2026年8月2日(日)
映画専門チャンネルのムービープラスで放映を録画しておいて観ました。
2023年の日本映画。ビム・ベンダース監督。役所広司主演。他に柄本時生、石川さゆり、三浦友和、中野有紗等出演。
劇中の後半で、石川さゆりがスナックのママとして登場し、ニューオーリンズ民謡で浅川マキ作詞の「朝日楼」という歌を歌うのですが、とても心に染みる歌でした。規則正しく、淡々と生きる主人公の暮らしぶりに共感を覚えます。
僕の評価は5点満点で3.9です。
作品紹介(映画コムより)
「パリ、テキサス」「ベルリン・天使の詩」などで知られるドイツの名匠ビム・ベンダースが、役所広司を主演に迎え、東京・渋谷を舞台にトイレの清掃員の男が送る日々の小さな揺らぎを描いたドラマ。2023年・第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門で、役所が日本人俳優としては「誰も知らない」の柳楽優弥以来19年ぶり2人目となる男優賞を受賞した。
東京・渋谷でトイレの清掃員として働く平山。淡々とした同じ毎日を繰り返しているようにみえるが、彼にとって日々は常に新鮮な小さな喜びに満ちている。昔から聴き続けている音楽と、休日のたびに買う古本の文庫を読むことが楽しみであり、人生は風に揺れる木のようでもあった。そして木が好きな平山は、いつも小さなフィルムカメラを持ち歩き、自身を重ねるかのように木々の写真を撮っていた。そんなある日、思いがけない再会を果たしたことをきっかけに、彼の過去に少しずつ光が当たっていく。
東京・渋谷区内17カ所の公共トイレを、世界的な建築家やクリエイターが改修する「THE TOKYO TOILET プロジェクト」に賛同したベンダースが、東京、渋谷の街、そして同プロジェクトで改修された公共トイレを舞台に描いた。共演に新人・中野有紗のほか、田中泯、柄本時生、石川さゆり、三浦友和ら。カンヌ国際映画祭では男優賞とあわせ、キリスト教関連の団体から、人間の内面を豊かに描いた作品に贈られるエキュメニカル審査員賞も受賞。また、第96回アカデミー賞の国際長編映画賞にノミネートされた。
ストーリー(ウィキペディアより)
東京スカイツリーに近い下町の古びたアパートで質素に暮らしている中年男性の平山。毎朝薄暗いうちに目をさまし、同じ手順で洗面とひげの手入れを行なう。育てている植物に霧吹きで水をかけると作業着に着替え、トイレ清掃の用具を積み込んだワゴンに乗り込み、カセットテープに録音した音楽を聴きながら仕事に向かう。渋谷区内の公衆トイレを転々と巡り、隅々まで磨き上げていくのが彼の役目だ。仕事は優秀で、道具も工夫して自作しているほどであり、英語も理解できるようだが極めて寡黙。ただトイレを利用する人たちや公園の子供達には優しい。
仕事の合間には緑の多い神社のベンチで昼食をとり、いつも隣のベンチにいるOLらしい女性には軽く会釈をする。樹木の枝が広がる空に向けてカメラのシャッターを押し、植物の小さな芽が出ているのを見つけると紙カップに土ごと移して持って帰る。
公園や街の中で不思議な動きをくりかえすホームレス風の老人(田中泯)を見かけることがあり、気になってついつい見てしまう。
明るいうちに仕事を終え、家に帰って着替えると、自転車で銭湯に向かう。汗を流した後は隅田川を渡って浅草の地下通路にある居酒屋兼食堂で酒を飲み、帰宅すると布団の中で文庫本を読んで眠りにつく。モノクロの夢の中では木漏れ日が揺れ、その日に目にしたものが交錯している。
休日には部屋の掃除をし、カメラ屋でフィルムの現像を頼むとともにプリントされた写真を受け取り、馴染みの古本屋で文庫本を物色する。夕暮れには和装のママ(石川さゆり)が切り盛りする行きつけの居酒屋で酒を飲む。歌がうまく、ときには客の弾くギターに合わせてうたうこともあるママは平山を気に入っているようだ。
清掃会社の後輩であるタカシ(柄本時生)は軽薄な青年で、仕事には遅刻してくる上に清掃はいいかげん。通っているガールズ・バーのアヤ(アオイヤマダ)にぞっこんだがアヤにはその気はないらしい。「カネがないと恋もできない」が口癖。
ある日、仕事を終えたタカシはアヤをスクーターに乗せて遊びに出かけようとするが、肝心のスクーターが動かない。タカシは平山に頼み込んで平山のワゴンにアヤを乗せる。アヤが平山のカセットテープに興味を持ったことを知ったタカシは、平山の目を盗んでカセットテープをアヤのバッグに滑り込ませる。アヤはガールズバーの近くまで来るとタカシを置いて車を降りてしまい、仕事に向かう。タカシはガールズバーへ行く金を作るため、平山を誘って中古ショップに向かい、平山のカセットテープを店員に見せる。驚くほどの高値がつくことを知ったタカシはこれを売ってその金を貸してもらおうとするが、平山はカセットテープを売ろうとはせず、自分の財布から金を出してタカシに渡す。
仕事をしていた平山の前にアヤが現れる。カセットテープを返しにきたのだが返す前にもう一度聴きたい、と告げるアヤと平山がワゴンの中で音楽を聴いていると、アヤがふいに涙ぐみ、そして平山の頬にキスをして立ち去る。
ある日、いつものように浅草で酒を飲み、帰宅した平山を姪のニコ(中野有紗)が待っていた。ニコは平山の妹(麻生祐未)の娘で、母親と喧嘩をして家を出てきたのだった。平山はニコを部屋に泊め、翌朝そっと仕事に出ようとするが、ニコは平山についてきて彼の仕事を手伝う。平山の部屋に二泊したニコを運転手つきの車に乗った母が迎えに来る。 ニコの母は兄の平山に対し、今は施設に入っている父に会いに来てほしい、昔の父とは違うのだからと告げるが、平山は首を横に振る。久しぶりに会った妹と姪が去ったあと、平山は声を殺して泣く。
次の日、タカシが電話をかけてきて、仕事をやめると唐突に告げる。会社からは代わりの清掃員の派遣もなく、平山は夜までかかって二人分の仕事をすることになる。疲れ切って帰宅した平山は布団に倒れ込み、本を読むこともできずに眠りにつく。しかし翌日には新しい清掃員がやってきて平山はほっとする。
休日、平山がママの居酒屋を早めに訪れると、見知らぬ男とママが店に入っていく。店をのぞくとふたりは抱き合っていた。慌ててその場を離れた平山が隅田川にかかる橋のたもとで缶ハイボールを飲み、慣れないタバコを吸っていると、さっき見た男(三浦友和)が現れる。彼はママの元夫で、癌を患い、死ぬ前に彼女に会っておきたかったのだと告げる。川面を眺めながら酒を飲むふたり。男がふと、影は重なると濃くなるだろうかとつぶやく。平山は灯火の下に男を連れて行き、二人の影を重ねる。変わっていないようだと言う男に対して、確かに濃くなっていると平山は言い張り、「なんにも変わらないなんて、そんな馬鹿な話、ないですよ」と告げる。影踏みをしようと平山が持ちかけ、二人はしばらく影踏みをして遊ぶ。
翌朝、いつもどおり仕事に向かう車の中で、平山の顔には不思議な笑顔が浮んでいた。