中国の相反する姿―鉄道事故と電気自動車・レアアース規制 | 電動バイク乗りたい症候群

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WSJ日本版のコラムから
東京工科大学大学院ビジネススクール教授 尾崎弘之氏のコラムです。

中国の相反する姿―鉄道事故と電気自動車・レアアース規制
http://jp.wsj.com/Business-Companies/node_288054

 中国浙江省温州市で先月23日に発生した高速鉄道事故は、死傷者数が250人を超える惨事だった。事故を起こした先頭車両を埋めるなど、鉄道省の対応には隠蔽の意図が露骨に見えたが、ネットでの当局批判は凄まじかった。温家宝首相が28日に現地を訪れて、被害者を見舞い、原因究明の約束をするという異例の対応を取らざるを得なくなった。

 私は事故が起きた時、中国出張中で、事故の前後に高速鉄道「和諧号」に乗るという稀有な体験をした。

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尾崎氏撮影 和諧号の普通座席

 まず、事故の二日前に北京から山東省の済南まで約1時間40分の旅をした。和諧号には川崎重工など日本の技術が多く取り入れられているが、車両の外観から内装のデザインまで、まるで日本の新幹線の「コピー」である。車内の売り子の制服とワゴン車まで良く似ている。一点目立った違いは、車内の自動扉上部パネル(新幹線ではニュースや広告を流している場所)で、絶えず速度を表示していることである。駅の前後でなければ、時速300キロメートル(km)超のスピードが恒常的に出ている。

 和諧号のスピードは国威発揚手段のようである。乗車する前、北京で会った青華大学の研究者も、和諧号が新幹線より速いことを盛んに自慢していた。彼は国際関係論が専門で、日本の政治制度にも精通しているが、そういうバランスが取れた知識人でさえスピードへの拘わりが強かった。ましてや、中国共産党幹部による「世界一のスピード維持指令」が至上命題だったことは想像に難くない。その裏で安全性が軽視されたとすれば、許されないことである。

不透明な情報開示と事故への低い関心

 事故に関する当局の死傷者数の情報開示も曖昧だった。発表された死傷者数が何度も訂正され、しかも鉄道省と国営新華社通信の発表数字の食い違いが何度も起きた。しかし、食い違いが起きるとは考え難い。なぜなら、和諧号のチケットを購入する際、必ず身分証明書の提示を求められるからである。私の場合、パスポートを出して、番号が記録された。つまり、当局は、中国人、外国人を問わず、完全な乗客名簿を持っているのである。死傷者数が曖昧になる可能性は低い。情報操作を疑わざるを得ないのだ。

 中国の政治体制が欧米的民主国家と全く異なることが再認識されたが、意外なのは一般中国人の反応であった。中国国内でのネット批判が今回は厳しかったので、さぞ一般市民の批判も激しいと想像したが、そうではなかった。

 事故翌日の24日、私は済南から北京まで和諧号に乗る予定だったので、早朝から英語ができるホテル従業員、地元の知人を次々つかまえ、事故、運行情報を集めようとした。ところが、全員、私に聞かれるまで事故の存在すら知らなかったのである。事故直後から、地元のテレビ各局が事故を報道していたので、情報がなかったわけではない。驚くことに、「バスや鉄道はよく事故を起こすし、またか」という反応が大半である。

 その日、私は北京に移動して帰国便に乗る予定だったので、決死の思いで和諧号に乗ったが、駅は全く平穏で、事故に関する説明などなかった。普通座席はほぼ満席で、事故を気にしているようには見えない。国の威信がかかっているから安全と考えるのか、あるいは、それが裏切られて失望しているのか、いずれの反応も読み取ることはできなかった。

 和諧号は日本人も多く利用しており、我々日本人は安全情報に敏感になるが、これが中国の実態であろう。そのことを知って行動するしか、対応方法はない。

政府が安全に配慮する小型電気自動車(EV)

 中国の国家体制に失望する一方で、逆の印象を持ったのが、小型電気自動車(小型EV)企業への政府の対応だ。

 今回の出張目的は、小型EV企業調査だった。過去10年、中国では電動スクーターや電池付自転車が普及した。現在1億台を超え、4世帯に1世帯程度保有しているとみられる。道路網が急速に伸びたにもかかわらず、ガソリンバイクを禁止している都市が多いことが普及の背景にある。この市場をターゲットにして、多くの企業が小型EV製造に参入している。

 小型EVは時速50km程度しか出ないが、価格が30~50万円で、所得が低い農村地域でも手が届く。山東省はEVの重点地域となっており、50社以上の小型EVメーカーが存在するようだ。昨年11月22日のコラム「トヨタと中国に見る電気自動車の近未来」と、今年2月7日のコラム「伊インテル長友佑都と小型電気自動車:2ブランドの共通点」でも書いたとおり、小型EVは、低価格、免許が不要、手軽に運転でき、燃料費がかからない点がユーザーの関心を引いている。また、衝突試験が不要で製造コストが低い点が、メーカーの新規参入のハードルを低くしている。

 同じEVでも、日産や中国BYDが生産している値段が高くハイスペックなEVは市場で普及する段階ではなく、小型EVの方が市場ニーズに合っている。また、ガソリン消費を抑制する国策にもマッチしているが、中国政府の小型EVへの対応は意外にも冷静である。政府は安全性に配慮しない企業が不良品を作ることを懸念して、小型EVメーカーの登録制への移行と衝突試験導入を検討中で、国内市場成長を凍結させている。結果として、各社は現状欧米への輸出に活路を見出そうとしている。

実はバランスが取れているレアアース輸出規制

 中国政府の意外にもバランスが取れた姿勢は、レアアースの輸出規制にも見られる。中国の輸出規制は昨年から続いており、レアアースの価格は、この半年間で4倍以上に高騰している。日系商社によると、EVモーターの永久磁石に使われるジスプロシウム価格は1キロあたり4000ドル(約31万円)で、取引目安価格の2倍以上になっている。これに対し、世界貿易機関(WTO)は7月5日、一部のレアメタル輸出規制をWTO協定違反と認定した。ところが、中国のレアアース輸出規制には、資源ナショナリズム以外の側面を持つ。昨年11月15日のコラム「中国のレアアース市場で本当に起きていること」で書いたように、輸出規制には、国内の悪徳業者を排除して、市場規律を作ろうとしている面もある。信越化学と日立金属が、中国でレアアース使用磁石を生産することを決定したのは、技術移転に配慮する外国企業を優遇するという中国政府の姿勢を信用したためだろう。

 日本企業は中国ビジネスの理不尽な面を感じても、中国市場から逃れることはできない。この点、日中関係は非可逆的であり、中国の合理的な面、優れた面を探して、部分的に信用していくしかないであろう。

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