前の日にニューヨークのお友達に「好きな曲は?」と聞いたら「Misty」とのお返事だったので、この日のライブで。

お客様が撮ってくださった動画、少しだけどうぞ

深尾多恵子-Vocal 藤井美智-Trumpet 祖田修-Piano 荒玉哲郎-Bass

Bonds Rosary、京都 2023年6月10日

撮影:松村行雄

 

 

 

 

Misty  は、ジャズ・ピアニストのエロール・ガーナー Erroll Garner 作曲。1954年、サンフランシスコからシカゴへのフライト中、飛行機が雷のエリアに入り、窓から見える霧や、そこに輝く虹にインスパイアされて機中で作られた曲。ガーナーは譜面の読み書きができなかったそうで、ピアノを頭で想像して曲を構想し(あの人おかしいですよ!とほかの乗客がフライトアテンダントを呼んだとか・・)、家に帰ってピアノで弾いて録音して、誰かに書き下ろしてもらったそうです。

 

上へ下へ動く美しいメロディ、ジャズスタンダードの中でも王道中の王道。

 

Erroll Garner

 

 

 

ボーカル曲として歌われることが多いのは、サラやエラなどのスタジオやライブ録音の名歌唱が多く残されていて印象的だからだと思います。器楽曲として有名になった後に歌詞がつけられたもので、この曲が好きだったピアニストが著名作詞家のジョニー・バーク Johnny Burke にお願いして、何度か断られたのち、重い腰をあげて数時間で書きあげられたとのこと。ジョニー・バークは、"Pennies from Heaven"  "Polka Dots and Moonbeams"   "It Could Happen to You"  "Here's That Rainy Day"   "Like Someone in Love" などの作詞家です。 Misty というタイトルに由来して数時間でこんな素敵な歌詞をつけちゃう、韻の踏み方も洗練されてて、やっぱ天才はすごし。

 

Johnny Burke

 

 

 

 

 

恋をしている心境を misty と表現することは日常英会話ではまず無いです。
これは Misty  というタイトルの曲を与えられたジョニー・バークの想像力の賜物と思います。

サラボーンが、misty を moist とか いろいろ言い直して歌ってるライブ録音があり、面白いです。

 

歌詞全体を読むと、霧に包まれて方向が分からない感じ、美しいものに魅かれて心が戸惑いさまよう様子を misty と表現しているのが分かります。Beautiful Love の内容に似てるかも。(Beautiful Love, you're all a mistrey, Beautil Love what have you done to me...)
 

シンガーそれぞれに解釈が違って良いと思います。

私は、この歌に関しては misty という形容詞を、うっとり、ぼーっとしちゃう感じと認識しています。

 

 

misty  という形容詞を心境に使うときの一般的な説明は vague, confused  のようです。

とはいえ、私は "I feel so misty."  とは誰からも聞いたことないです。

そう言う人がもしあるとしたら、よっぽどの詩人かな。

 

 

 

 

歌詞&和訳

 

Misty  

  作曲:Erroll Garner  作詞:Johnny Burke

 

Look at me, I'm as helpless as a kitten up a tree
And I feel like I'm clingin' to a cloud
I can't understand
I get misty, just holding your hand

 

 見て、わたし木から降りられない子猫みたいよ

 雲にしがみついているみたい

 手を握るだけで

 こんなにうっとりするのはどうして

 

Walk my way
And a thousand violins begin to play
Or it might be the sound of your hello
That music I hear
I get misty the moment you're near

 

 あなたがこちらへ来ると

 千のバイオリンが響き始める
 いえ、それはあなたの声かも

 音楽が聞こえるかのよう

 そばに来るとすぐうっとりしてしまう

 

Can't you see that you're leading me on?
And it's just what I want you to do
Don't you notice how hopelessly I'm lost
That's why I'm following you

 

 私を誘惑しているの、分かっている?

 それでいい、そうしてほしい

 私は途方もなく道に迷っていて

 だからあなたについていく


On my own
Would I wander through this wonderland alone
Never knowing my right foot from my left
My hat from my glove
I'm too misty, and too much in love

 

 私一人でこの不思議の国を彷徨うのかしら
 右足と左足の区別もつかず 
 帽子と手袋の見分けすらつかず 
 うっとりし過ぎて、あなたに恋し過ぎて

 

 

 

 

 

注意ポイント:

 

walk my way

 「私の方向へ来て・こっちへ来て」の意

  Please walk in my direction.  Come towards me.  てこと。 

  Come my way とかも会話で使います。 

  冒頭の Look at me と同じく、ここでのWalk は相手に対する呼びかけの動詞、主語は「あなた」  で、  

 「私」が歩くことになっている訳詞がたまにあります

 


lead me on

  私を誘惑する、の意。entice と同義。 先導・リードする、ではない。
 「誘導する」の意味でも使えますが、たいてい愛に関する表現で、誘惑する・誘う、て感じ
 

 

 

印象的な箇所が多い名詞ですが、

最初の子猫ちゃんの部分と最後のこの↓あたりが特に印象に残ります

 

Never knowing my right foot from my left

  右手・左手の区別がつかない=やっていることが分かっていない、の意。

  会話的には、自分についてこの表現を使うのは珍しく、誰かがよく分かっていないのを批判する表現として使われるのが一般的

 

  He doesn't know his left foot from his right foot.  

      彼は自分がいったい何をしてるんだかよく分かってない。

 

 

  調べてみたら上の例文みたいに left から言うのが通常みたいです。

  ジョニー・バークは、逆にして left で この文を終わりたかったのかなと。
  数行前に出てくる lost  の音とかぶって良い感じ

 

 


で、なんで最後に 帽子と手袋??

love で歌を終わるために、それと韻を踏む単語として glove を使いたいが故の言葉遊びですね。

霧の中に埋もれた心と帽子&手袋に直接の関係はないと思います爆  笑

(もしもなにか関係あるのをご存知なかたがおられたらご教授ください〜!)

 

 

 

 

発音:

ポイントは星の数ほどあれど、
冒頭の look  が、いきなり一つ目の山場。

簡単なようで、l も k の子音も oo   の母音も綺麗に響かせて歌うのはけっこう至難の業 

 

 

それは、それとして、

 

この曲の単語の発音で、自分が気になってたこと2点の再確認、

ボーカリストの方々のご参考までに・・


 

(1) ワンダー という言葉

 

On my own
Would I
wander through this wonderland alone

 

赤字部分、wander(さまよう) と、 wonderlandという言葉に入ってる  wonder(不思議に思う)  は発音がびみょう〜に違います。私もその昔ニューヨークのボーカルの先生にきっちり教えてもらった箇所です。

 

深尾9歳に聞いたら、なんの疑いもなく、ごく自然に違いを認識してました。

さすが、耳がいい。

 

一方、アメリカ人たる深尾夫は、あっさり

「両方同じだよ」
 

え〜〜??

爆  笑爆  笑まあ、ほんのちょっとの違いやけど・・・

 

シンガーとしては違いを認識しておきましょう

ネイティブの人もたまに不確かなくらいの、ほんのちょっとの違いですが、確実に違います。

 

 

 

 

この動画では言ってないけど、wonder の won は one と全く同じワン です。

win(勝つ、の意) の過去形の won も one と全く同じ ワン です。

(先生に won = one と初めて教えてもらった時は超びっくりした!)

 

 

wander の wan の子音は、ちょっと暗い目の、オがやや混じるア。

しかもちょっと長めに ワーン みたいにすると、それらしく響く。

 

さらに、w の子音が日本人には不慣れなことが多く、what、when、 worry とかいっぱい出てくるし、練習しましょう

 

 

 

(2)following  と knowing 

 

That's why I'm following you

 

Never knowing my right foot from my left

 

following  と knowing のイングの前にある W の処理。
ウィング であるべきか、そうでないべきか

 

 

 

ここでの w はサイレントなので、子音の O からくる オゥの形からイングに行けばよく、 Wを言い直す必要はなくて、ファロゥーイング、 ノゥーイング、でいいようです。

 

 

  グッ  グッ    

 

 

 

 

大学時代にはサークルでR&Bを歌い、

卒業して1998年にNYに行ってジャズに出会い、半年で日本に帰り、

関西のジャズクラブで少し歌い、

今度はちゃんと学んでこようと思って、

2000年に2度目の渡米。

そこから20年の間に、ニューヨークの老舗クラブや米国各地のフェスティバルにリーダーとしてブッキングをいただくようになりました。

そしてコロナ禍で2020年末にまさかの完全帰国。

 

ジャズについて何も知らないところから始まって、なんとかここまで。

そして、今もジャズ勉強中です。

なので、ジャズシンガーのあらゆる段階のお悩み、わかります。

 

 

まだまだ学ぶべきことがたくさんある一方、

学んできたことを他のかたのお役に立てるべき時期にもきているのかなと思ってブログに書いております。


もしレッスンにご興味がありましたらFacebook, Instagramなどからご連絡くださいね

 

 

深尾多恵子

Songbird TAEKO

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=ライブのご案内、2023年夏=

 

KYUSHU2DAYS with Osamu Soda (P)! 
6/16金 久留米 ルーレット

6/17土 博多 スペーステラ

 

 

2 Days Featuring Miki Hayama (P) from New York! 

7/15土 舞子 旧武藤邸

7/21金 大阪 ミスターケリーズ


 

 

ニューヨーク生活20+年のあれこれを京都の女性記者さんが綴った面白い本、出版されてます

本「Untraveled-ニューヨークが、ジャズシンガーにしてくれた-」