始めるために捨てる[No.295] | 起業して不安はあるもののワクワクしている50歳・IT技術者・中小企業診断士のブログ

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 昨日、20年くらい前に買ったサーフィンのロングボードを捨てました。もうサーフィンから遠ざかって15年くらい経ちますが思い出がつまっていて何となく捨てられず3m近くある巨大な板が物置の随分なスペースを占拠し続けていました。最近、キャンプにはまりつつあり、物置のスペースを空けなきゃ!ということで長年の先送りに終止符を打つことになりました。新たなライフスタイルに適した収納が出来る満足感が、過去を捨ててしまった寂しさを打ち消しています。このように新たに始めるために、まずは捨てることが必要で、今日はこのようなことについて書いていきます。

 

 

 長く続いているモノやサービスの値段が下がるデフレの状況下、ダイソーなどの100円ショップやユニクロのファストファッションといった程々の品質の商品を安く買えるようになりました。ですので注意しないと家中がモノであふれてしまいます。新しく購入する際は、今までのモノを捨てないといけません。そんな中、以前、何かのセミナーで「捨てるのもコスト」という言葉にはっとさせられました。コストは買う時ばかりではなく捨てる時も含めて考えないといけません。つまり捨てるには先に述べた心理的負担や、実際に捨てるために必要な手間や時間、さらには最近、頻繁に叫ばれるようになったSDGsの中で指し示されている環境負荷といったコストも考慮の対象となります。このようなことを考えると安くない良いモノを時には修理をしながら長く使うヨーロッパ的な考えに洗練を感じてしまいます。企業にとっては長く使い過ぎて貰っても困ってしまいますが・・・。

 

 私はシステムを作る仕事をしています。システムを作るにあたり、何を実現するか?大小様々な要望が多くの部門、役職(立場)の方から寄せられます。しかしシステムを作るにあたり、家を建てるのと同じように、予算という上限がありまして、全ての要望に応えるには予算を遥かに超えたお金が必要になるケースが少なくありません。ですのである程度、お客様に要望を捨てて貰う必要が生じます。この際に良く耳にするのが「今まで出来たことはそのままで」といった要望です。人は潜在的に変化への抵抗、現状維持への欲求が遺伝子に組み込まれているように思います。その方が厄介ごとに出くわす確率が下がりますので。しかし私たちを取り巻く環境は変わっていく(例えばコロナ禍によってお客が蒸発した宿泊施設や居酒屋、航空会社など)ので、それに合わせてシステムに求められるものも変わっていくのは仕方の無いことです。変えた後の素敵をアピールし、変化に対する怖さや面倒な気持ちを抑え、まずは捨ててから新たに始めていただくように仕向けるのも私の仕事です。

 

 私は最近、英語の勉強に多くの時間を費やしています。どうしてかといいますと以前からもそうでしたがコロナ禍によって遠隔で仕事を進める流れが加速したため、今後は仕事を会社内のいつものメンバ(いつメン)で行うより、まずは仕事があって、それに会社という枠に囚われることのない必要な人材が集まるプロジェクト型の仕事が増えていくことを私は予想しています。そうなりますと地球上における最適なメンバとチームを構成して仕事をする機会が増えていきますので、そのためには英語でのコミュニケーションが欠かせません。ところが1日の時間は限られますので、英語習得への時間を増やすのであれば、その分、他の時間を削らねばなりません。そこで私はIT技術の深掘りの時間を削ることにしました。ITの仕事をしているのに、そのコアとなる技術を磨く時間を減らすのは一見ダメダメですが、長期の視点で考えると英語で自由に世界の優秀な技術者と意見交換できる能力を身につけることは、英語習得の代わりに失われる技術の知見を差し引いたとしても、遥かに自分の技術者としての価値を高めると判断しました。

 

 以上のように状況に適した優先すべきことを選び、その分、何かを諦める、捨てる、を繰り返していくことで、自分を高めていけたら素敵です。下位チームを下位リーグに落とし、下位リーグの上位チームを上位リーグに引き上げ、最高のリーグをキープしているJリーグのように。また似たようなことで、悲しさ、悔しさ、怒りといった負の感情もあまりに強いと、そこに留まってしまい次にいけません。ですので暫くはそれを感じ続けるにしても、そろそろ十分と判断したのならば、必要な学びのみを抜きとり、残りは頭の隅に追いやり、リセットされた感覚で新たに始めていきたいと考えています。実は私にとって今がその「そろそろ」のタイミングなのです。何かを始めてみるつもりです。

 

捨てることに躊躇無いポールウェラー