依存~あなただけが頼りなんだ[No.323] | 起業して不安はあるもののワクワクしている50歳・IT技術者・中小企業診断士のブログ

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先日、新聞で各地方自治体による独自の情報システム導入についての記事が掲載されていた。税金の有効活用といった観点では最悪な、システム開発企業にとっては最適な話である。システム開発企業は似たようなシステムを各地方自治体ごとに個別に売り込んで、運用を支援する名目で莫大なお金を定期的に得られる。地方自治体は長年にわたって、特定のシステム開発企業に頼りまくることで、その支援なくしてシステム利用が難しくなる「ベンダーロックイン」といった、システム開発企業の手のひらの上で転がされる状況に陥る。薬物の売人に依存し続け、資産を失う哀れな中毒者のように。

 

 

一刻も早く中央が取りまとめて構築した共通システムを多くの自治体で共有で利用する形態を実現し、バケツから漏れ続ける水のようなお金の使い方を止めてくれたらと願いたい。システム開発企業にとってはあまりいい話ではないけれども・・・。システムの欠陥によってマイナンバー利用に関係する障害が、ある自治体で発生した際、その自治体のシステムに対しては欠陥を修正したが、他の同様のシステムを利用している他の自治体への対処を怠ったため、他の自治体でも同様の障害が発生した。イマイチな生産ラインで作られた多くの製品が一様にイマイチであるように。システムの共有化が図られれば、そんな残念すぎる悲劇ともさよならできる。

 

以上のように限られた特定のヒト、コトに依存するのは危険である。このようなことを逆手に取る作戦として、会社の中で必要とされる人であり続けるために、会社を自分に依存させたら勝ち、そんな少し怖いことが書かれた本を読んだことがある。会社にとって欠かせない業務が、専属の担当がいなくなったら回らない、いわゆる業務の属人化、会社にとっては危ない状況である。可能な限り自分の持っている技能を上手く他者に伝えられる人が尊敬され、そうでない人が軽蔑される組織の空気を作っていくべきだと思う。

 

少子高齢化が進む中、今後、多くの優秀な高齢者の引退によって、感覚的な要素が多く言葉での表現が困難であるため次世代への継承が容易でない熟練の技術の途絶が懸念されている。このような技術の継承にAIを活用して若者にうまく伝えていく試みが期待されている。似たような話で寿司職人が一人前になるためには、おっかない親方に何年も師事しながら技能を少しづつ習得する(盗む)必要があると私は思っていた。しかし先日、TV番組で短期間youtube動画で学んだ寿司職人の営む極上のネタで勝負する寿司屋が活況だと紹介されていた。人への依存もアリ、またその反対もアリ、そう思わされた。

 

最近、特にIT業界では顕著ではあるが、会社に雇われていることを大切にしすぎない傾向が強まっている。譲れない主張をしたにも関わらず軽く受け流されてしまうようであれば、その場を去る、そんなことが自然になりつつあるように感じる。少し前ならば、会社に変に意見し過ぎることは居場所を失うリスクと隣り合わせだったので躊躇する場合が多かったように思う。私は可能な限り、何かに依存したくない。「私が必要なんでしょ?一人で大丈夫なの?」に対して「ああ、仕方ないんだ」と言いたい。大切なヒト、コト、モノが突然に失われた場合、それに執着しすぎることのない自分でありたい。

 

Silence is Complicity(沈黙は共犯に等しい)

白人警官による黒人への暴行死で流行した言葉

 

依存を謳ったRolling Stones