私が受け持ちになった半年前から
患者さんは話せませんでした
時々私の声に反応して
目を少し開けますが
ただじっとしていることが多い女性です
看護師さんが1日2回
車椅子に座る時間を作ってくれていて
施設のリビングで座って過ごします
体操にもレクリエーションにも参加しますが
いつも車椅子の上でじっとしています
長期臥床で腕や脚は関節が硬くなり
拘縮して変形しています
食事は
鼻から管を通す経管栄養のみで摂取しています
担当になった時
ご挨拶も兼ねて病状説明をおこないました
その時ご主人から
「1日も長く生きてほしい
だからどんなことでもやってほしい
先生にお任せします」
と急変時や病状悪化時の意向を伺いました
それから半年間
何も起こらず過ごされていましたが
先日おそらく誤嚥が原因で発熱
経管栄養を中止して点滴を始めました
92歳と高齢で
長期間寝たきり
痰を排出する力はなく
抵抗力も弱い
今後さらに状態が悪くなる可能性もあり
再度ご家族に電話で説明をしました
「1日も長く生きてほしい
だからどんなことでもやってほしい
先生にお任せします」
ご主人の意向は同じでした
しかし
私が受け持ってから一度も面会に来ていない
私は施設にご主人と息子さんを呼びました
そしてまずは面会していただき
その上で、施設看護師から
この1週間の経過をお話ししてもらいました
10分くらい時間をおいて
お部屋に伺い
再度病状と今後の方針について話し合いをしました
「やれることはなんでもやってください
先生にお任せします」
私を悩ませていたこの言葉
やれることは正直それほどない
任されても困るし
任してもらえるなら
このまま患者さんの苦痛を抑えることを
最優先したい
しかしそれは
ご主人にとって何もしないで見殺しにできない!
ことになる
何度か話してもいつもこのやりとり
でも今回は面会していただき
数十分
ご家族だけでお部屋で過ごしていただけたことで
患者さんの様子を見て感じることができたのか
お任せするのではなく
が自分たちで決めてくださいました
どんな決断も尊重し支えます
しかし
考えるのは患者さんとご家族です