スペイン北東部のカタルーニャ自治州が文化や人文科学の分野で活躍した人に贈る、第23回カタルーニャ国際賞が村上春樹さんに授与されました。彼の授賞式でのスピーチの内容は、各メディアで報道され、僕たちの目にも色々な形で飛び込んできました。
沢山の拍手と賞賛の一方で、残念なことに、「せっかくのチャンスの場で、もっと声高に原発反対を叫ぶべきだった」、「海外で言うのではなく、日本でこそ発言すべき」、「東京電力、政府を非難するスピーチ」、「今回の惨事の原因の全てを”効率の追求”と言いきって良いのか」などといった非難する声も色々と出てきています。
ですが、あの世界中の聴衆が見守る場で今回の震災と福島の原発の事故について触れ、非難を恐れることなく、あの物事を巧みにとらえた独特の表現で持論を主張したこと自体が、大きな意味を持ち、そしてとても素晴らしいことなのだと思いました。きっと事前に慎重に言葉を選び、勇気をふりしぼった末のスピーチだったのでしょう。
全員がそうだとは言いませんが、つい体面や国民からの批判を気にして、当たり障りないことしか発言できなかったり、全く見当違いのことを堂々と叫んでいる政治家が少なくない中にあって、村上春樹さんのスピーチは本質を突いているものだったと思います。
沢山の作品を読まさせてもらってますが、実際に話している姿を見るのは初めてでした。話すのも上手なんですね。