2019年3月13日(水)
ミステリー作家である下村敦史の最新作です。今までの彼の作品とは、かなり趣向の異なる作品で、完全なるミステリー小説を期待していると、違和感を感じます。親子無理心中の生き残りである主人公の心の変遷(親への怒り・恨み・憎しみから赦し)にこそ、作者がこの作品の中で訴えたいメッセージが読み取れる気がしました。
2018年12月、小学館発行。301ページ。
作品紹介(日刊ゲンダイのサイトより)
小学5年生の秋、幸子は両親と幼い妹・弟の家族5人で遊園地へ遊びに行った。その頃の両親は始終喧嘩しており、家には宇宙人のような怖い男が借金返済の催促にやって来て、息の詰まるような日々だった。だから、遊園地でのひと時は夢のように楽しかったのだが、家に帰ってきた晩、両親は家に火を放ち、一家心中を図った。
ただ一人生き残った幸子は、息を潜めるように生きていた。そこへ桐生隆哉が現れ、これを機に人生を変えようと思う幸子だが、自らの過去を言い出せない。過去と決別すべく両親らの墓を訪ねた幸子は、そこで雪絵と出会う。雪絵は2人の娘を乗せた車で海に飛び込み、心中を図ったシングルマザーだった。
雪絵に、自分を殺そうとした母親の幻影を見た幸子は、この運命的な出会いに衝撃を受ける。また偶然にもテレビであの宇宙人のような男・郷田を発見する。隆哉への恋、雪絵への憎しみ、郷田への復讐心と、幸子の心は大きく揺らめいていく……。
無理心中の被害者と加害者という正反対の立場が交錯しながら、事件は意外な結末へとなだれ込んでいく。「闇に香る嘘」で乱歩賞を受賞した著者の最新ミステリー。