読売新聞社の奈良紙面に、クロスワードが掲載されています。読売新聞社以外でも、家の光やJAのお知らせなどにもクロスワードがあり、またクロスワードの専門の雑誌まであるそうです。
読売新聞社は、毎週土曜日にクロスワードが載り、兄と2人で解いて応募するのが日課なのですが、なかなか粗品が当たりません。
まあクロスワードは、せいぜい1時間ぐらい時間が潰せます。ちょっとした暇つぶしです。
そんなある日。家の中は、まったりおだやかに流れる静寂に包まれた日でもあった。といっても、何もすることがなかっただけなんですが。
そんな時、兄が
「暇やし、クロスワード解くわ」
と言いました。
「いや、知らんがな」
と心の中で、僕は思いました。
それからしばらくすると、兄は上機嫌で僕の部屋に戻ってきました。
「どしたん?」と聞くと
「1人でクロスワード解いたってん」と上から目線な兄。
1人でクロスワードを解いたという嬉しさと、少し暇つぶしになったことで、上機嫌なんだろうと思いました。
「実はな、クロスワードを解くことで頭の体操になるし、そのおかげで最近すぐ解けるようになってん」
笑みを浮かべて兄は喋っています。
またもや「知らんがな」と心の中で思いました。
ポストカードとボールペンを取り出し、クロスワードの答えと必要事項を嬉しそうに書いています。しかも、手早い。いや、早すぎる。ものすごいペースで、ポストカードに書いています。
しかしその時、兄の手がピタリととまりました。
「あ…この新聞…今週のと違うやないか…」
実は、兄が僕の部屋に持ってきた新聞は、先週のだったです。
それでも、日付を見ればそんなことは分かりそうなものですが、ポストカードに書いてようやく気付くのが兄。天然なのかボケているだけなのか、もう分かりません。
「今週のやと思ってたのに…せっかく書いたのに、どうしたらええんや…」
僕の心の中では、この日1番の「知らんがな」が記録されました。