訪問診療には多くの職種が関わります
患者さんやご家族との関係
その人となりは言葉に表れます
ある夜
それまで痛みはなかったがんの患者さんが
突然腹痛を訴えました
付き添っていたご家族もあわてて
施設看護師を呼びました
翌日
往診に行くと看護師さんがこう言いました
「昨夜は大変だったみたいです。
痛い痛いって大騒ぎして、家族さんも一緒に
なってパニクルもんですからワーワー言って。
こちらも訪問時間とかいろいろあるので
すぐに〜とか何度も〜とか無理ですと
言ってもパニクってて聞いてくれなくて。
あれは大変な家族ですよ」
疼痛の訴えは想定内です
対応する薬も数種類だしています
もちろんどれも瞬間に疼痛がゼロになるわけではありません
今〇〇という薬を使いました
△分くらいで効きはじめます
申し訳ありませんが一度退室します
その頃にもう一度伺います
何かあればナースコールでお知らせください
とお伝えするのと
薬は使いましたから!
すぐ効くわけじゃないんでね
私ほかにも受け持ちがあるんで
つきっきりなんてできないですよ!!
と言うのは伝わり方が違うと思います
別の患者さんは
脳出血で片麻痺、失語が残り
一時、呼吸状態も悪くなったため
気管切開しています
施設に入り訪問診療を開始する時
施設の看護師から
「落ちてます」と指を下に向けながら一言
話せない
動けない
突然の病気に戸惑うのは当たり前
しかもこれまでの生活ができなくなり
施設入居です
ゆっくり筆談でお話しを伺うと
また歩きたい
話せるようになりたい
みんなと一緒にいたい
と思っていることがわかりました
下肢の装具も作ってあり
持ってきています
気管切開のチューブは
話せる機能のついたものです
「一つずつやっていきましょう」
という私に
嬉しそうにうなづいていました
すかさず看護師さんが
「やる気ないみたいですよ
情報提供書に書いてありました
もともとうつがあるんで
落ちるとだめみたいです」
???
結局
業務の忙しさ
患者さんの意欲低下
を理由にそれらは全く進まず
3ヶ月後には
患者さんから「何もしなくていい」と
「あきらめの境地ですねー」と
笑う看護師
もっと丁寧に関わっていれば
たくさんの希望が残っていたはずです
言葉を選びながら
相手の望むことを
少しでも理想に近い状態で
提供できるようにしたいものです
医師一人が
〇〇しましょう!と言ったところで
その他の職種も同じ方向を見ていないと
なんの結果もでません