場人物の両手足が見えない糸で縛られているような感覚がつきまとう。

わからないところはたくさんある。
水はどうすればあんなに黴るのか。
一夏の間に起こったことなのか。植木鉢はどのくらいかかって枯れたのか。
途中から抽象度を上げているのか。

なぜミチコを発見したとき、カメラが固定になるのか、お父さんと一緒にファミレスに入るべきじゃないのか。
なぜミチコが車道を横断した時カメラはついて行かなかったのか。


カプセルホテルに泊まればいいんだよ。疲れてるんだからってのはダメなのか。
おかんも、おとんも一日位帰らなくても、いんじゃね? っていうのはダメなのか。

この映画で一番攻撃的な言葉は「たいへんね」だ。
私には、この映画の世界が、実はしんからわからない。